見出し画像

はじめてのペインティング

いよいよバリ島に行きます!

今日、いよいよバリ島へ出発する。

バリ島へ行くのは、観光目的ではない。

展覧会のブッキングに行くためだ。

去年から、現代アート作家の師匠が、バリ島での展覧会を企画してきた。


なぜバリ島か?というと、
今から約35年前、師匠がアーティストになることを決意した場所だからだ。

そして、バリには、師匠が35年のアート活動をとおして培ってきた縁がある。

海外のつながりを「若い世代に引き継ぐ」ため
そして、忙しいなかアートスクールに来てくださる方々に「アーティスト体感をしていただく」ために、
今回、バリ島へ飛ぶ。

いただいたお菓子。ありがとうございます🙏

師匠の念願

私は師匠にお会いした当初から、
「海外のつながりを、若いひとたちに渡したい」という話をお聞きしていた。

そして、実際に、私を弟子として受け入れていただき、
約2年半、熱心に指導をしてくださった。

アートのことも知らなければ、アーティストになる予定もなかった私を、
よくここまで面倒みてくれたと思う。

でも、それだけ自身のアート活動や若手育成に対して、
「切実な思い」があるのだろう。

制作中の師匠

師匠いわく、35年間のアート活動は「壮絶」だったという。

まず、35年前の日本には、アーティストに対する理解がなかった。

アーティストを志した当初、「あいつは頭がおかしくなったから、近づかないほうがいい」と言われ、
友人知人がいっせいに離れていったという。


それなら海外へ!と思って、海外でアート活動を展開したところ、これまた苦難の数々…

海外でのアート活動は、タフな師匠でも「涙がちょちょぎれた」らしい。

インドで歓迎された師匠一行、師匠は右から2番目

師匠について約2年半、私も泣いたり怒ったりして、アーティストの大変さを痛感した。

しかし、アーティストの仕事は「明るい未来をつくること」

どれだけ辛くても、泣きながら、"より良い未来"に向けてひた走ってきた。

私は最初、どうして師匠が熱心に「若手育成」をするのか分からなかったけど、
今なら分かる気がする。

「明るい未来」にむけてひた走っていると、
自分と周りの人が豊かに生き残っていくために、次の世代のことを考える必要があると考えるようになった。

そして、とうとう、私は海外でアート活動をはじめる時がきた。

師匠の培ってきた人脈を、受け継ぐときが来たのだ。

師匠がバリで撮ったダブルレインボー

自分にできること

正直、ここまで早く、海外に飛ぶことになるとは思わなかった。

バリ島に行くのも、海外で展覧会のブッキングに行くのも、
はじめてのことだらけで、ドキドキしている。


でも、これまでアーティストとして経験してきたことを振り返ると、

このタイミングでアート活動を海外展開していくのは、妥当だと思う。

師匠の念願と、自分のキャリア、そして、自分と支えてくれた人達の未来…

今が大事な局面であることは、私にも分かる。

今回のバリ島での展覧会のブッキングに際して、「自分になにができるのか」考えた。

色々考えたりやってみたりしたが、結局、自分には「作品を作ること」しかないと気づいた。

急遽制作をはじめ、2月20日、出発日の直前に、気合いで作品を仕上げた。

はじめてのペインティング

しかも、今回は、生まれて初めてのペインティング作品。

今までは、写真や映像だったり、自然素材をつかった作品しか作ってこなかった。

私は美大芸大を出たわけじゃない。

絵は描けないだろう、と思ってペインティング作品は避けてきたが、
そうも言ってられなくなった。

ペインティングは、制作コストや修正のしやすさ、海外への持ち運びのしさすさといった、
現実的な良さがある。

そして、自分の伝えたいことをよりわかりやすく伝えるには、
今までのやり方だけでは間に合わないと思った。

手で描くしかねえ!

