〈表〉
妻のいぬ土曜や午後の初しぐれ
湯呑みに乳皮張り冬に入る
ここ三日顔知る人の訃がなくて
くすぐってみる猫の脇腹
つゆの世の摩天楼に出るフルムーン
ワイン新酒でよぶいつもの手
〈裏〉
水蜜桃つらいきのうを思い出に
眠れるからだときに掻く太股
憎しみが愛に変わって夜が明ける
着信に孔雀とあり。「誰?」
名店の菓子折で詫び浜に逃ぐ
すべてはかなしシャボン玉吹く
夏河をわたる足にかかる月
蚊に刺されつつ読む色通鑑
噴煙の窓より見えて浅間山
なかなか打たぬ碁敵ありて
住み慣れし庵の谷は花盛り
春風駘蕩妻は臨月
今回は、つれづれ俳句(3)の中の句をアレンジして発句にしました。