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宇宙戦争

子供の頃に買って積読したままの宇宙戦争をやっと読んだ。スピルバーグが撮った宇宙戦争がやってた時に本屋で買ったやつ。読書のこうやって随分昔に買ったまま興味が失せてしまったものを今になって消費し楽しめるところが感慨深い。
 
火星人の侵略がルポ調で書かれているから結構味気なさは感じるけど、だからこそリアリティがある。書かれたのは19世紀末で登場する乗り物は基本馬で自転車が流行の最先端だった時らしい。世界史的に見ればヨーロッパは産業革命が落ち着いてベルエポックやら帝国主義真っ只中の伸び伸びやってた時代。特にイギリスが舞台だからだろうか市民も豊かさを享受していて我々と変わらないような文化生活をしているし、そして火星人はタコ型で古臭い(タコ型宇宙人のルーツは宇宙戦争の挿絵にある。)が、火星人はロボットに乗るし、そこらへんの装備やら武器の背景や設定は結構細かくて、あまり古臭さは感じない。
 
人間は蹂躙されるのだが結局火星人たちは地球の病原菌に抗体を持っていなくて病気になって死んでしまい、おかげで人間は滅亡せずに済んだという元も子もないデウスエクスマキナな物語。
帝国主義やら行き過ぎた科学文明への風刺小説なのかも知れないけれど、人類皆平等!自然大事に!というようなことでもないと思った。
物語の中で火星人と人間の関係が人間と動物の関係に置き換えられる描写が何度かある。聖書だと人間は生き物の中で唯一神から息吹を吹き込まれた生き物であるから、キリスト教圏の人間が動物として扱われることには意味がある。
それから主人公は追い込まれる中で副牧師を殺したりもする。
神が不在の世界、かつての文明文明の代わりに瓦礫があるだけ。頼れるものは何もないのだけれど、それでも主人公は祈らずにはいられない。
人間が自然を他国を支配したとしても、そして異星人に支配されることになっても神はそれらの主従関係を超越したところで常に絶対的なものとして存在しているというお話なんだと思った。だから物語の最後、デウスエクスマキナ的展開には感動した。
結局生身の人間やねん、触れ合いやねん。それが愛で真理やろ?というヒューマニズム物語じゃなくて古典だけど新鮮に楽しんで読めた。

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