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人類が豚の心臓で生きる日が目前に (The Futurologist 19/01/31)


豚から人への心臓移植、「不死学会」、世界初5G技術を用いた遠隔手術について紹介します。

The Futurologistは、数十年後を見据えるアントレプレナーや科学者に届けるマガジンです。未来を予測する学問「未来学(futurology)」、グローバル課題、未来技術に関する最新情報をサクッと提供します。だって世界は、貴方の未来設計にかかってるから。



人類が豚の心臓で生きる日が目前に

豚の心臓を移植されたヒヒが、180日生き延びた。

Nature誌に掲載された、Ludwig Maximilian University of Munichの研究は、これだけでも十分驚きに値する。

しかし、驚くべきはこれだけではない。

これらのヒヒは、研究の規則に法る形で移植から180日後に安楽死させられたのだ。

これは、180日以上生存出来た可能性が極めて高いことを示す。

今までにも、同様の研究は存在したが、最長で57日間の生存が限度だった。60%以上の霊長類は、移植後2日以内に亡くなってしまったという。

このイノベーションの鍵は、移植前に心臓を凍結するのではなく、栄養素を混ぜた血液で移植用の心臓を活性化させたことに由来するという。

また、豚の心臓が移植先の胸部で大きくなりすぎてしまう問題を、ヒヒの血圧を下げることで解決した点も効果を発揮した。

日本臓器移植ネットワークによれば、現在日本では、736人の患者が心臓移植を待っている。

アメリカでは、同数が3,800人に登り、600人がその時を待ちながら命を落としている。

もし人体実験が成功すれば、これらの患者の多くを救えることになるが、国際心肺移植学会は、霊長類の60%が同様の結果を出さない限り、人体実験を行ってはいけないと明示している。

このようにまだ課題は存在するが、人類が豚の心臓で生きる日は決して遠くないのかもしれない。



世界初、5Gを用いた遠隔手術が成功


5G技術と聞くと、スマホの通信速度が少し早くなる程度の印象を抱くかもしれない。

多少はITに精通している人なら、車やドローンをコントロールする上で重要なこともご存知だろう。

しかし、5Gのインパクトはそれだけに止まらない。

我々の命を救う手助けになるかもしれないのだ。

先日、中国の外科医が初めて5G通信技術を用いた遠隔手術に成功した。

患者とは離れた場所にいる医師が、ロボットアームを使って手術をするというもので、5Gが可能にする遅延のない外科医/ロボット間の伝達があって初めて可能になる。

今回は動物での実験的な手術だったが、近い将来人間にも適用されるだろう。

災害時、医者の手の届かない場所での手術など、活用が期待される。


今日の言葉

年を取ることを、何かしらの恩恵かのように自分に言い聞かせているなんて、我々人類はひどく混乱している。

-Aubrey de Grey 

先日、カリフォルニア州サンディエゴにて、RAADFestと呼ばれる一見奇妙なシンポジウムが開催された。

なぜ奇妙かといえば、このシンポジウムは、「死」を過去のものにしようと考える科学者が集まる学会だからである。

それだけではない。

ここに集まるのは、シンギュラリティの提唱者レイ・カーツワイルを筆頭にした世界的にも著名な科学者や起業家たちだ。

輸血、ブレインマシンインターフェイス、サプリなど、様々な方法と可能性が議論される中で、「アンチ・デス」業界を代表する科学者オーブリー氏は、我々の死に対するマインドセットそのものに疑問を呈した。

我々人類は、「死」を運命として捉えてきたが、そのマインドセットを疑う余地は十分にある。


筆者

空飛ぶ車や培養肉事業を前線で率いてました。今は独立して企業のオープンイノベーションや新規事業開発支援、データ解析のご依頼を承っております。頂いたお金は異端な科学者とのシチズンサイエンスプロジェクトに活用します 。 主に未来学/科学/スタートアップ/イノベーション等について呟きます。


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