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映画日記『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』 瞑想の大地インド

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アップリンク吉祥維持で見る。月曜日の昼間だったので、客の入りは四分の一ほど。私も含めて老人ばかりだ。私はビートルズの映画だから観に行ったのだが、この映画に関して何の情報も得ていなかったし、ビートルズは大好きだが、私はビートルズの世代ではない。

ビートルズの世代の日本人は私よりも数歳、年上だ。そのせいか、私より年上の男女が目立った。みんな定年生活者だろうか。

それにしても、困った映画だった。途中で何度も眠りそうになった。ビートルズの曲は1秒も流れない。流れるのはタブラとシタールを使ったインド音楽だ。そして、肝心な部分は、全部、イラストだ。アニメでもない静止したイラストに、ナレーションがかぶって、語られるのだ。

1968年のある時期、ビートルズの面々は、インドの新興宗教の施設で過ごしていた。超越瞑想というのが、そこの施設の売りだ。それを会得すると、非常にコスパが良く創造性が発揮できるようになる、みたいなハナシだ。

指導者への傾倒の度合いも、4人それぞれ異なっていて、ジョージが一番、入れ込んでいたようだ。メンバー4人の滞在期間もバラバラだ。リンゴは、11日くらい。次に短いのはポールとジョンで、それでもひと月以上いたようだ。ジョージが一番長くて、二か月くらい。

滞在中に、『ホワイトアルバム』収録にされる曲を作ったという。というのが、ビートルズ側から見た、ここでのハナシだ。

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このドキュメンタリー映画は、カナダ人が作っている。本人が主人公として登場している。ビートルズが滞在していた時に、たまたま彼もそこに滞在して、ビートルズと交流を持って、また、数々の写真を撮っていた。彼が滞在したのは、わずかに8日間だ。

彼はカナダ人で、父親のコネか何かでテレビ関連の仕事についていた。ところがある時、悩みを抱えて、現状を打破しようとインドにやってきた。そしてその新興宗教の施設に辿り着いて、瞑想を学ぶことにした。

本来は断られるのだが、彼の熱意が通じたのか、ビートルズ滞在中の施設の内部に入って過ごすことを許される。そこで、たまたま彼は、ペンタックスのカメラを持っていて、なぜか、ネガフィルムではなく、リバーシブルのフィルムで、滞在中のビートルズの撮影に成功したのだった。

帰国後、しばらく写真のことは忘れていたが、彼の娘の働きかけによって日の目を見ることになり、現在、それらの写真は、ビートルズのインド時代として、いろんな本や雑誌に収録されたり、ロンドンだかリバプールのビートルズ博物館に展示されるようになっている。

で、理由はわからないが、それから50年くらい経って、彼は、インドをメインにしたビートルズの聖地巡礼の旅に出ることにする。その様子を、撮影したのが、この映画だ。

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同じ志を持っていない人の聖地巡礼を見せられても、面白くない。志が「ビートルズ」ならいいのだが、どうもこの人の志は「瞑想」なのだ。だから瞑想に興味のない人には、いくらビートルズが好きでも、結構、ツライ映画になっている。

逆に瞑想好きの人には、面白いのだと思う。その証拠に、この映画の制作にも関わっている映画監督のデヴィッド・リンチは、瞑想について熱弁をふるっていて、それがこの映画の見どころの一つになっていたりする。

施設滞在中の、主人公とビートルズの交流の場面は、前に書いたように、イラストで再現され、そこにナレーションがかぶせてある。実際にあったことなのか、主人が勝手に言っているだけなのか、裏はとれていない感じだ。

また、主人公が若き日にインドに来る原因となった父親との確執や、その後の人生、現在の職業、対談相手として出てくる娘が何をやっている人なのかといったことごとは、この映画では言及されない。

今回のインド旅行には、ビートルズオタクの権威のような人が同行するのだが、インド滞在中にビートルが新曲を何曲作ったかが争点となる。主人公は48曲と言い、オタクの権威は、いろいろな資料を駆使して30曲だと言う。だからなんだという場面だが、このドキュメンタリー映画の最大の山場だったりする。

そのインドにある新興宗教の施設は、長らく廃れていたが、主人公などの尽力もあって、インド政府からの助成金を得て、現在は、見学の出来る観光施設っぽくなっている。その宣伝のための映画なのかと思ってしまった。

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