トレーニングは、一次元的な情報から評価するのではなく、ロジスティクスな思考を持って対応していく
S&Cコーチとしての「プログラムデザイン」スキルは非常に重要です。SNSでトレーニング指導内容や解説動画を日常的に見ることが可能になった現在、非常に便利な時代になりました。
そこで感じることが1つあります。コメント欄に溢れる「アンチコメント」についてです。
・フォームがおかしい
・間違った指導法だ
明らかに的外れな発信であれば、ツッコミたくなる気持ちもわかりますが、「なぜ、一次元的な情報だけでその発信について論じることができるのか?」と私は疑問に感じます。
例えばスクワット一つをとっても、フォームはそのクライアントの「目的」によって変わります。
そして、発信者の背景には、何かその先のプロセスや背景があっての情報発信かもしれません。それを動画内だけで評価するのは非常に難しいです。
つまり、SNSの発信内容は、あくまで参考程度に引き出しとして保管し、自分が担当するクライアントに適した情報を届けるべきです。
「いつか人は必ず死ぬ!」のような普遍的なものでない限り、型で教えるのは非常に危険です。
そして今回、その中でも大きく関係のある「プログラムデザイン」の考え方である「ロジスティクス」について話しましょう。
「プログラムデザイン」というトピックを考えるとき、「体力向上効果を高めるために最適な強度・量・頻度・エクササイズ等は何か?」というのが一番知りたいところでしょう。
トレーニング指導の専門家は、さまざまなところから情報を仕入れて自らの知識をアップデートしつつ、自身のプログラムデザインスキルを磨いているはずです。
今回のブログでは、本を読んだり、セミナーに参加したり、論文を読んだりしてもなかなか得られない、しかし実際にプログラムデザインをするときには必ず考慮すべき重要な問題について解説します。
では、「ロジスティクス」について説明しましょう。
トレーニングにおける「ロジスティクス」
「ロジスティクス」という言葉は、一般的には「物流」や「兵站」という意味があります。
トレーニングの文脈で「ロジスティクス」という言葉を使う場合は、作成したプログラムを実行するために必要な設備や器具が揃っているかどうかを指します。
完璧なプログラムを作成しても、設備や器具が足りなければ実行できず、それは机上の空論になってしまいます。
プログラムデザインについて学校の授業で学んだり、本を読んだりしているだけでは気づかないが、現場で作成したプログラムを実行しようとしたときに立ちはだかる壁が「ロジスティクス」です。
トレーニングにおける「ロジスティクス」について体系的に学ぶ機会は少なく、多くの専門家は失敗と試行錯誤を重ねて取り組んでいます。
私もそうでした。
そこで、私なりの経験をまとめて、簡単にお伝えします。
特に、「ロジスティクス」の問題により、作成したプログラムを実行できないケースをいくつか紹介します。
それを予め知っておけば、そのような問題が発生しないように注意しながらプログラムデザインをすることができます。
トレーニングにおける「ロジスティクス」
「ロジスティクス」という言葉は、一般的には「物流」とか「兵站」という意味があります。
トレーニングの文脈で「ロジスティクス」という言葉を使う場合は、
【作成したプログラムを実行するために必要な設備や器具が揃っているかどうか?】
これを指すと考えています。
完璧なプログラムを作成しても、設備や器具が足りなくて実行できなければ、それは机上の空論となってしまいます。
プログラムデザインについて学校の授業で勉強したり、本を読んだりしているだけでは気づかないけど、現場に出て、作成したプログラムを実行しようとしたときに立ちはだかる壁、それが「ロジスティクス」です。
トレーニングにおける「ロジスティクス」について体系的に学ぶ機会は少なく、多くの専門家は失敗と試行錯誤を重ねて、取り組むことになります。
私もそうでした。
そこで、私なりの経験をまとめて、簡単にお伝えしたいと思います。
とくに、「ロジスティクス」の問題により、作成したプログラムを実行できないケースをいくつか紹介します。
それを予め知っておけば、そのような問題が発生しないように注意をしながら、プログラムデザインをすることに繋がるはずです。
「ロジスティクス」の問題により、作成したプログラムを実行できないケース
大きく分けて、3つのケースが存在します。
①選択したエクササイズを実施するために必要な器具がない
たとえば、「ダンベルブルガリアンスクワットをやらせたい」と思っても、実施人数分のダンベル(重量)が無ければ、そのエクササイズを実行することはできません。
