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うつヌケ うつのトンネルを抜けたひとたち:本の紹介(ネタバレ少)

代官山の蔦屋書店で購入したこの漫画。「代官山の蔦屋」に全く相応しくない本書(失礼)は、漫画関連のピックアップコーナーの前列にありながら、陳列されていた4冊すべてが埃をかぶっていた。

オシャレ書店の国内筆頭株である代官山蔦屋で、表にありながら埃をかぶっているという、あまりにトリッキーな陳列と、如何にも「手塚でございます」という表紙に堂々と鎮座する著者・田中圭一氏の文字に、同じく代官山には不釣り合いなぼくは迷いなく手にとった。アレルギー性鼻炎持ちのぼくでも、コロナ渦にあってマスクをしていたので、くしゃみをせずに済んだのは、不幸中の幸いである。

で、立ち読みをした。そのあとちゃんと買った。

まず、嬉しかったのは、「鬱」のくせにライトでPOPなピンクの漫画に、「え?田中さんってこんなイケメンだっけ?」というイラストだ。嘘にまみれている(語弊あり)。でも、憂鬱なときほど難しいものって受け付けないし、「鬱病で辛いです。何もかも嫌です。きえてなくなりたいです」みたいな人には、これくらいあっけらかんとしたテイストの方が受けれられ易いのではないだろうか。

内容は、田中さんが様々な人に鬱から抜け出した、「うつヌケ」のエピソードをこたつでインタビューするというものだ。断じて、コタツ記事というわけではない。ちゃんと取材しているはずだ。ゆるっとした世界観で、最後まで和ませてくれる。

登場するのは、ハチャメチャでダークな世界観で一世を風靡したアーティストの大槻ケンヂ氏や、直木賞作家の宮内悠介氏、内田樹といった有名人や、外資系OL、編集者、教師と多様で、いかにも「才能を発揮してバリバリやれてそう」な顔ぶれだ。

三者三様のうつヌケした人々が、人生のどこで悩み・つまずき、そしてうつと向き合ったり向き合わなかったりということが書かれている。

基本的に、能力が高い、才能がある人々なので「私と同じうつ仲間のエピソードが見られる!共感!」と思って開くと劣等感を刺激されて一生うつから抜け出せなくなる可能性があるし、実際は彼らもたくさんの苦しみを経て、悩んで、もがいて、またダメになって、うまくいかなくて、それでもなんとなく「うつヌケかも」みたいなことがあった、というだけなのではないかと思う。あまり悲観しないで、「ふーん、こういう人もいるのかも?」くらいに読めればよいかもしれない。漫画だし。

冒頭はカラーページで構成されており、WEBで立ち読みができる

Huluにはココリコの田中さんが「田中さん役」で出演するドラマも上がっているらしい。

ちょっと疲れたな、とか、苦しいな、という時、文字を追わずに漫画で気軽に「うつヌケ」のきっかけを探すには良著だと思う。

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