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本の備忘録

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16年前くらいから、読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6…
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2021年9月の記事一覧

待ち望んでいたシリーズ最新刊

今日は久しぶりに新刊の書評を。 ベストセラーとなった「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の第二弾。 前作は文庫化しましたよね。 流行る前からチェックしていたことは少し自慢したいのですが、自分がいいなと思っていたものが人気になるのは悪い気はしませんよね。 勝手ながら、ヒットした強い要素だと思っているのが、 ・ 福岡からイギリスに移住した作者であるパンクなお母さんの俯瞰的な視点 ・ 排他的な子供社会の中で複数の文化的背景を持って現在を生きる息子さんの冷静な観

さすが受賞は伊達じゃない

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2010年11月2日に投稿したブログより。 はじめて読みましたが、面白いです。 好きなシリーズに、東京バンドワゴンという家族小説があるのですが、あちらが昭和の古き良き時代の仲睦ましい家族を描いているとすると、本作はタイトルとおりその対極をいく平成の家族小説。 もともと大家族なわけではなく、30歳の引きこもりの息子と認知症の母を抱えた状態の家に、上の娘は旦那が事

予想を上回る面白さ

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2009年10月1日に投稿したブログより。 買う本リストには入れていなかったのですが、本屋を物色していて気になってはいた一冊。 詩人である作家による青春小説。 独特の視点からコミカルに描かれる高校生活はとても素敵です。 思っていたよりも悪くないどころか、ホントに面白くて、読んでいて明るい気分になれました。 一気読みで電車内にて読了。 運動も勉強もできず、

人間にもともと具わった機能

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2010年11月6日に投稿したブログより。 今はアニメ映画化もコミック化もしていますよね。 夭逝したSF作家の渾身の一冊。 伊坂幸太郎も宮部みゆきも、「自分たちには描けない」と絶賛した日本人離れした世界観。 911のワールドトレードセンター爆破事件以降、テロ抑制のため個人情報の管理が徹底された世界が舞台。 主人公は米国政府の特殊暗殺部隊に所属。 世界各国

山本周五郎を引き継ぐもの

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2010年11月16日に投稿したブログより。 山本一力もいいけれども、市井の人たちを描かせたらこの作家がピカ一です。 映画化されている「雷桜」もこの作家の作品。最高の一冊でした。 本作は、幕末から明治にかけての激動の時代を生きる、一膳めし屋の一家の物語。 職をフラフラ変える、落ち着かない長男を気にしながらも、常連さんを店であしらう母親と、町の人々のために働く

「いのちをいただく」最強の食育絵本

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2010年12月3日に投稿したブログより。 今回は私のというよりも、子どもたちのために購入したもの。 会社の同僚に、「とてもいいから。特にあとがきがとてもいいから、立ち読みででも読んでみて。」と言われた一冊。 食肉工場で牛を殺す仕事をするお父さんと、その息子さんのお話です。 あとがきでは、娘さんのことに触れているのですが、娘さんと同じ業種であることからも、言

惜しむべき隠居物の好シリーズ

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2010年12月7日に投稿したブログより。 このまま続いていけば、さぞかし多くのファンを得たであろう時代小説の連作短編集。 残念ながら作家はすでに鬼籍です。 剣客商売や慶次郎縁側日記のように権力や組織から解放された立場で、低い目線で市井の人々と交流を図りながら事件を解決していく。 事件解決の際には、弟やかつての道場仲間など、使えるものを総動員して片付けていく

更年期小説

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2011年1月29日に投稿したブログより。 更年期小説というのは、私が勝手にジャンル分けしたのではなく、作者自身がいつかやりたかったものとのこと。 色んな女性の出てくる連作短編集ですが、共通点は更年期障害と沢田研二のファンであるということ。 更年期障害のリアルな実情と、それぐらいの年代の女性たちにジュリーが今尚どれだけの力を与えているかということがよく分かりま

型破り主人公の連作時代小説

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2011年1月29日に投稿したブログより。 用心棒小説は多くありますが、歴史上の人物の子孫が主人公というのはあまり聞いたことがありません。 それも華々しい過去を持つ人物というよりは、宮本武蔵に負かされて有名な吉岡道場由来のもの。 コンプレックスを抱えつつ、武士の矜持を忘れることもなく今日も弱きを助く・・・、と思いつつ用心棒代の利息を払わない弱者であればお年寄り

江戸っ子気質の探偵登場

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2011年2月4日に投稿したブログより。 東京バンドワゴン・シリーズが大好きな作家なので、単品ものも一応チェック。 北海道の温泉旅館に嫁いだ妹を訪ねて上陸したアメリカ人探偵。 この探偵が妹に頼まれて、現地で内密に調査を始めるというお話。 人情話に定評のある作家ですから、単なる探偵ものではありません。 主人公は日本語が話せます。 ただし、習ったのは大好きな

大人のための物語

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2009年10月20日に投稿したブログより。 通好みをしそうな渋い大人の雰囲気が漂ってくる一冊です。 名前のない食堂に集う月舟町の住民の何気ない会話の連作集。 意味のない会話自体がお洒落ですし、この本を読んでいるということ自体がお洒落をしているような錯覚に陥ります。 表紙のとおり、闇の中でもホッコリとした明かりが漏れ出すような、登場人物の会話からほのかな温か