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【さっき見たヘンなユメ】Thug Lyfe

いそう治安の悪い商店街をウロウロとしている。ここはかつて私のホームグラウンドだった地域だ。

たちまち自分が全裸であることを察知した私は、パチンコ屋とポルノ映画館を通り抜けて、行きつけのストリートブランドショップに向かう。ひとしきりNew Arrivalコーナーを物色したあと、無一文だったので「ご自由にお取りください」と紙が貼られたワゴンから、“Thug Lyfe”の文字がプリントされた薄ピンクのTシャツをセレクトした。

どうにか全裸をまぬがれて再び商店街をウロウロしていると、排気ガスで外観が真っ黒になったドムドムハンバーガー店内で、幼なじみのコウノくんとタカギくんが求人フリーペーパーを立ち読みしているのを見つける。

懐かしくなって二人に声をかけると、タカギくんは求人誌から目を離さず一言「おぅ」と興味なさそうに答えた。まるで、おまえがいるのは知ってたけど話しかけてほしくなかった、とでも言いたげだ。私は二人が自分と全く同じ“Thug Lyfe”のピンクTシャツを着ていることに気付いた。

その後、どういうやりとりがあったのか思い出せないが、私たちはコウノくんが経営するスナックに移動していた。コウノくんは私とタカギくんを異常な狭さの厨房に案内すると、床に散らばる小汚いじょうろやバケツを指差してこう言った。

「右側にオセロ」

私は、「右側に寄せろ」と言いたかったのだと理解して指示に従ったが、タカギくんは私が片付けを終わった後も冷蔵庫の下を覗き込んだりしてオセロを探しているようだった。

一瞬覚醒していたのか再び場面が変わり、私たち三人は学校の体育館にいた。何かの催しが始まろうとしているらしく、生徒や保護者たちが数十人くらい集まって舞台の方を見守っている。私とコウノくんは壁際に腰掛けていたが、なぜかタカギくんだけはキャットウォークの上で100円電子ライターをせっせと解体していた。

突如、Caramelldansen風の陽気な曲がスピーカーから爆音で流れ出す。周波数帯域が狭すぎるためか、酷く耳障りだ。舞台の中央から出口にかけて、大型のプラレールが敷き詰められており、音楽に合わせて、七福神の強化版のような七人の神がレンタルカートにのって登場した。

神々は来場者に手を振りながら、列をなしてプラレールの上をゆっくりとカートで進んでいる。あまり神々しさは感じなかったが、誰もが息をのんでその様子を見守る。私とコウノくんは知っていた。彼らが体育館の出口に到達すると忌わしい天災が起こることを。

なんとか神々の行進を食い止めようと、コウノくんが神様に話しかけて注意を引こうとするも、プラレール脇にいた軍服姿のやさしそうな監視員に遮られて近づくことすらままならない。そうこうしているうちに、先頭を進む神様カートが出口まで差しかかろうとしている。

そこで私は、全身の臓器を裏返しにできる呪いのおにぎりと、タカギくんがせっせと集めた電子ライターの発火装置を両手いっぱいに抱えたまま監視員にスライディングで突っ込み、それらを一気に彼のズボンの中に放り込んだ。

「ギョリパツ」

そんな奇声をあげて、監視員はまるで風車に縛り付けられたかのごとく宙に浮いたまま体を瞬間的に180度回転させ、クリーム色の体液を耳から流しながら海面に打ち上げられた深海魚のような形相で息を引き取った。

またしても場面が切り変わる。今度はコウノくんもタカギくんも私さえもいなくなっている。小雨の降る高速道路の路肩に、先ほど死んだはずのやさしそうな監視員が一人たたずんでいる。回想シーンなのだろうか、彼は軍服ではなくどこかで見たような薄ピンクのTシャツを着て、ハリネズミの子供かモグワイみたいな小動物を両手で握りつぶしているところだった。

ぺちゃんこになって動かなくなった小動物を大切そうに抱きかかえて、監視員は雨に濡れながら「いっぴきののねずみ」を歌っていた。しばらくすると、「かわいい動物の死体 買い取ります」と看板を掲げたトラックが通りかかるが、彼は知らんぷりで歌い続ける。

そこで私はやっと目が覚めた。

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