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選ぶべき転職エージェントの基準

最近転職相談に来られる方に、高い頻度で一番初めに言われることがある。

「転職エージェントを信用していなかったが、知り合いから『はぐきさんなら!』と言われたので来ました。」

嬉しくもあり悲しくもある複雑な一言である。

というのも、転職エージェントを信用していないという言葉は、この仕事をしている身としてグサッとくるものがあるからだ。

僕がこの仕事を始めた2015年はこのような一言を聞く機会はあまりなかった。これはあくまで仮説だが、数年で転職エージェントの質が大きく下がったのではなく、求職者の転職エージェントに求めるニーズが変化してきているのだと思う。

この記事を「うんうんそうだよね」と頷きながら読まれる方も中にはいるかもしれないが、前述した求職者からの相談を受けて、改めて現代社会はマーケット変化が本当に激しすぎるなと考えさせられた。

数年前の転職エージェントに求められていたこと

僕は、2015年に転職エージェントの仕事を始めた。前職はデジタルマーケティングのコンサルタントしており、現職とは全く異なる仕事をしていたため、業界の常識は全く無知の状態での参入だった。

立ち上げ期に参画したのだが、僕以外の2名も人事領域の職能は持っていたが、エージェント経験は無く、自分達で試行錯誤しながらスタートしたことを今でも覚えている。

当時の転職エージェントは「求人紹介屋さん」だった。断定すると誤りがあるかもしれないが、当時は求職者側も含めて、このような表現にあまり違和感を持っていなかったように思う。

僕達は業界未経験者としてスタートしたため、様々な転職エージェントの会社に足を運んでノウハウを聞きに行った。しかし、基本的には会社規模に関わらず、営業マンが求人票を各社から集めてきて、転職者に紹介するという手法を取っていた。

当時はまだ、ビズリーチが多くの人に認知され始められた頃で、ダイレクトリクルーティングの言葉を聞くことも少なく、リファラル採用は言葉すら聞かなく、求職者の転職手段は「一旦リクルートエージェントかDODAに登録しよう。」がほとんどであり、求職者情報リテラシーは今とは比較にならないほど低かった。

そのため、求職者にとっては求人こそが価値ある情報であり、求人を多く持っている転職エージェントの市場価値はそれだけで高かったのである。

「求人紹介屋さん」の時代が終わりを迎えた

このような発言をしたら転職エージェントとしてどうかと思われるかもしれないが、求人情報のみを探している方は、転職エージェントに相談しなくとも自分で情報を取得することができる。

従来通り、リクナビNEXTやDODA等で求人を探すこともできるし、ビズリーチやambiといった企業から直接スカウトを頂くサービスもある。bosyuのようなSNSを通じて募集を集うサービスもあるし、Wantedlyのように気軽に社員に会いに行けるサービスもある。

yentaのようなビジネスマッチングアプリを転職活動に活用することもできるだろう。また、最近ではAIでマッチングを行うGLITというサービスもある。

挙げたらきりがないほど情報に溢れている。ただ、求人情報のみを求めているのではあれば、転職エージェントを活用するメリットは工数の削減くらいでしかない。

しかし、このように便利なサービスが出ても、納得感のある転職活動ができていない求職者からの相談は後を絶たない。

では、転職エージェントの役割とはなんだろうか?

僕なりの答えは、転職エージェントの役割は求職者と企業人事が、認知していない潜在的なニーズを引き出し、高い精度でマッチングを行うこと”だと思っている。では、選ぶべき転職エージェントの基準はなんだろうか。以降から、自分なりの考えを書いてみる。

選ぶべき転職エージェント3つの基準

恐らくこの3点に集約されるのでないかと思う。

繰り返してしまうが、今や様々なサービスを活用して求人情報を容易に得られるようになった。

一方で、求人情報は得られるようになっても、個人と求人との精度の高いマッチングは未だに解決されたとは思えない。

サービスで得られる情報はあくまで「求人情報」であり、転職者個人に合った情報ではない。

「自分のやりたいことはなんだろう?自分の市場価値はなんだろう?自分の長期的なキャリア戦略はどうしたらよいだろう?」という求職者個人の疑問に答えていかなければならない。

