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梨著『かわいそ笑』の考察未満あれこれ

2022年8月に発売された本書。

存在は知っていたものの、初めて手にしたのは今年の3月でした。
この本の著者でもある梨氏の主催する展示会『その怪文書を読みましたか』に行きたくて行きたくて熱が燻ってるときに買いました。

家事の合間にキッチンに置きながら読んでたんですが、まあなんと『読む呪物』!(笑)
薄暗〜い部屋で一人きりで読んだらもっと怖かったろうなぁ……

この度、時間ができたので改めて考察でもしようと読み返していたのですが。
夜空の星を一点見つめようとしたら視界から消えてしまうみたいに、考えれば考えるほど結論が出なくなる……

もう、理論立ててまとめるのは無理そうなので、読んでて思ったこと、感心したこと、考察未満の思いつきなどを羅列していきます。

他の人の考察も漁ったけど、みんながみんな違うこと言ってたので、心置き無く独自見解が述べられます(笑)

ネタバレしてまーす。
読了済の方推奨の文です。
梨耐性のある、未読の方はまっさらな心で、まずは『かわいそ笑』を読んできてください(笑)








◆とある人物に呪いを集約する本

◎誰が誰を呪っていたのか?

・本書全編にわたり、呪われていたのは『りん』こと『横次 鈴(よこつぎ すず)』さんですね。
本書のいたるところに彼女の名前を思わせるものが散りばめられてましたし。

・本書冒頭の「無断複製、転載可能のQRコード」はTwitterの『@RingRingChan_』へのリンクでした。りんりんちゃん。
しかもコードを読み取った人が「かわいそ笑」とリプライする仕様になってます。邪悪。
(bio欄に「もうやめて」って書いてあるんだよな〜。ここの文章、発売当初は違う文章が書かれてたらしいね。)

・では、『鈴』を呪っていた人物は?といわれると、梨氏に体験談を提供してくれた『40代女性』っぽい?
けど、彼女は何者で、何故呪っていたのかは判然としない。

◎鈴を呪っていた人物は何者?

・各話の内容を照らし合わせて、本書に出てきた登場人物たちの関係性を見てみると……

梨氏に体験談を提供した『40代女性』
=『洋子さん(仮名)の大学の友人』

ではないかと予想しました。

・ざっくり、理由を説明すると……
①第二話での『洋子の友人』との会話が、「20210908.wav」の話者が見た『黒髪の女性』がした行動と一致する。

・心霊写真の「顔が違った」発言
・首から上を編集で切り取った

ヤバすぎる実話怪談 暗黒の章 より

・画像の女の死体が「俯いた」状態→「首を曲げてこちらと目が合う」状態を認識。
・パソコンで首から上をトリミング処理

20210908.wav文字起こしデータ より

②本書の最後に異形となった『40代女性』がしたネタばらしから、この人が死体画像の【首から上の画像】を所持していたことが推測できる。
→つまりトリミングした張本人の『黒髪の女性』

①と②から、
洋子の友人=黒髪の女性=40代女性
という図式です。


◆本書に出てきた呪い一覧

ネーミングは適当です。

◉鬼門線の呪い

本来の鬼門の方角とは関係なく「右上から左下に通した道には良くないものが通る」という持論により、呪いたい相手の写真と名前を「右上から左下」に斜めに配置する呪法。


転じて、縦書きの本を「右上から左下」に向かって読み進めていくことも呪いの行動と定義付けられる。

この本のことですよ!!!
読者も呪いの加害者に仕立て上げられてます。


◉女の死体の画像

公衆トイレのドアで首吊り自殺をして、壁にもたれかかっている制服姿の女の死体画像。
【首から下だけ】のものや【首から上も写ってる】もの【腐乱してる】ものなどバリエーションがあるが、程度の差はあれど見たり所持すると障りがあるようだ。

・洋子さんは【首から下の画像】を写メして保存。
その後、たまに人影のようなものを見るようになった。
(そして、写メ画像を消した後も人影は消えてない)

話してくれた当時は”危害は加えられてない”ようだったが、今は定かではない
……というか、洋子さん2回目の語りから推測するに、たぶん何かあった。

・『20210908.wav文字起こしデータ』の話者であるROM専男性は【首から上もある画像】を見て、しかも一度保存までしている。
そして「俯いてるはずの画像の女がこちらを見ている」という恐怖体験をする。
また、画像を消去したあとも、現在に至るまで「女の死体がこちらを見て話しかけてくる」幻覚に悩まされている。

