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【論文読んでみた】育児期の夫婦関係研究に関する文献レビュー:田中(2017)

こんにちは。
今週は夏休みをとって実家に帰っています。
論文読むの休もうかな・・・と思いつつ、いやいや読んどこうと思い直し、義実家からお送りします。笑


ひとことでいうとこんな感じ

「育児期」「夫婦関係」が含まれる論文に関するレビュー論文。

目的・仮説

育児期の夫婦関係研究の文献を整理し,現状分析と今後の課題について検討すること。

研究の進め方

論文データベースCiNiiを用いて、「育児期」「夫婦関係」をキーワードに2005~2015年の期間に発表された文献を検索し、38件の原著論文を分析対象とした。

研究の結果

研究内容は、親への移行と夫婦関係に関する研究16件(42.1%)、親役割に関する研究16件(42.1%)、コミュニケーションに関する研究3件(7.9%)、心理的特徴に関する研究3件(7.9%)の4つに分類された。

親への移行と夫婦関係に関する研究

  1. 親になることに伴う夫婦の親密性や夫婦関係満足度の変化は、U字型カーブを描く場合(研究多数)と、ほぼ一貫して低下する場合(永井(2011))の2つがある。前者の場合は、夫婦間の親密な感情は親になって2年間の間に下がるが,3年を経過するとその下がったレベルのまま安定し推移していく。
    妻は母親になると夫に頑固になる傾向,夫は妻の顔色をうかがって妻に不快なことがあっても我慢してしまう傾向があるなど(小野寺(2005))。

    夫婦関係満足度は男女差があり,夫よりも妻の方が満足度は低下する。夫の場合は妻自身のイライラ度合が強い,夫の労働時間が長い、家事育児時間が短い、夫の年収が低い、里帰り分娩、妻の場合は夫の育児参加が少ない、子どもが育てにくい、夫立合い分娩、妊娠先行型結婚などが関連要因。

  2. 親としての発達は夫婦共に良好な夫婦関係に支えられており、関連要因として、夫の場合は育児参加、人格的要因の親和性、子どもとの関係を肯定的に認識、妻の場合は子育て、フルタイム就業など。

親役割に関する研究

  1. 母親の育児肯定感、役割行動、育児ストレスコーピング方略、夫の育児サポートに関する認識などは母親の夫婦関係満足度と関係している。

  2. 父親の育児家事行動、子どもへの愛着、ワーク・ライフ・バランスは父親の夫婦関係満足度と関係している。

  3. 夫婦間の家事育児分担のズレは夫婦関係満足度を低下させ、ズレのある夫婦は夫からの情緒的なかかわり、夫の家事や育児に対する姿勢によりズレが縮まる。

  4. 夫婦関係が不良であると夫婦の養育態度はきびしく非受容的になり、夫婦の性役割観が夫婦関係満足度と養育態度に与える影響には性差がある。

コミュニケーションに関する研究

  1. コミュニケーション・パターンは夫婦で異なる。

  2. 妻のコミュニケーション・スキルの「記号化」スキルが高いほど、育児不安は低減される。

心理的特徴に関する研究

  1. 夫婦のメンタルヘルス状態は自尊感情を介して影響しあう。

  2. 心の健康の関連要因として、父親の場合は育児参加、母親の場合は自己効力感の高さ、夫や周囲の情緒的サポートの多さが関係している。

考察

  1. 親移行や親役割に関する研究が大部分を占めていた。

  2. 夫婦の情緒的な関係性を示す表現が、夫婦関係満足度、結婚満足度、親密性、愛情などの様々な用語が用いられていた。

  3. 夫婦関係満足度の変化について、先行研究と反論する論文が見られた。

  4. 夫婦間のコミュニケーションについて、コミュニケーションには性差があり、共感・接近というポジティブな態度は妻から夫へ、威圧・無視というネガティブな態度は夫から妻への方向が相対的に大きく、共に暮らしていても夫婦間のコミュニケーション態度の認知が異なっていた。

  5.  夫の育児参加の影響について、①妻の育児不安やストレスを軽減させる、②夫婦関係満足度が増加し夫婦関係が良好になる、③夫の心理的ウェルビーイングを促進する、④夫が父親になるのを促進することが明らかになった。

知らないことば

人格的要因の親和性
ChatGPTによると、以下のとおり。
「人格的要因の親和性」とは、心理学において、個人が他者と調和して協力的な関係を築こうとする傾向や、他者に対する共感、思いやり、信頼感、協調性などを示す性格特性を指します。この特性は、ビッグファイブ性格特性(Five-Factor Model)の一つである「親和性」(Agreeableness)としてよく知られています。

親和性が高い人は、他者と友好的で協力的な関係を築くことに喜びを感じ、他人の感情やニーズに敏感であることが多いです。反対に、親和性が低い人は、競争的で、時に対立的な態度を取ることが多く、自分の考えや意見を他者に対して主張することが多い傾向があります。

親和性のレベルは、個人の対人関係の質や社会的な適応、チームワークにおけるパフォーマンスなどに影響を与えることがあります。

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