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心の余裕がある人は、譲れる人

先日、バスの乗り順を年配の女性が譲ってくれた。

60代前半くらいだろうか。小柄で眼鏡をかけていて、マスク越しでもふっくらした笑顔の女性だった。

社会人2年目のころ、ある人から「目上の人には、譲るんだよ」とアドバイスされたのをなるべく守っている。
そのときも、後から並んでいた年配の人たちに譲るつもりだった。

特に急ぎの用でも、具合が悪かったわけでもない。
ごく自然に譲られたため、無下にできずお礼を言って先に乗らせてもらった。

男子高校生にも乗り順を譲られたことがある。

妹と帰省し、Uターンするための高速バスを待っている最中だった。
昇降口が開いてから、先に待っていた男の子がいきなり「どうぞ」と声をかけてくれたのだ。

ひと抱えのボストンバッグを肩に提げていたため、荷物が重そうだと気を遣ってくれたのかもしれない。
内心「こんな高校生の子いるんだ……」と、その子がちょっとかっこよく見えた覚えがある。

ふっくらした笑顔の女性も、さりげなく親切な男子高校生も、「心の余裕がある人」なのだろう。

一方、妊婦でお腹も大きくなっていたころ、立ちはだかるようにしてバスを待っていたOLらしき女性をふと思い出す。

当時はムッとしたが、よほどのことがない限り、妊婦だからといって何事も譲ってもらう権利はない。

彼女は仕事がいそがしいとか、疲れているとか、自分のことで手一杯だったのだろう。そう考えると仕方ない。

いつも余裕のある人など、いない。
たぶん。

◇◇◇

この前はミスドの席が混んでいた。
年配の女性に「相席いいですか」と声をかけられた。

すると左側のボックス席に掛けていた年嵩の男性が「もう席立つんでいいですよ」とゆっくりテーブルを片づけ始めた。

女性はすこしの間私の斜め向かいに座り、左の席に移ると「すみませんね」と眉を下げて笑った。
私もマスクの下で笑顔を浮かべた。

左の席にいた男性も、心の余裕がある人だった。


※ヘッダーはみんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。

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