・上記の男性と時を同じくして、【首から上もある画像】を見てしまったネット民も、同様に「女の死体の幻覚」を見ているような描写がある。


◉あらいさらし

”死者の安寧を願うため、死者の名前を書いた紙や布を道のそばに晒して、毎日水をかける儀式。
書かれた文字が消えるまで繰り返すことで死者が報われるとされる。”
……のを、逆手に取り文字が消えないようにすることで死者を呪う。

本来の儀式を曲解して悪用しているオリジナル呪法。

・「『あらいさらし』という儀式の実況メールが来た」とのことだが、情報源が提供されたメールしかないので、信憑性は薄いかな……と思ってる。
めっちゃリアルに語っているけど、状況的に創作なのではないかと思う。


◉名前変換の呪い

怖い話の「怖い目に遭っている人」の名前を「呪いたい人」の名前に置き換える。
その文章をコピペして、人の目に触れるところへ公開。
すると、これを行った人が背負っている悪いものが「呪いたい人」のところへ行く。

これも誰かが勝手に考えたおまじない。

・これを転用して夢小説の名前変換機能が呪いのツールと化してる……😭
第四話でmixiトピ[36]さんが、どこぞの元・夢小説サイトで入力させられたのがコレ。

・あとこの本全体で、この【名前変換の呪い】が使われてる可能性も濃厚。
『横次 鈴』の人物像がブレるのは、このせい?

元から『横次 鈴』の名前で書かれていた文章なのかもしれないし、誰かの名前を『横次 鈴』に書き換えたものなのかもしれない。

・あえて黒塗りにしたり、名前を明言せずにぼかしてるのは、読者に『横次 鈴』って入力……意識させることが本意な気がする


◉幽霊に合う方法

〈手順〉
一、このファイル(※後述)をダウンロードすること
二、こわい幽霊の姿をイメージしながらファイルを再生すること
三、ファイルを再生しながら寝ること
四、二と三をたくさん繰り返すこと

→「幽体離脱」の手順をオリジナル改変したもの。

※体外離脱誘導サウンド(いわゆる幻視や幻聴を伴う半覚醒の意識状態を人為的に作り出す音)の特別バージョン

・ちなみに、ここでダウンロードさせられる音源は「包丁で深く喉を斬って自殺した人の、死ぬ直前の音」を編集したもの。ヤバい。


◆考察未満のいろいろ考えたこと

もうね、最終話で地の文から強制金縛り追体験ツアーに連れて行かれたり、知らぬ間に呪いに加担させられてたりで、語り手が本当に信用できないんですよね!
何を信じたらいいのか、わからない……

なので、「ここはこうなのか?」と妄想多めで推測を述べていきます。
たぶん、この空白の部分を読者に”怖い想像”で満たしてもらうことも、「あの子」への呪いになるんだろうな……

基本的に「〜より」と書かれているところは「引用されている」と信じて考察していきます。

◎第一話 これは横次鈴という人が体験した怪談です.docx

◈この章の目的 

・【鬼門線の呪い】を読者に理解させること。

・写真の画像を斜めに引き伸ばしたものを書籍に印刷物として載せ、『横次 鈴』のものだと読者に認識させること。

・最初の『これは横次鈴という〜.docx』は第四話のmixiトピ[36]さんが名前入力して読んだ短編小説のうちのひとつなのかな〜
[36]さんは5話中の2話は読み飛ばしてるので、そこにあった話なのかも?(読んだ短編の中に「右上から左下」があれば、それを言及しそうなものなので)

・次に地の文で『これは横次鈴という〜.docx』が本物の話っぽく見えるように、40代女性が「りんの本名」の話をして補強。

・ここで【斜めに引き伸ばした写真と黒塗りの名前の文】が書かれたページが挿し込まれますが……
最初から『横次 鈴』と書けばいいものをそうしてないってことは、これも黒塗りの部分に『横次 鈴』という『りん』の本名らしき名前を、読者の頭の中で当てはめさせる意図がある……?

