うつくしいキャベツの食べ方【つれづれ綴り帳】
寒さもいくぶんやわらぐニ月の末。
暦のうえでは春とはいえ、春の野菜であるさやえんどうやたけのこは、まだ出回らない。キャベツも冬のままだ。
春の葉のやわらかいキャベツとは違い、きゅっとひきしまり、冬の寒さを耐えぬいたものならではのひややかな甘みがある。
今回は、そんなキャベツのぜいたくな食べ方をご紹介したい。
調理法はいたってシンプルだ。大ぶりのフライパンか鍋に、水をはる。薄氷が張るみたいに、ごく浅くでよい。
それをやさしく火にかけ、ちいさな泡がうかんできたら、ちぎったキャベツを入れる。包丁は使わない。このとき一つまみの塩をくわえる。
しばらくして、キャベツの緑が鮮やかになったころあいで火からおろす。けしてくたくたになるまで煮ないこと。
火を消したらフライパンに入れたまま放置する。暖房をつけず、すこしひややかな、春の見えかくれするていどの気温がふさわしい。
よいぐあいに冷めたら、器にもりつける。ソテーした鶏や豚をそえてもよい。
この料理のキモは、気温である。冬のおわり、春のはじめならではのものであり、冷蔵庫にはけしてまねできない。冬の朝の空気を閉じ込めたかのような、ひんやりとした口あたりは格別である。
またほんのりと透けるような緑色は、春の芽吹きのような、季節の訪れを感じさせる。
キャベツの素朴な甘みをぞんぶんに楽しめる、冬と春の境目のころにうってつけの一皿。ぜひ、試してみてほしい。
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