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第7話「価値と幻想」

まるで静かな宇宙のような闇の中で、
ゆめみは考えていた。
宙を漂う四つの病気や症状達を、
じっと見つめながら、
その解放の鍵が自分の中にあるのではないかと。
すると心の奥底から何かが湧き上がるのを感じた。
同時に足元の方向に何か物影が動き、
目を丸くした。
恐る恐るその方向へ意識を向ける。
そこにはネコが一匹。
まるで遥か古から来た僧侶の姿をしたネコが、
ゆめみのすぐそばに姿を現していたのだ。
そのネコ僧侶は、
神秘的な雰囲気をまとう存在であり、
きっと時空を超えて現れたに違いないと
直感的に感じた。

ネコ僧侶: ようこそ、わが受容の世界へ。
お前は何を求めてここに来たのか…?

ゆめみは戸惑った。

ゆめみ: えっ、ネコ僧侶様が私の前に現れたのでは?

ネコ僧侶は、淡々と説明した。
自己探求の意識と宇宙を漂う意識が互いを引き合わせたと。しかし、ゆめみにはなんのことだかさっぱりだった。

ゆめみは、改めて自分の質問をした。

ゆめみ : 私は自分自身の中に、
四つの病気や病状達を解放する鍵がある気がしています!
なぜかって私自身、
人々の期待に応えようと必死になったり、
がんばってるのにうまくいかなくて、
自分を見失ってしまって、悲観的になってしまうことがあるからです。

ネコ僧侶: ほほう、価値観の錯覚か。
それは人々にとっての幻想であり、また、
君自身が創り出したものでもある。

ゆめみは、ネコ僧侶の飛び級の理解力からくる、
逸脱した返答に言葉を失い心を震わせた。

ネコ僧侶: これは気づきの出会い。
私が君に示す真理はこれにゃ、、。

ネコ僧侶は一呼吸置き、
淡々と語りだした。

ネコ僧侶: じぶんがつらい気持ちをもっていることに気づきなさい。
そういった気持ちに気づくだけで、
その気持ちがだんだんと消えてゆく。
悲しんでいないと無理に
言い聞かせるのではなく、
悲しいのはしょうがない、
放っておく、、。
悲しいことを”放っておく”、
”しょうがない”と気づくこと、
真の意味で ”あきらめる” こと。
本当の自分へ戻れるようになる。

ゆめみは、ネコ僧侶の言葉に対し深く考え込んだ。
放っておく、しょうがない、あきらめる???
これらの言葉は、
正直ネガティブなイメージしかないように思える。
しかし、
思考とは裏腹になぜか心はゾワゾワしている。
そ、、そうかっ⁉︎
実はこれこそがセルフコンパッションの鍵なのでは?!、、、とハッとした。

ゆめみ: ネコ僧侶様!
今、、わたし、、何かに気づけそうな感じがする、、。
それらのネガティヴだと思っていた
言葉達は私にとって、
とっても大きな気づきになりそうな気がしてます。
自分を受け入れるとは、、
悲しい気持ちの自分に気づいてあげる。
そして、問題を解決するのではなく、
”放っておく”、”しょうがないこと”に気づく、
そして、”あきらめること”!!

その言葉を唱えると、
重くのしかかっていたようなモヤモヤ、
いっぱいで溢れそうになっていた心に、
少し余白が生まれてきた気がした。

ゆめみ : つまりこれがマインドフルな状態ってこと、、?!

ネコ僧侶: その気持ちを感じとり覚えるのだ。
自身の生み出した幻想の価値観、
それは氏の環境や経験により作られた、
いわば自己の中にしかない解釈。
そこに囚われて悲しむことはない。
起こってしまった悲しみはしょうがないこと、
放っておくこと、そして、あきらめることにゃ。
考え込むのではない、
じぶん自身に対して心をオープンにする、
それが真のじぶんへのやさしさを開く。
そしてそれは、「自慈心」へと繋がってゆくのだ。
さあ、
この受容の世界で得た気づきを現実に持ち帰りなさい。自己と他者に対しての慈悲の心を思う存分育むがよい。

ゆめみはネコ僧侶の教えに手を合わせながら感謝しました。すると頭上から光が差し込み、広がり、周囲が明るくなると、いつの間にか
ネコ僧侶の受容の世界から現実へと戻っていた。

彼女は新たな気づきと、
セルフコンパッションの鍵を手にし、
自己と他者に対する思いやりを育んでいくことを胸に、ゆっくりと目を開いた。

ネコ仙人 : おはよう、ゆめみ。
よく眠っておったのwほほ♬

いつものネコ仙人の声が聞こえた。

ゆめみは
深い闇のトンネルから、
光のあたる出口を抜け出たように、
眩しそうに目を覚ました。

ゆめみ : おはよう、ネコ仙人さん。
その瞳はきらきらと輝いていた。

つづく

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