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【詩】一角獣の婦人

一角獣の婦人は
宝石で飾られた鏡に向かい
顔の角度を何度も変えながら
微笑みを送り続けている
鏡の中の婦人は真顔のままで
警戒を解こうとしない

婦人が
なだめすかしたり
説得したり
表情を変えたり
語りかけても
鏡の中の婦人はつれない

ついに怒りが湧き上がってくる
お前は私のくせに!
磨き上げられた鋭い角を鏡に向けて突進する
鏡の中の婦人も同じように向かってくる
今まで動きもしなかったのに
止められないまま角と角が衝突する

鏡には傷一つ付かず
婦人と婦人は互いが互いに
吸い込まれながら消えていく
尻尾の先まで吸い込まれてしまうと
何も映らなくなった鏡の周りで
宝石たちが光を放ち始める


(ココア共和国2021年9月号)

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