ダンベルベンチプレスをやらせたいと思っても、ダンベルやアジャスタブルベンチが無ければ、そのエクササイズを実行することもできません。
このようなロジスティクス的な問題を避けるために必要なのは、「指導対象者がトレーニングをする環境において使用可能な器具を把握しておくこと」です。
それを踏まえたうえでプログラムデザインを考える。
事前に気づき準備をすれば対応は十分可能です。
ただし、少し変則的な状況も存在します。
一定数のアスリートは毎回同じ施設でトレーニングを実行するはずです。
しかし、
・遠征の多いアスリート
・アウェイゲーム
こういった場合は、トレーニングをする施設が変わってきます。
そのような場合、遠征先で使うすべてのトレーニング施設において使用可能な器具を把握しておくことは、現実的ではありません。
現実的な解決策としては、「汎用性があり、効果的かつ優先順位の高いプログラムデザイン」を作成しておくことです。
そして、「汎用性があり、効果的かつ優先順位の高いプログラムデザイン」というのは、基本的にはバーベルのことです。
したがって、遠征の多いアスリートに対しては、バーベルエクササイズを中心にプログラムデザインをして、特殊な器具を必要とするエクササイズは極力排除することが大切です。
例外:フリーウエイトがない環境の場合
こういったイレギュラーの場合、以前にご一緒させて頂いた、オリンピックや世界王者を指導されていたトレーナーさんは必ず、事前に設備や現地の環境などを確認し、プログラムを作成されていました。
流動的な環境においては、あらゆる面で対応力が試されます。
②器具はあるけど、数が足りない
たとえば、オリンピックバーが1本あれば、オーバーヘッドプレスを実行してもらうことができます。
プログラムにそのエクササイズを入れたいのであれば、入れることは可能です。
しかし
1.チーム(規模)
2.同時トレーニング
器具はあるけど数が足りない、という問題にぶち当たることがあります。
10〜15人くらいのアスリートを同時にトレーニングさせないといけないけど、オリンピックバーは1本しかない…
どれだけ工夫をしても、すべてのアスリートにオーバーヘッドプレスをやらせることは難しいですよね?
本当はヘックスバーデッドリフトをやらせたくても、ロジスティクス的な問題のせいで、通常のデッドリフトを選択することになるでしょう。
あるいは、柔軟性や筋力の関係で、どうしても通常のデッドリフトを適切なフォームで実施できない少数のアスリートだけにヘックスバーデッドリフトをやらせて、それ以外のアスリートには通常のデッドリフトをやらせる、という程度の工夫はできるかもしれません。
したがって、とくに大人数を同時にトレーニングさせるケースにおいては、器具があるかどうかだけではなく、十分な数があるかどうか、までを考えておく必要があります。
③器具はあるし数も足りているけど、時間や他の利用者の縛りがある
大人数を同時にトレーニングさせるときでも対応できるほど十分な数の器具があれば、基本的にはその器具を使ったエクササイズをプログラムに入れても問題ないことが多いでしょう。
しかし、それは自前のトレーニング施設を有していたり、自前のトレーニング施設ではなくてもトレーニングをする時間帯はその施設を専有できるような場合に限られます。
それ以外の場合、つまり、トレーニング施設に他の利用者もいて、共有する必要があるような場合においては、理想通りのプログラムを実行できないこともありえます。
たとえば、ヘックスバーが4本ある施設で、10〜15人くらいのアスリートを同時にトレーニングさせる場合、一見ヘックスバーデッドリフトをプログラムに入れても問題なさそうに思われるかもしれません。
しかし、その施設ではヘックスバーが大人気で、最低でも2〜3本は常に使われている状況だったらどうでしょうか?
実質的に使えるヘックスバーは1〜2本ということになり、やはり10〜15人すべてのアスリートにヘックスバーデッドリフトをやらせるのは困難になります。
とはいえ、そんなことを言い出したら、ヘックスバー以外の器具であっても、他の利用者に使われていて、想定した数が利用できない状況は起こりえます。
だから、他の利用者と共有するような施設において、ある程度の人数でトレーニングを指導せざるを得ない場合は、専有利用をさせてもらえないかどうか、あるいは、使用したい器具を予約することはできないかどうか、施設側と交渉をしたほうがいいのかもしれません。
まとめ
プログラムデザインにおいて、ロジスティクスが影響を与えるのは主に「エクササイズ選択」です。
プログラムに含めたいエクササイズが実行可能かどうか、そのために必要な器具が使えるのかどうか、を確認したうえで、計画することが重要です。
プログラムデザインをするときに参考にしてみてください。