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あのときのわたしが、ここにいた。『あっつあつの、ほっくほく』-10代だったわたしが、贈りたい1冊-

こんにちは。暗やみ本屋ハックツ、学生スタッフの近藤です。こんな状況下で集まりづらい中、水面下ではハックツも色々なことを動かしていていつもワクワクが止まりません。

さて、今回の投稿はスタッフのはしもとさん!大人のスタッフの皆さんの中では年も私たち学生スタッフと比較的近いので、いつも親しみやすさを感じながら話せる、笑顔の素敵なお姉さんです。

今回紹介されている重松清さん、私も好きです。実際に私が高校生のころにハックツしたこともあったりして、大人の方から寄贈される数としてもすごく多くて、とても素敵な作家さんですよね。

そして本のタイトルにもぴったりな、暖かくて優しさを感じる紹介文となっていますのでぜひご覧ください。

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こんにちは!暗やみ本屋ハックツのはしもとです。10代のときに救われた本の話、からは少し趣旨がずれるかもしれないですが、10代の自分を救った話を紹介しようと思います。(記憶が定かではないのですが、たぶん、10代の時に読んだ本です。)

中学2年、はじめて「きみの友だち」を読んだときから、重松清さんが好きでした。その頃、ちょうど「友だち」が分からなくなっていて、本屋さんの平積みにそのタイトルを見つけたとき、めちゃくちゃ気になってしまった。

でも気になる本ほど、すぐに買えないことってありません??悩んで手にとって、なんとなくその日は買わずに帰って、だけどどうしても気になって、それを何回か繰り返したのちに、ようやく買ったのをいまでも覚えてます。焦らした甲斐あってか、買ったあとは一気に読んで、何回も読んで、妹にも貸して、表紙はもう無くて、わたしが10代のとき読んでいた本は概ね実家にあるけど「この本だけは」と持ってきた、大切な本です。

しかし今回紹介したい本はこれではなく、同じ重松清さんが書いた「あっつあつの、ほっくほく」。季節ごとの短編がまとまっている「季節風」シリーズってのがあるのですが、その「季節風 冬」の1つめに挿入されているお話です。

主人公は会社で部長役職を任される女性。ふと、彼女が高校生のとき、バスケ部のキャプテンとして厳しいメニューを組むも反発されて、部内で孤立した帰り道に焼き芋屋さんの焼き芋を食べたことを思い出す話です。

短い短編、ほかにもたくさんの話が入った本のうちのひとつですが、でもこれが、とても心に残ってるのです。

すこし話は変わって、このテーマで本を紹介しよう!となったとき、めっちゃいいやん!って思ってノリノリでした。どの本にしよう?何にしよう??でも、いざ紹介する本を考えはじめたら、想像よりずっと悩みました。こんなはずじゃなかった。なんでだ???

というのも、わたしは比較的穏やかな人生とおもうのですが、なかでも相対的に谷だった高校生のとき、ひたすら部活と勉強に追われていて、ぼんやり考える時間を持つとくらーい気分になってくので、敢えて作らないようにしてた気がします。通学はひとり自転車だったので、そのときに、あーでもないこーでもない、とうだうだ思考を練り回してはいたのですが。

となると、本を読む余裕も無かったらしく、読んだ記憶もほぼありません。自分の状況を俯瞰して見れてなかったし、見る機会も作れてないまま、部活を引退して、高校を卒業して、大学生になっていきました。

そんなこんなで大学生になったものの、高校生のときの感覚をどうにも捉えきれないままでした。たとえば巷にはキラキラ部活で青春してる高校生の物語がたくさんあるけど、それをできなかった引目か、なかなかそういった物語に触れることができなかったり。それを人並みに見ることができるようになったのが、紹介した物語のおかげと思うのです。

といっても、紹介した物語と自分とは、高校の部活の人間関係がきつかったところ以外、共通点はありません。部長でないので、厳しい練習メニューを周りにいう発言力もありません。勿論、焼き芋屋さんにも出会ってない。

だけどその本に描かれていた彼女の心情と似たものが、当時の自分にもたしかにあって、あぁ、そう感じてもいいんだ、そう感じること、ほかの人にもあるんだ、って、そのときの自分を認められたような気がしました。

それまでずっと、その当時の自分の感情を客観的に捉えられていなくて、その感覚のなかに、ずっと閉じこもっていた。だからキラキラ青春物も、それをできなかった自分のフィルターからしか、見ることが出来てなかった。そのことに、この話を読んでようやく気が付きました。物語の主人公を通して、当時の自分が見えて、そうやって思うことがあっていい、大丈夫、と感じることができて、それでずっと、楽になれたのです。だからこの物語は、わたしにとって印象的な話なんだと思います。

部活で、人間関係でうまくいかない人に、読んでもらえたらと思います。でもそれ以上に、重松清さん全般を薦めたいです。といっても、全然読んだことのない本もあるのですが。。。
重松さんの書くお話は、「季節風」シリーズだけでもいろんな主人公がでてきます。世の小説、めちゃめちゃいろんな人がいろんな物語を描いているのだけど、重松さんの本は、所謂ヒーローに、主人公になれない主人公も多くいて、だよねぇそうだよねぇ、カッコつけたくてもうまくいかんくって逃げたくなる時も、あるよねぇ、なんて頷きながら読みたくなるのも多い。

ほら、みんなあんまり、だっさい顔なんてしないじゃないですか。あー、ばかなことしたなー、こんなだっさい気分、わたしだけなんかな、あの子もこの子も楽しそうなのに、涼しげに器用に毎日暮らしてるのに、なんで自分はこんなに、とか思うじゃないですか。そんな「くっそー」って思うときに、まあまあ、どうした、なんとかなるんでねぇの、って、そこに居てくれる、そんな物語が多いから、なにか読んでみると、いいかもしれないなあと思います。
少々ヘビーなのでも大丈夫なら、自薦短編集「卒業ホームラン」「まゆみのマーチ」がおすすめ(ほんとうに涙無しには読めない)。軽く読みたいなら「季節風」シリーズ、良いです。

でもいちばんは、あなたがそのとき惹かれた物語、タイトルでも表紙でもまわりの人からの口コミでも、そのときいいなあと思ってる本を、何度も読んで、あなただけの一冊にしてほしいです。ね!

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