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「『所詮学生』なので失敗し放題」 HAIT Labで得られた学生生活最大の財産とは?

世界に通用するデジタル人材を育成するHAIT Lab。HAIT Lab出身生はデジタル変革の第一線で、さまざまな活躍をみせています。今回は、サッカーの「よいシュート」のために姿勢推定に関する共同研究を行っている、金子和樹さんにインタビューをしました。

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金子和樹
上智大学大学院理工学研究科情報学領域
2017年の夏、HAIT Sクラス1期生(現HAIT Lab)として参加。HAIT2期、3期と続けてメンターとして活動後、HAITのマッチングイベントを通してSENSY株式会社AI researcherインターンに参加。現在はアミフィアブル株式会社と姿勢推定についての共同研究を行っている。

― HAITに参加した経緯を教えてください。

大学2年生の夏休みが始まるころに、「東大HAIT(現HAIT Lab)1期生募集」という広告を目にし、「流行りのAI技術を勉強できるのは面白そう」という軽い気持ちで参加しました。当時は大学の授業でC言語を1年ほど勉強した程度で、機械学習の経験はありませんでした。

― HAITではどのような活動をしましたか?

機械学習のweb教材を利用して、小テストを交えながら短期間で機械学習について学びました。教材は、郵便番号の画像処理やコーヒーショップの売り上げなど身近なものをテーマとして進めるものだったので、モチベーションを落とさずに取り組めました。

また、松尾教授をはじめとした業界トップの方々によるセミナーを受けられたことはとても貴重な機会だったと思います。セミナーでは最新技術に関する話だけでなく、今勉強している内容が社会でどう役立つのか知った上で、さらにビジネス的な視点も手に入れることができました。

― HAITに参加して自身の中で変わったことはありますか?

プログラミングに対する考え方が変わりました。

大学で勉強したときは、「プログラミングスキルを身に着ける」ことだけを考えていました。しかし、HAITでさまざまな経験を積むうちに「課題に対して、どのようにプログラミングを活かすか考えることが大切だ」ということに気づきました。言い換えると、「欲しいスキルを一通り身につけるとどこに適応できるか?」「この課題にこのアルゴリズム使ったら面白そう」など、俯瞰的にプログラミングの活用方法について考えられるようになりました。

もうひとつは「飛び込む力」がつき、気づいたら動き続けられていたことです。

飛び込めるようになったのは「自分の実力に見合わないかもしれないけどとりあえずやってみよう」という考え方を持てるようになったからです。

私には「飛び込む力」によって成長できた大きなきっかけが3回ありました。

1回目は「HAITに参加するとき」です。AI技術は当時の最先端技術だったので、なんとなく難しそうなイメージがありました。しかし、できるかどうかより「面白そう」という気持ちが強く、HAITに飛び込みました。結果的にこの判断は現在の自分にとって大正解だったと思います。

2回目は「2期生のメンターになったとき」です。HAITが終わった後、優秀な学生のインターン先が決まっていくのを見ていると「平凡な自分には何か変化が起こることはなく、普通に大学生活を送るのかな」と思えてきました。そんなとき、お世話になったあるメンターの方から、次期メンターをやってみないかとお誘いいただきました。当時の実力で他人に教えられる自信がなかったので、最初は断ってしまいました。しかし、「実力はあとからついてくるから関係ない」とおっしゃっていただき、「それならやってみよう」と思い直し、2期のメンターになりました。実際にメンターになってからは、参加者からの質問に答えるために必死で教材を理解しようと勉強しました。また、わかりやすく説明する必要があったため、1期生として参加していたころよりも機械学習への理解が深まりました。

3回目は「インターンに参加したとき」です。某アパレル会社の購買データをもとに深層学習を使い、服を購入する人の特徴を解析しました。今まで試されてきた手法に加え、自分が新たにアルゴリズムを組み、上司に提案するところまで行いました。

最初は機械学習のスキル以前に、環境構築の時点で苦戦していました。しかし、わからないことは調べ、それでもわからないときは質問をたくさんするうちに、HAITで学んだことを実務に落とし込めるようになりました。

他にもデータコンペや勉強会など、さまざまな活動に参加した経験は今の研究活動にも活きています。大学生のうちは「所詮学生」なので失敗し放題です。今の実力でできるかどうかは関係なく、どんどん突っ込んでいけば大きく成長できると思います。

―金子さんがスキルを上達させるうえで、意識していたことはありますか?

調べる力と質問力を意識しました。

調べる力とは、プログラミングのエラーに対する考え方です。「エラーが発生する」→「自分の知識ではわからない」→「自分には才能がないな、やっぱりダメなんだ」の思考ではなく、プログラミングではエラーが必ず発生する前提でいることです。そうするとストレスなく調べられるようになります。調べる力に才能はいりません。

質問力とは調べてもわからないことを言語化して相手に伝える力です。とにかくたくさん行えばある程度要領が掴めてきます。特に、初学者のころは自分が時間をかけて悩むよりもわかる人に聞いた方が早い事が多くあります。

この2つは自分の意識次第で必ず身につきます。特に、アウトプットが多いHAITでは絶好の機会です。

―金子さんの現在の活動について教えてください。

サッカー選手の足の動かし方から最適なシュートフォーム(フォロースルー)の姿勢推定を行う共同研究を大学で行っています。

姿勢推定モデルが完成すれば、自分の体のどこをどのように動かせば綺麗なシュートが打てるのか細かくわかるので、シュート技術の上達をサポートできます。

開発方法としてはまず、OpenPoseという深層学習のモデルを使い、ひざや目の位置など18点の動き方をデータとして集めます。そのうち、シュートに大きな影響を与えるといわれる4点(右足を上げた角度、左右の足の距離、シュート時の体の傾き、横から見たときの腰の回転)を前処理し、教師なし学習でクラスタリング(注1)しました。

―研究活動で大変なことはありますか?

できるだけ人が決める設定値を入れないようにすることが大変です。例えば、最終的に目指すべき「よいシュート」の基準がわからないということです。サッカーの上手い人にシュート動画を見て点数付けしてもらうと、98点と80点の違いをはっきり説明できませんでした。ゴール率によるシュートの評価も試しましたが、試合のビデオでは画像が荒かったり、他の選手や審判が映りこんでデータの前処理ができなかったりしたので、断念しました。

最終的には、プレイヤーの経験年数で機械的に点数を決めることにしました。もちろん実際は経験年数=プレイの上手さとはなりませんが、これが学習において最も人の介入が小さなやり方だと考えています。

― HAITに参加して得たものは何ですか?

HAITで得た一番の財産は「人とのつながり」です。

HAITのメンバーはとても優秀で行動力があります。将来AIによってさまざまな革新をもたらし世界を変えていき、「HAITに所属していた人たちが改革を起こしているよね」と必ず言われるでしょう。そしてSTANDARDの創業者の3人、当時のHAIT代表やメンターの方との出会いは大学生活最大の財産だと思っています

(注1)前処理とは、コンピュータが処理しやすいように人が処理を加えること。クラスタリングとは、似たものをグループ化する機械学習の手法

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