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求人広告の「応募資格」の書き方 Vol.1

こないだある会社の方から「ハヤカワさんの求人コピーの書き方見てますよ。うちの採用担当にも読むように言っておきました」とお声がけいただきました。

めちゃめちゃうれしかったです。ハンバーグが大好きな子どもがお母さんから「今夜はハンバーグよ」と言われた時のテンションで「ヤッター!」と叫びました。

そしてひとこと言い忘れたことがあったのでここで書いておきます。

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大事なことなので、もういちど。

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昔から誰が読むのこれ?みたいな狭い話を書くのが好きなので記事をアップしたあとは凪が普通と思っているのですが、それでもこのだだっ広いインターネットの世界でエンピツなめなめ書いたものに現実の社会でリアクションをいただけると、格別な喜びがあります。

ありがとうございます。

さて本題。

そんな某上場企業の採用担当者もきっと読んでくれているはずの毎週月曜日更新『求人広告の書き方講座』。今回は求職者がまず最初に目にするであろう応募資格の書き方です。

ならぬならぬ、問うてはならぬ

応募資格というのは読んで字の如く、その募集案件に応募してもいいかどうか、応募する資格があるかないかを明確にする記述のことです。

募集には採用基準というものがあります。これこれこういう資格を有していないと書類で落とすぞよ、みたいな。わかりやすいところでいえば調理師免許とか、美容師国家資格とかですね。

ただ、そういった職人系・技術系のお仕事以外にも募集ごとに足切り(という言葉は好きではありませんが)ラインがある場合がほとんど。求人広告には書かずとも内輪では「男性より女性のほうが…」とか「やっぱり30代前半までかな」と言った基準というか希望があるのが正直なところ。

しかし雇用機会均等法の成立や雇用対策法の改正によって一部の例外を除いて性別や年齢を問うてはならないことになっています。

また出身地、家族構成、信仰、その他もろもろ就職差別にあたる内容は条件にしてはならない、とあります。さらにほとんどの媒体が「明るい」「元気」など性格の表現にまで自主規制を入れています。

この自主規制の枠から外れている媒体が2つだけありました。一つは新聞の求人欄。もう一つは上場前の某ビジネスマッチングSNS。

新聞に掲載される求人広告はスペースの小ささから「委細面談」「詳細は面接で」などと表記されることが多く、応募資格はもちろん労働条件なども明記されることはほとんどありません。

果たしてそれで良いのか、読者を不利益から守らなくて良いのか、と業界団体が指摘したこともありましたが、毎回「あれは求人広告ではない。新聞記事である。だからお前らの言うことなど聞く必要はない」というぱるるばりの塩回答。

また某ビジネスマッチングSNSに関しても同様のロジックで、あくまで私たちの運営しているメディアは求人広告ではない、と言い張ります。ゆえに「応募」ボタンではなくて「話を聞きに行く」というアクションを促しているのだ、と。

なるほど上手いこと言うなあ、と思いました。しかし流石に上場後は幾分掲載規定的なものを整備しているようです。流石にいまさら求人媒体ではない、とは言い難い存在感ですからね。でも相変わらず労働条件などはわかりません。

マストとベターを使い分けろ

話を書き方に戻します。大抵の募集の場合、マストとベターの二つに条件を分けます。マストとはいうまでもなく必須条件ですね。例えば…

大卒以上

とか

営業経験3年以上

とか。

今回の募集において外せない条件です。これはできるだけ端的に、かつ明確に記述するべきでしょう。ここに曖昧な表現は必要ありません。むしろノイズです。

また、ここでも就職差別につながるような表記は許されませんので要注意です。たとえどれだけ採用側が採らないぞ、と心に誓っていても

大卒以上、但しMARCH以上が望ましい

とか

大卒以上で親の職業が会社経営(東証プライム以外は不可)

とか

書いた瞬間に炎上して募集会社の人事採用担当者は左遷か解雇、株価も大幅に右肩下がり確定というホワイトガソリンばりの可燃性を誇ります。

経験者にはcallingを

経験者募集の際の応募資格はズバリ「あ、これ俺のことだ」「あれ、これって私じゃね?」と思わせるように書くこと。

仕事の経験者たちは、自分なりのモノサシを持っています。何ができるか、何が得意か、そして何をやりたいと思って転職しようとしているのか。この辺りの確固たる基準があるという点がアスがブルーな就活生との違いです。

ですからそこを突けば良いのです。いや変な意味じゃなくて。

自分の例で恐縮ですが…ぼくが居酒屋の店長を辞めてもう一度コピーライターになろう、と思いつつある求人広告を見た時、まるで神の啓示を受けたかのような感覚にとらわれました。その広告の応募資格欄にはこう書いてあったのです。

大卒以上、30歳まで。求人広告制作経験のある方。制作プロダクション等でのコピーライティング経験をお持ちの方も歓迎します。
某求人媒体運営会社 チーフコピーライター募集原稿より

ガーン!オレだ、コレオレだ、コレオレ詐欺だ!!と、最後のはよくわかりませんが、まさにぼくを呼んでいる、この会社!と思ったのです。天職を英語でcallingと言いますが、本当に呼ばれた気がした。

いや正確にいうと大学出てないし、その求人を見てる自分は30歳なのでいわゆるマスト条件のうち2つは外していました。

でも、学歴や年齢なんかあくまで目安だろ。大切なのはスキルとキャリアだろ。愛だろ、愛っ。と思った。

求人広告は人生最初の会社で経験している。そしてその後は制作プロダクションを転々としてびっくりするよな修羅場を歩いてきた。読めばこの会社は設立されたばかりで制作部門の立ち上げが早急な課題だという。

俺じゃん。俺にしかできないミッションじゃん。

その時ぼくはクリエイティブワークに戻りたくともどこの会社からも門前払いでした。5年のブランクは制作環境そのものを大きく変え、また30代からのやり直しは絶望的であると考えられていたのです。

だからこその、求人広告でのやり直し。
それならできるんじゃないか。

学歴と年齢以外はピッタリです。この募集に応募して不採用なら荷物まとめて田舎に帰るしかない、と不退転の決意で「応募する」ボタンをクリックしたのでした。

と、思い出話に終始してしまいましたが、要はこういうことです。これが例えば営業だとしたら、単に営業経験3年以上、と書いてあるだけでなく

・BtoBかBtoCか
・有形商材か無形商材か
・新規比率と既存比率はどうか

といった基本的な属性に加え、どんな業界での経験が活かせるか、どんなスタイルの商談経験が望ましいか、それはなぜなのか、までが応募資格に明記されていると、ドンピシャの人から応募がやってきます。

これは、マジです。

最近は人材紹介に押されて経験者採用についてのプレゼンスをすっかり失ってしまった感のある求人広告ですが、でもきちんと宣言すればきちんと受け止めてもらえます。それを「絞ると母集団が減る」という意味がわからない理由からビビっていたずらに応募条件を広げるから、経験者から応募が来ないのです。

この求人広告におけるニワトリタマゴ問題は本当に根が深い。募集企業も営業担当も制作マンも媒体社も、みんなが勇気を持って英断することが必要ではないかと思います。

どんな経験を求めているか。何を、どれぐらい、どんな範囲でやってきたか、またはできるか。これを飾らず具体的に書く。そうすればその条件と整合性の取れた求職者には届きます。きちんと刺さります。


と、いうことで、またかというかやっぱりというか、余計な脱線が多いせいで一回の記事でまとめきれなくてスビバゼン。次回はより具体的に踏み込んで「ベターの書き方」「未経験者募集の場合の効果的な書き方」についてお話します。

それでは、グラッチェ!

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