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文学フリマ東京35の宣伝をしているはずの文章

「ペラペラと喋っている暇はないのだが、ペラペラと喋らずにはいられないのだ」 ーーまだ誰のものでもない格言ーー

 つまり、回り道は嫌だ。
 なるべくだったら目標に向かって深い溝を跨いだ一本橋を渡してしまい、最短距離で物事を済ませていきたい。多少労力がかかっても時間さえ短縮できれば御の字で、というか、時間との戦いこそが最大の宿命で、殴れさえすればいつだって硬い拳をぶつけてやって弱らせたい相手、それが時間だ。
 ところが、いざ一本橋をこさえてその上を渡りはじめると、まさに渡りはじめの数歩で気づく。なんだ。ここもなにかの周縁で、目の前にあるのはすべて回り道だったんじゃないかと。
 結局、僕がなにを言いたいのかというと、いまのところなにも言っていない。僕が本当に言いたいことは11月20日(日)に文学フリマ東京35に出店するよ、ということだから。つまり宣伝したいだけだ。
 ブース番号はV−11で、サークル名は「八木辰と絶食三平」。サークル名の由来は出店者の名前だ。出店者の名前、といっても、出会った頃の僕らは違う名前だった。しかしお互いに転機を迎えて、決心をし、いまの名前を名乗るようになったのだけど、その物語は割愛する。そこに刮目すべき要素はないし、なにより僕は宣伝をしたいから。
 絶食君はクリント・イーストウッドとマイケル・ベイに関する映画評論誌をそれぞれ一冊ずつ発行する。僕は歌集と児童文学を売る。統一感がないだろうか。統一感なんていかれている。バラバラであるということは、それだけ僕たちが自然体で近くにいる証拠だ。無論、自然体だなんて特別に賞賛したりはしない。

歌集:センチメンタルバーニング。目を凝らさないとデザインの全体像が現れない仕様。
児童文学:デイドリーム・ビリーバーズ。子供に伝わるように書いたが、大人にも読んでほしい。

 絶食君の本の値段は追々彼から告知があるだろう。ちなみに僕は歌集も児童文学も1000円で売る。なので1000円札で買ってくれるといい。1000円札は1000円の物を買うときに便利なよう、国家によって調整されている。1000円札がおすすめだ。 
 言いたいことを言いきれたためしがない。でも言葉を尽くしていればよりよい未来を生きることができただなんて湿っぽい噂を、僕は信用できない。
 それでもなぜか、尽くせなかった言葉を取り戻すようにペラペラ喋ってしまうときはやってくる。最後に、今回出品する歌集の中から一首。

  朝五時を回る前には目覚めるな野鳥が猫に殺されている/八木辰

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