時間もなかったので、何も分からぬ状態から、真っ白のキャンパスに向かった。

ひえ〜

制作期間、約10日間。

時間がある限りは、ぶっ通しで制作をし続けた。

初めてだったので、勝手が分からず、一つひとつの工程に異様に時間がかかってしまった。


それでも、大好きなニホンカモシカを描き上げるために、
細い筆で一本一本毛を書き込んでいった。


毎日、カモシカの毛を描き続けたせいで、トイレの壁がカモシカの毛に見えたこともある。

思ったようにいかないことが多く、イライラしながらも、なんとか絵を完成させた。

作品について

タイトルは、『I gaze at you』。

「私はあなたを見つめている」という意味。

『I gaze at you』

モデルは、家にやってきてくれるニホンカモシカの子供「かもジュニア」。

去年の5月、家の周辺で生まれて以降、母親と一緒に草を食べにやってきてくれる。

庭に侵入するニホンカモシカの親子

今年の冬、ニホンカモシカの親子が草を食べにやってきたときのこと。

私たちの目の前で、ニホンカモシカたちが地面に落ちた渋柿を食べるところを目撃した。

渋柿を食べるかもジュニア

ニホンカモシカは、ニンゲンがいても、構わずに草を食べ続けるクセがある。

しかも、こちらをじいっと観察しながら食べる。

渋柿を食べるときも、相変わらず、こちらの様子を伺いながら、もぐもぐしていた。

しかし、ニホンカモシカの子供にとっては、渋柿は「大人の味」だったらしい。

柿を頬張ったあと、ビックリして首をブンブン振ったかと思えば、
そそくさと山に帰っていった。

そりゃ、渋柿だもん。そのまま食べたら渋いだろうよ。

渋柿を食べて、パニックになるかもジュニア

でも、私たち(ニンゲン)が住んでいる場所で、
ちゃっかり渋柿の味を覚えていく、かもジュニアが愛おしかった。

ヒトと特別天然記念物ニホンカモシカの共存、

そして、母親に愛されながらスクスクと成長していく「かもジュニア」…


印象的な出来事だったため、かもジュニアが渋柿を食べる場面を題材にした。

I gaze at you

しかし、かもジュニアが可愛いという理由だけで絵を描いたわけではない。

師匠いわく、現代アートには「問題提起」が入っていなければならないという。

「問題提起」とは、問題や課題を相手に投げかけること。


現代アートでは、アーティストが世の中もしくは作家個人が抱える「問題」を作品で伝え、

鑑賞者は、その問いに対して考えを巡らす。


こう説明すると、むずかしそうに思えるが、
要は「新たな視点を提供し、いままでにない解決策を模索するきっかけをつくる」ということ。

今回も師匠の指導通り、『I gaze at you』に私なりの「問題提起」をこめた。

実際のニホンカモシカよりも、目をぐりっと大きく描き、
ズームしたように、顔をキャンパス一面に描いた。

なぜこのように描いたかというと、
見る人がまるでニホンカモシカに、じっと見つめられているように思ってほしかったからだ。

ニホンカモシカは、ニンゲンを見ると、じーっとこちらを観察するクセがある。

実は、ニホンカモシカが乱獲されていた時期も、じっと見ているスキ捕獲されていたらしい。

でも、ニホンカモシカは氷河期から日本に生息しているとされている、歴史の古い動物である。

そんな彼らは、他の動物と比べて、非常に好奇心が強い。

めっちゃこっち見てくる

そして、思っている以上に、ニンゲンを見分けている。

だから、私たちがカモシカたちを見るよりも、カモシカの方がずっと私たちを観察しているかもしれない。

もちろん、彼らの考えていることは分からない。

ニホンカモシカは、ペットでも家畜でもなければ、種族も違う。

でも、こちらをずっと観察しているからか、
私たちの立ち振る舞い次第で、ニホンカモシカの対応も変わってくるのだ。

昨今、同じ人間同士でも、価値観があわずに軋轢を生むことが多い。

とくに、スマホの普及にともなって、人の価値観のちがいがより顕著になってきていると思う。

なぜなら、いつでも好きなように、いろんな情報にアクセスできるからだ。

価値観のちがいが悪い方向にいくと、誰が悪いとか、誰が正しいとか、誰が偉いとか、
そんなつまらない話がはじまってしまう。

しょうもな

しかし、最近、周りのひとは思った以上に自分のことを見てくれてることに気づいた。

だから、私も周りのひとをよく見る。

ニホンカモシカと私のように、お互いの考えていることは分からないが、
「お互いにきちんと見ている」という意味において、どちらも対等なはずだ。

そして、自分のたち振る舞いひとつで、自分を見てくれているひとの心持ちも変わっていく。

このことを、今の時代にこそ、改めて認識したい。

そんな思いをこめて、必死にニホンカモシカの絵を描いた。

おわりに

今回バリ島に行けば、全く価値観のちがう方たちに出会うだろう。

でも、相手も人間。

自分が思っている以上に、ちゃんと自分のことを見ているはず。

だからこそ、いつものごとく、前向きな心持ちを大切にしたい。

そして、出発ギリギリまで描いた作品も、バリに持っていく。

これからどんな出会いがあるのか、作品がどう見られるのか、とても楽しみだ。






この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?