転職市場を深く理解した他者の目線で、自分の価値観、自分の市場価値、自分に最適なキャリア戦略を提案してもらうのが良いと僕は思う。

つまり、これからの転職エージェントの価値は、求職者の個性を深ぼり、最適なキャリアの機会をマッチングすることにある。そのため、あなたが転職エージェントを活用する場合、前述した視点でエージェント選びをすると良い。

それぞれについて、詳しく書き出してみた。

1.高いカウンセリング力を有している

カウンセリング力が高いというのは、つまり求職者の自己認知を高める支援がうまいということである。僕は普段から、求職者の方には、転職活動前に自己認知を高めておいた方が良いと伝えている。

理由は4つある。

1.今後のキャリアで成果を上げやすい
自分の価値観を言語化し納得感のある職業選択をすることで、目の前の仕事に対して動機づけができ、当事者意識を持って取り組めるため、次の職場で成果を上げやすい。

2.自分らしいキャリアを歩みやすい
自分の強みや弱みを理解し言語化して相手に伝えることで、仕事を環境要因ではなく能動的に選択していけるようになるため、自分らしいキャリアを描きやすい。

3.選考通過率が上がる
面接官は、言語化能力や自己認知の高さも評価としてみている場合が多いため、言語化をしておくと高い評価を得られる。

4.入社後のミスマッチを避けられる
自分の強み弱み、志向性等を言語化しておくことで、面接官も求職者を正しく評価できるため、入社後のミスマッチも少ない。

以上のことからも、自己認知を高めることが重要であり、そのためにカウンセリング力が高いエージェントに相談をするべきだと思っている。

相談したエージェントがカウンセリング力があるか否かを見分ける方法を簡易的ではあるが整理してみた。

カウンセリングは求職者の自己認知が目的なのだから、求職者の価値観を深ぼりしなくてはならない。そのため、キャリアにおける一般論ではなく、求職者の個性に着目するコミュニケーションが必要だ。

実際に僕も、キャリアカウンセリングの学校に通っていたことがあるが、学校で習うキャリアカウンセリングは、会話のほとんどが求職者自身の話題であった。まずは求職者の思考の習慣や価値基準、強みや弱みを深く理解しなければ、最適なマッチングはできない。

このコミュニケーションを疎かにして求人紹介をするエージェントは、求職者の経験職種と希望条件のみで求人を紹介しているため、最適な求人を提案することは不可能と僕は思っている。

2.自分が転職したい業界や職種に深い知見がある


カウンセリング力の次に僕が見るべき視点として求職者にお伝えしているのは、転職したい業界や職種に特化したエージェントを活用するということ。
理由は以下3つである。

1.市場価値の上げ方を教えてくれる
市場理解が深いため、あなたの経験を元に、何が今の市場における価値か教えてくれ、次のキャリアで自分の経験の何を伸ばすと市場価値を高められるかを教えてくれる。

2.選考通過率を大幅に上げてくれる
市場理解が深いため、あなたの経験から転職市場において何が強みになるか理解しており、どの経験を言語化し面接においてどのように話した方が良いか的確なアドバイスをしてくれる。

3.求人のマッチ度が高い
業界や職種の理解が深いため、転職者の経験したことは具体的にどのようなことか、求職者が伸ばしたいスキルは具体的に何か等、同じ認識・同じ言語で会話ができるため、認識に相違が生まれない。もちろん、企業とも高いレベルでの認識のすり合わせも出来ているため、マッチ度が高い。

求職者の市場価値を正しく理解し、キャリア形成をアドバイスするには、一般的な就活論ではなく、マーケットの理解が必要になる。そのため、どこかの領域に特化して深い知識を持ったエージェントを活用することをお勧めする。可能であれば、希望する業界や職種の経験があるエージェントの方がなお良い。

僕で言えば、デジタルマーケティング経験があるため、その領域の支援においては深いマーケット理解があるが、金融や不動産においてはやはり難しい。特定の領域に強みを持ったエージェントに相談することをお勧めする。

3.投資家視点で求人内容を語れる

2のアドバイスはあくまで現代の市場におけるキャリア戦略に近しい。なぜなら、見ている視点が業界や職種の知識のためミクロな視点が中心になってしまうからである。長期的なキャリア戦略にはもう少しマクロの視点も必要になってくる。

企業の経営戦略や事業戦略を踏まえた求人の将来性観点。更に言うと、もっと大枠である、市場や日本社会全体の今後の変化という非常に広い視点で、求職者の仕事には何が求められ、どのような経験を積んでいくことが必要とされるか、などが必要になる。

