教える は 教わる
あ、このnoteは求人広告制作者に向けてのみ書いているものですので、それ以外の方がご覧になっても薬にも毒にもならないこと間違いなしです。あしからず。
さて、ぼくは以前、求人広告制作者としてのスキルを磨くなら一度は採用業務の経験をしておきましょうね、というnoteを書きました。
今回はその続きといいますか、第2弾といいますか。採用の経験をしたら次に「教育」もひと通りやっておいたほうがいい。次に、と書いたものの別に順番があるわけではないです。採用の前に教育を経験してもいい。大切なのは採用と教育を線で結んでみる、というところにあります。
■ ■ ■
まずはじめに教育する相手が経験者なのか、未経験者なのか。ふつうほとんどたいてい未経験者でしょうね。経験者はその経験の種類にもよりますが、だいたい放ったらかしにしておいてもどっかでワークするものです。
と、なると未経験者氏に、どこから教える必要があるのか。そのアセスメントからはじめます。
求人広告のコピーライターに必要なスキルは大きく分けて3つ。ひとつは基本的な文章作成能力。もうひとつは高度なコミュニケーションスキル。そして最後に相場観です。
ほんとはもっといろいろあるんですが、それはまあ、上記3つを満たしたあとのお話です。求職者への深い愛を抱く人もいれば、仕事に対する哲学を磨くタイプもいる。それぞれが己のカラーというか、得意分野を伸ばしていけばよろしい、ということになります。
で、件の未経験氏がこの3スキルのどれかひとつでも持っててくれると話は早い。比較的労せずそこそこ有望なクリエイターの卵が茹で上がります。
でも、そういう例はぼくの経験からいっても100人にひとり。
たいがい、ひとつめの基本的な文章作成能力がいけるかどうか、といった状態で配属されるのがデフォです。なので新人がやってきたらまず最初にやるべきは文章力を磨きつつ、高度なコミュニケーションスキルを身につけてもらうところからはじめることになる。
ところがこの高度なコミュニケーションスキルというのが実にやっかいで。これ分解すると要するに誰に何をどのように伝えるかという広告設計そのものなんです。
これはもう絶対という言葉を使ってもいい。賭けてもいい。間違いないと言っていい。愛していると言ってくれ。それぐらいの勢いで全員が「どのように伝えるか」から考えはじめるんですね。
「誰に伝える」のか見えていないのに。「何を伝える」のか決まってないのに。
そして恐ろしいことに「誰に」と「何を」はお互いセットの関係性なのに、これまたほとんどの未経験者氏が繋がっていなくても気にしない。というか繋がっていないことがわからない。
そんな馬鹿な、と思うでしょう?でも本当なんですよ。みんなもう無邪気なまでにターゲットと訴求点がつながらないまま考え続けている。そりゃ答えなんかでないですよ。妥当解だとしても。
■ ■ ■
すごく単純化した例で説明しますね。
ここに20代半ばのプログラマがいるとします。彼が勤めているのはSESです。彼としてはSESで腕を磨くのもいいんだけど、せっかくものづくりに携わるなら自社開発の環境で働きたい、と転職しようとします。そういう人がほしい、とクライアントが言ったとする。これが「誰に」です。
そのクライアントは自社でWebサービスを提供しているベンチャーです。若手技術者がほしいので求人広告を出します。ベンチャーということもあり、いかにもエンジニアが好きそうなモダンな人事制度や組織風土が自慢。そこで働きやすさを訴求しようとします。これが「何を」です。
この「誰に」「何を」は果たして噛み合うでしょうか。ロジックが通るでしょうか。このnoteをご覧になっている賢明な読者諸氏ならわかりますよね。ぜんぜんつながりません。なんだそりゃ、と思うでしょ。
ところが多くの未経験者は、これを平気でやってしまうのです。さらに恐ろしいことにそのまま「どのように」まで考えてきていて(ほとんどウソです。最初に自分の考えやすいように「どのように」を作ってしまい「誰に・何を」は完全に後付けです)それがたとえばこんな感じ。
エンジニアパラダイスを探しに行こう。
は?
という感想をあなたは抱くでしょう。少なくともぼくは抱きました。そしてうーん、どこから直せばいいんだろうか、と頭を抱えることになります。もちろん当の本人は自信満々です。
この場合は「どのように」はいったん横に置き、今回の採用ターゲットはどういうタイプでどんなスキルを持っているエンジニアなのか、を再確認するところからはじめるわけです。
その上でターゲットを変えるのか、それとも訴求点・USPを見直すのかの判断をする。まあ、ごく一般的なチューニングですね。
そしてここがポイントなのですが、未経験者氏は自分は間違っていない、と思いこんでいるので、その認知のゆがみを直す必要があるのです。しかし、このゆがみ、20数年にわたって培われてきたその人の考え方なので、そうそう変わるものでもありません。
さあどうしよう、とあなたは頭を抱えるのです。
それが、あなたをもう一回りスケールの大きな求人広告制作者へと成長させてくれるはずです。では、グッドラック。
お わ り
と、いうわけにもいかなさそうなのでもう少し追記するとですね。
■ ■ ■
本来なら「誰に」「何を」「どのように」の順番で考えていければ何も問題ないんですよね。
でも中には、っていうかほとんどの人が「どのように」から思いついちゃう。これはもう仕方ないんじゃないか、いかんともしがたいことなんじゃないか、人間の性(サガ)なんじゃないか。
とうとうぼくはあきらめました。100人ぐらい面倒見てて、ものの見事にみんなそうなんだから。もしかしたら「どのように」から考えるほうが正しいんじゃないか、とすら思うようになりました。間違ってるのは俺。
そうだ、いっかいそれでやらせてみようかな。
そこで「どのように」を思いついたら、それは「本当に?」あるいは「本当か?」と検算をするように「誰に」「何を」を後付けで検証してごらんよ、と未経験者氏に提案してみた。
それなら未経験者氏でもできそうだし、何より自分の最初の思いつきをなんとか正当化しようとするので必死にこじつけを考えるようになる。こじつける材料を探しにいく。
これが、よいのだと思うんです。このあがきが。
これを何度か経験していくうちに、バックキャスティングだと無駄が多い、と気づく。なかなかフルスイングでも当たらない。そうしていつしか正しいフォームである「誰に」「何を」そして「どのように」の順番で広告設計ができるようになるんです。
そして、これが今回の結論なんですが!
こういったことを汗かきながらなんとか教えて、実践させて、失敗して、それを糧に再トライして、鼻水垂らして、みたいなことをなんども一緒に繰り返しているうちに、あなたのコピーライティングスキル、求人広告制作の力がいつの間にか磨かれているのです。
そう、メンバーへの「教育」とはほかならぬ教える側、つまり自分の再教育になっている。過去の自分の成功体験を横において、学び直しする得難い機会なんです。
「教育」の経験があるかないかでは求人広告制作者としての分厚さ、経験値、その他いろいろな面で大きな差が生まれる、というぼくの説もなんとなく納得いきません?
これを読んでいる求人広告制作者のあなた。教育する機会を得られたら、それはものすごく大事な経験を積める場ですから、チャンスだと思っていっぺんマジに取り組んでみましょう。
間違っても「上の立場だ」と勘違いして、パワープレイで詰めたりしないように。ありがちなんですが、そういう輩はみんなフォースの暗黒面(Dark side of the Force)にひきずりこまれておかしなことになってます。これホントよ。
今回も最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?