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なぜ、自社の求人広告はうまくつくれないのか

そんなことはないですよ」という方はここから先はお読みにならなくて結構です。でもスキは押していただけると嬉しいです。ついでにいくばくかの投げ銭でもいただければ喜んで踊ります。

毎週月曜日に更新しているこのnoteは主に求人広告制作者に向けて書いております。ですので今回のタイトルに対して「そんなことはない」といえるあなたは優れた広告制作者です。飲みに行きましょう。おごってください。

自社広告と、ひと言でいってもいろいろありますが、ここではあくまで自社の求人広告、採用広告のことを指します。

この自社の求人広告が実は、ことのほか難しい。

パッと見、というか外からはそんなふうには思えなかったりしますが、いざ自分でつくるとなると筆が止まる。思考が止まる。

クリエイティブジャンプという言葉がありますがジャンプどころか三段跳びしてしまったり、あるいは飛ぶ前に尻もちついてしまったり。

あれはなぜなんだぜ、とずっと思っていたんです。

実はぼくも、自社の求人広告ではあまりいいアウトプットが出せた覚えがありません。と、いうことで記憶をたどっていくと、ひとつの共通項が出てきました。そしてその共通項と、一冊の名著とが結びついた。

どんどん話が大げさになってきました。大丈夫です。いつものようにそんなに大した話ではありませんし、何かの役に立つような指南もございません。ご安心ください。

上手くいく自社求人広告の条件

過去を振り返ってみてわかったことがあります。自社広告が上手くいくときには必ずひとつの条件がある、ということです。

それは何か。

その会社に入社して間もない頃、あるいはまだあまり詳しくその会社のことを知らない状態の時につくると比較的上手くいく。

と、いうことです。

一社目。目黒の求人広告代理店。この時はあまりにも駆け出しすぎてお作法もなにもわかっていなかったのですが、同期のまっちゃんとの競作でした。自分では結構手応えのあるコピーが書けたと思っていました。

が、上司が選んだのはまっちゃんのコピーでした。

まっちゃんの提出した原稿用紙をそっとのぞくとそこには

不思議の目黒ねこまたねこまた広告代理店。

負けた、と思いました。とはいえ、この不朽の名作には及ばないにしても、ぼくも結構悪くないアウトプットができていたと思っています。

さんまと広告は目黒に限る。

ね。こんなん入社3年経過したら書けんですわ。

二社目。自社広告を出すような気の利いたプロダクションではありませんでした。三社目。求人といえば朝日新聞に三行広告という世界でした。四社目は居酒屋でここもアルバイトニュースに条件だけ載せるタイプ。

そして五社目。ネット求人広告ベンチャーでした。自社でメディアを持っていたので、そこに載せる自社採用広告。当時の上司からコピーライター募集の広告をつくるよう命じられたのは入社して半年目ぐらいのこと。

これは上手くいきました。

求人広告をつくるコピーライターの募集。基本的にコピーライターの職務領域としては不人気な分野です。さてそれをどう料理するか。詳しい経緯はこちらの記事に譲るとして。

仕事の広告をつくろう。

ボディコピーもかなりよく書けたし、応募効果の持続力がハンパなかった。2年ぐらい落ちなかった。その会社の制作部門の勃興期を支えたメンバーはほとんどこのコピーで集めたといっても過言ではありません。

六社目。いま世話になっている会社ですが、こちらでは求人広告をやるつもりは一切ありませんでしたが、まあ成り行き上というか、やれちゃうのでときおり駆り出されることに。

自社広告も2回ほど作りましたね。ここでご紹介するような代物ではないので割愛しますが、やはり入社から日が浅いことが上手くつくれた要因のような気がします。

その証拠に、いまつくれといわれたら無理ですいやですってなっちゃいますもん。

つまりそれはどういうことか

と、いうことで自分の経験談という異様に小さなnで話を強引に進めておりますが、自社広告をうまくつくるには「あまり自社のことを詳しくしらない」「染まってない」ことが重要であるとわかりました。

こういうとき、ぼくは反対側から考える癖がありまして。

自社のことを詳しくしっているとなぜ上手くつくれないのか。会社の絵の具に染まっているとなぜ上手く広告できないのか。

うーむ、うーむ。知りすぎると知識がじゃまをするってか?だけど世の中の多くのクリエイターやプロデューサーはみんな「センスはインプットの量」みたいなことを言っているぞ。だとしたら…

そんなふうに思考を巡らせていたときにふと思い出したのが2021年最高の名著。こちらです。

もうね、何回繰り返して読んでいるか。この本のおかげで他の広告本を読む時間がなくなり、毎週金曜日の「広告本読書録」が滞っておるぐらいです。それぐらいバイブル。自分はクリエイティブではないと思うからこそのバイブルです。

読書感想文も書きました。

また読書感想文よりもさらに噛み砕いているのはこちら。

で、この本のP163からはじまる「ものづくりを成功に導く7つの原理」に答えが書いてありました。

「ものづくりを成功に導く7つの原理」は著者である原野守弘さんが自らの作品をつくるときに心掛けていることを7つ、紹介しているもの。かなりユニークなメソッドが並んでいるが内容を読み込むとなるほど、と腹落ちするものばかり。

そのひとつめがこれ。

知りすぎるな

いきなりきた。学ぶことと創造的になることはトレードオフの関係にある。真に創造的なものづくりを通してクライアントをハッピーにしたいのであれば、知りすぎてはいけないのだ。

なぜなら対象について知れば知るほど、あなたが創造性を発揮できるエリアは狭くなっていくからだ。答えを出すにあたって、無視することのできないチェックポイントがどんどん増えていけば、おのずとやることは決まってきてしまう。そうなると、あなたがつくり出すものは、次第にその他の人がつくり出すものと似てきてしまうのだ。知識は創造の敵なのだ。

ものづくりを成功に導く7つの原理 P166より引用

もちろん原野さんが想定している「もの」と、自社の求人広告という「もの」の間はソーシャルディスタンス100人分ほどの距離があいている。でもここに書かれていることのエッセンスは適用できるはずです。

自社を知りすぎない状態とは、つまり、考える領域が狭まっていない。原野さんおっしゃるところの「それまで大事だと思われていたことを捨てる」状態に近しいわけです。

だからぼんやり聞いた話の中で自分の心に残ったこと、ひらめいたことを形にする。逆にいうと、するしかないのですね。

それが、長らくその会社にいる人間では考えられない、本質をついた表現につながるのだ。と考えると腑に落ちます。少なくともぼくは落ちました。

おしまい

と、やっちゃうとさすがのぼくも、役に立たないにもほどがありすぎるなとおもったのでひとつだけ「ではどうするか」について。

ベテランのあなたは、もう全く新しい自社広告はつくれません。なのでとっとと諦めて新人クリエイターにドーンと任せちゃいましょう。

なに?不況のあおりで新人クリエイターがいない?

だったら営業とか経理とか事務の新人でもいいです。彼らにインタビューして、その中からあなたでは到底おもいつかないようなネタを拾うんです。そしてそれをベースに広告をつくってみましょう。

きっと、自分ひとりではつくれないような、自分でもちょっとふしぎな感じのする新しい自社広告がつくれるはずです。

それにしてもビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門、名著。ありがたやありがたや。

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