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クライアントに憑依せよ

毎回毎回徹頭徹尾求人広告制作関係者にのみ向けて書いているnoteです。今回は求人広告制作者はイタコたれ、というオカルトな話。

極論すると、求人広告をつくるということは、その会社の当事者にどれだけなりきれるか、ということなんですよね。

その会社の当事者とは、そうだなあ、採用担当とかのレベルじゃなくて経営者。経営者の脳というか、心にどれだけ憑依することができるか。

だから、非常に疲れるんですね、本来。一本つくると全身の力が抜けるぐらいぐったり。ほとんどの人がそこまでやってないからわからないとおもうんですけど。

あ、ここまで読んで(こいつ、やばいこと言いはじめた。もうフォローやめよう)とか思わないでくださいね。大丈夫です。ぼく大丈夫。いたってまともです。

あ、ここまで読んで(こいつやっぱりやばいわ。病んでるやつほど自分のことをまともだと思いこむからな。フォローやめよう)とか思わないでくださいね。ほんと、大丈夫ですから。

あ、ここまで読んで…ってキリがないのでここらへんでやめときましょう。

誤解を恐れず言うと、あと、ごく少数の「わかるよ!」という人にはわかってもらえるとおもうのですが、イタコなんですよね。企業広告をつくるときの要諦って。そのことは確か以前、前田知巳さんがインタビューでおっしゃっていて。

前田さんといえばユニクロや宝島社、森ビル、エン・ジャパンなどの企業広告をいくつも手掛けておられる当代きってのコピーライター。そんな前田さんが仕事をするにあたって大事にされているのが、経営者に憑依することだと。

前田さんはそのことをファーストリテイリングの柳井さんに気付かされたそうです。最初のミーティングで「どうぞ、私の頭の中に入ってきてください」と柳井さんに言われたと。

前田さんはそれがきっかけで「企業人格」を見て「憑依」して「相手を理解してコピーを書くスタイルを身につけた。

経営者にしか見えない景色があり、経営者の頭の中には言葉がぎっしり詰まっているのです。でもそれを言語化することができない。だからコピーライターに依頼がくるということなんですね。

ぼくはこの話を読んだとき「企業人格」というキーワードにピンときた。というのもぼくも求人広告の現場にいたとき、しょっちゅう「会社柄」という言葉を使っていたからです。

会社柄とは、人柄の会社版。会社は人でできている。であれば、そこに集う人たちのキャラクター、人柄がひとつの会社のカラーを表すのではないか。いま考えるとちょっとレガシーな感覚かもしれませんが、なにせ20年ぐらい前のことですからね。

そしてその会社柄って前田さんが言うところの企業人格と同じなんじゃないか。求人広告とはその会社で働く、できれば獅子奮迅の活躍をする人を採用するためのもの。で、あれば会社柄を見て憑依して、相手を理解してコピーを書くことが必要なのではないでしょうか。

■ ■ ■

で、ここからが本題です。

なにをどうすれば憑依できるようになるか。さすがに方法論については前田さんも口にされていませんでした。なのでぼくなりのやり方を紹介いたします。きっと前田さんとか一流のひとはもっとすごいやり方をされているとおもいます。鬼滅でいえば柱みたいなもんですからね。

ですが、これからご紹介するのはなにしろぼくのやり方なので、誰でもかんたんに真似ができるとおもいます。そこは自信あります。

①徹底的に下調べ

ぼくが求人広告、あるいは採用ブランディングのお手伝い、はたまたインタビューでもそうですが、なにか仕事に取り掛かる時、必ず事前に下調べします。

ネット?そんなのは当たり前です。ネットで調べてあたりをつけて、関連書籍があれば当たるし、もし足を運ぶことができればその会社のサービスや事業に触れられる場所まで出向きます。

場合によっては商品を購入することも。そうすることで自分の中にその会社の要素を放り込むのです。入手できる情報を全て並べて読む、見る、場合によっちゃ聞く、そして感じること。これが第一のステップ。

②自分との接点を探す

調べてわかってきたことがあるとおもうんです。うっすらと、かもしれないし、ぼんやりとしているかも。だけど、なにかその会社や人についてのイメージがつかめかかっているとおもいます。この時点ではそれが正しいか間違っているかはどうでもいい。

そうしたらこんどはそのイメージに結び付けられる自分の中の「要素」を探してみます。それは経験や思い出でもいいし、信念でもいい。考えかもしれないし、理想、夢といった場合もありえます。あきらめず、丁寧に探しだす。そうすれば必ず何かは見つかるはず。逆に見つからないことにはここから先には進めません。

たとえば、極端な例ですが、ハードワーキングな不動産会社がクライアントだったとする。ハードワークなんていまどき、嫌だよ…といって考えを止めてしまったらおしまいです。

ハードだって不動産だってそこで働いている人がいる以上、なにかいいことがあるはず。そう思いながら資料をいちいち確認していく。そうするとふと、そうか、厳しいことは厳しくてもそれが将来の役に立つとわかっているなら、踏ん張れるな。よく考えたらオレもそうだったし。みたいな自分の経験との接点が見つかるのです。

③接点を言葉にして相手にぶつける

最後に、見つかった接点をキーワードへと昇華します。凝った表現でなくても、レアな言葉で構いません。そしてそれをクライアントにそのままぶつけてみる。初顔あわせの場とか、最初の打ち合わせで。そうして相手の反応を見るんです。

そこでホットな手応えや「そう!そうなんだよ」という強い同意が得られれば憑依の第一歩は見事に着地。ベストは「言われてみればそうだよね」とか「言いたかったことはそれ」という感想です。ここまでくればクライアントの想いを言語化できているといえるでしょう。

万が一、色よい返事が得られなくても大丈夫。それをきっかけにさらに深堀りするか、あるいは別の切り口を考えることができます。とにかくこの稼業、いちばん困るのは手がかりがないこと。イエスだけでなく、ノーでもいいので、何らかのキューがあればそこから発想できます。

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このやり方は、基本的にパッケージングできません。毎回オーダーメイドの作り方になります。ゆえにビジネスサイドからは忌避されがち。拡大再生産できないですからね。

しかし、ぼくは知っています。成果物はかけた時間と手間、そして熱量と対象物への想いによって出来上がりに天と地ほどの差が生まれることを。

パターン化して、汎用化して、誰でもある一定の水準のものが作れるような体制を整備した先には絶対にハイクオリティな求人広告はつくれません。これから少子高齢化を迎え、AIの台頭が本格化していく時代。ひと山いくらの採用は淘汰され、大量生産型の求人広告はますますその価値を失っていくことでしょう。

と、いうよりそれはもはや求人広告ではなく、単なる求人情報なのかもしれませんね。先日、原野守弘さんもトークイベントでおっしゃっていた「広告と販促は違う」という話が、ここにもつながるとおもいます。求人広告と求人情報は違う。あ、こんどこのテーマで一本書きますね。

それでは!チャオ!

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