【詩】挽歌
挽歌
少しづつ距離ができる
希望が生まれるたびに
願うたびに
ぼくたちは言葉で幾多の景色をつくった
まるで国産くにうみのようだと君はいい
ぼくは初夏に横たわる丘陵のような
君のなだらかな腹を無言で撫でた
とるに足らない戯れの
過ぎてゆくほどに
たまらなく愛おしくなるのは
なぜか
希望がかなえられるごとに
言葉は単なるツールとなって
ぼくたちは
労働者の消えた鉄の街の
払い下げアパートで
今年も
しらけた夏をむかえる
わたしの羽を切ればいいのに
と君は欲情しなくなったぼくに
痩せた背中を見せる
ぼくはかつての
可憐な白い翼を思い出し
キーボードをたたくだけの
貧弱な指で君の
年老いた少女のような肩胛骨を
撫でながら
羽のかわりに
髪を切ってやろうか
とできるだけ凶暴な顔つきをして言うが
言葉は既に柩のなか
そうだ 明日は
この鉄の街のファミレスで
お得なランチを食ったあと
仲良く
二人の葬式を出しに行こう
語りあえば夢は美しい翼となって明日を彩った
と君は言うだろうが
古泉千樫の短歌に自分のほろ苦い思い出が重なってできた詩で、
いわば、「あの頃」へのセンチメンタルジャーニーです。
あの頃は、上村一夫の「同棲時代」の雰囲気が
うっすらとまだ残っており、
時折、かぐや姫の「神田川」もラジオから
ながれてきていた・・・
そんな気持ちの入りだったかなぁ。