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【詩】こうもりの家

こうもりはいつのまにか家の中にいた
窓の内側に静かにとまっていた
ここは自分の家だと言わんばかりに
しっくりと落ち着いていた

まるで私の方が他人の家にいるような気分だった
だけどここはまぎれもなく私の家だった
こうもりには申し訳ないけれど
家から出ていってもらうことにした

窓を開けて
出ていってと声をかける
こうもりは気づいているのに
聞こえないふりをしている

仕方がないのでそっと手で押し出すと
こうもりは横目でこちらをちらっと見て
仕方がないなぁといった様子で
ゆっくりと空へ飛び去っていった

残された私は
空っぽになった家から
こうもりが消えていった空をしばらく眺めた後
諦めて窓をそっと閉めた


(ココア共和国2022年12月号電子版)


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