まだまだ僕自身も日々勉強中であるし、特にこの部分は能力開発を勤しんでいる。ちなみに、このような視点をもつエージェントか否かを見極めるためには、次の2つを意識してみるとよいかもしれない。

1.経歴として経営や投資に携わったことがある
転職エージェントの経歴を確認し、元経営者や元投資家で転職エージェントも兼務でしている等の方がもしいらっしゃれば、マクロの視点でキャリア戦略を示唆してくれるかもしれない。

2.社会学や経営学への関心がある
経歴的な強みはなくとも、社会学や経営学に興味関心の高いエージェントはたくさんいる。そのような方は自分でインプットをしているため、多角的な視点で求人を見ており、将来性まで思考している人が多い。

とはいえ、自分で基準を定めておいてなんだが、全ての条件に当てはまるエージェントは滅多にいないように思う。理想は3つ全てに当てはまることだが、2つ以上当てはまれば、信用して転職をそのエージェントに任せていいと思っている。

意外と知らない転職エージェントを活用する価値

もしかしたら読者の中には、上記のようなエージェントに相談をした後、自分で選考を受けようと考える方もいるかもしれない。

僕が転職エージェントの仕事をしているからではなく、客観的な意見として、優秀な転職エージェントならその人を通じて選考を受けた方が転職者にとって良い。

なぜなら、優秀な転職エージェントを利用すると選考通過率が上がるからだ。

多くの企業において、人事部門が信頼している転職エージェントは1~2名ほどいる。人事はそのエージェントからの紹介なら無条件に書類審査を通してくれたり、選考においてプラス評価をつける場合がある。

これはレアなケースではあるが、実際に僕のお得意の企業様では、僕が紹介した方が最終面接でお見送りになってしまったが、その後に僕から再度面接してほしいとお願いし、再度面接の機会を頂いた。

面接結果としては、やはり厳しいとの意見をもらったが、「我々は数時間の面接でしかその人を判断することができない。信頼しているはぐきさんの紹介なら採用してみようと思う。」とまさかの内定を頂いたことがある。後日談ではあるが、そのときの求職者の方は入社後にエース人材として活躍している。

人事や事業責任者も人間なため、信頼している方からの紹介は、言葉を選ばず言えば色目を使ってみてくれることがある。人事間でも「このエージェントからの紹介なら見ても良いかも」という会話はあるあるで、どのエージェントを活用するかで通過率が変わるケースがある。

更に、転職エージェントを通じて選考を受けると、面接後に人事からのフィードバックも回収してくれるため、フィードバックを参考に自分の面接の受け答えを改善し、次の選考や他社の選考に活かすことが出来る。

そして、僕の感覚的な統計の持論ではあるが、僕が知っている企業から信頼を得ているエージェントは、ウェットコミュニケーションが得意という特徴があるような気がする。人懐っこくてねちっこいコミュニケーションを取る人は、エージェントとしての腕に限らず人事に好かれるのだと思う(笑)。

優秀な転職エージェントの見つけ方

最後に、ではどのようにして上記3つに当てはまるエージェントを見つければ良いか。読者が一番気になるところだと思う。長々と選定基準を語っておきながら本当に申し訳ないが、僕もまだこの答えにたどり着けていない。

2つ目の業界職種特化を満たすだけであれば、「職種名 転職エージェント」とGoogleのキーワード検索を活用すると良いと思うが、どのレベルの市場理解度なのか、また、1つ目と3つ目も満たしているかは会ってみないと分からないというのが正直なところだ。

冒頭に申し上げた、僕が転職エージェントの仕事を始めたばかりに知り合った転職エージェントの方々は、従来の求人紹介屋さんという手法を取っている方が多かったため、顧客のニーズ変化に伴いほどんどの方が事業撤退をしてしまった。

もし、この記事を呼んで頂けた方の中で同じような考えをお持ちの転職エージェントの方がいましたら、ぜひお話させて頂けないでしょうか。僕が得意としていない職種や業界への求職者からご相談があった際に、その方のためにも、お繋ぎさせていただきたいです。

ゆくゆくは、このnoteを通じて様々な転職エージェントの方と繋がり、読者の方に選ぶべき転職エージェントの見つけ方を提供できればと思います。

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