・あと最後、mixiの[23]さんが読んだという怪談話は『これは横次鈴という〜.docx』っぽいけど、よく読んだら違うと思った。

というのも[23]さんは、ちゃんと送られてきた話を読んだ上で、「右上から左下」というフレーズにピンときてない
もし、『これは横次鈴という〜.docx』を読んでたのなら、変な同人女の意図が分かるはず。

・でも”【鬼門線の呪い】の説明は書いていない、普通の同人怪談話”を使って誰かに「右上から左下」で読ませようとはしてたんだろうな。
→つまり、mixiトピックのこの時点で、すでに他の誰かに【鬼門線の呪い】で呪わせようとしてたんですね〜

・体験談を提供してくれた『40代女性』の声と口の動きが合わなくなる現象も何なんだろね……
「話をさせられている様子」と形容されてるけど、怪異に取り憑かれている描写なの?

◎第二話 behead-コピー

◈この章の目的 

・【女の死体の画像】が曰くのあるものだと読者にイメージさせること。

・読者にQRコードを読み取らせることで、【女の死体の画像】の全身バージョンを擬似的に撮影させること。

・おじさんのブログにて「制服を着た女の首から下が写った画像」の話をされ、「次のページにある画像がどうやらそれらしいな〜」と思って何も考えずにQRコードを読み取ると、作者の思うつぼです。

・というのも、後述の文章から「女の画像を自発的に撮影したり、保存すると障りがある」ことが読み取れるので。

特に、「首から上が写ってる画像」は幻覚が見えるほど強力。
読者は知らぬ間にやっちゃいけない行動を促されている。

・さらに、最後にネタばらしされたQRコードのリンク先が厄介。

QRコードのリンク先『behead.jpg』(「behead」の意味は「首を斬る、首をはねる」)は、「トリミングした首から上の画像」の上に、掲示板の画像を貼り付けたもの。

→つまりQRコード下の「首から下の画像」と合わせることで、トリミング前の全身図となる。

これも、知らぬ間にヤバい呪物を見てることにされている……😰

・次にこのタイトル『20210908.wav文字起こしデータ(加筆済み)

サラッと書いてあるけど、音声データの内容に何を「加筆」したんですかね。
(「加筆」とは単に”書き加える”だけではなく”部分的に修正すること”を指す場合もある)

おそらく【名前変換の呪い】として別人の名前を「すず」という名前に書き換えたんでしょうが……

・女の死体の幻覚が不意に現れるから、それを「クスリのせいで見てる幻覚」にするためにクスリに手を出してしまっている男性話者が気の毒。
でもまあ、興味半分で死体画像を見てるような不謹慎な人間でもあるし自業自得……?

・あと、死体画像の「首から上」をトリミングしたのは、呪力が強力すぎて拡散には適さないという点もあるだろうけど、文字通り『死人に口なし』にするためじゃないか?

顔があるから「やりなおせなくなっちゃった」と語りかけてくる。
だから、トリミングして「首から下」だけにして喋れないようにしたんじゃないですかね?

・QRコード先の掲示板で「例の画像の首から上に誰かの顔を切り抜いた画像を貼って、電波入ってる文体で『ひとまずこれで凌ぎましょう』とか言ってる」と書かれていたのは、オーバードーズ状態の幻覚の先で、死体の女が喋るからなんじゃない?

だから別人の顔を貼り付けて黙らせた。

・あと、定期的に「この画像について知りませんか?」と情報を求める書き込みがあるのは、話題にのぼることで多くの人に興味を持ってもらうためか?

画像自体がネット上から消えたとしても、噂話として人々の記憶に残る。
そんで「不気味な画像」の背景を憶測することで、その人の頭の中で「死体の女の怪奇で陰惨な物語が想像」されることを期待している?


◎第三話 受信トレイ(15)

◈この章の目的

・【あらいさらし】の独自ルールを読者に理解させること。

・最後に「よこつぎすず」の名前画像を載せることで『横次 鈴』が呪われてると印象づけること。

・画像を加工して名前が絶対に消えないようにしたものを掲載。
「一生消えません(笑)」

・苦手な入れ子構造です……訳分からんくなる😑

そもそも、この「あらいさらし」が本当にメールの人が語る通りに行われたのかが疑がわしいな……

まだ生きている男を「不幸になるスレ」で「しんでほしい」と書き込むしかできない小心者の人間が、誰かに見つかるリスクを取りながら、果たして腐りゆく死体の側で1週間近くも「あらいさらし」の儀式ができるだろうか?

この一連のメールの内容は、創作なんじゃないかと思ってる。
たぶん、こんな状態の死体が発見されてたらニュースにもなってるだろうし。

・14通目までは「情報を求めてます」という体の怪談話メルマガもどきの創作文で、15通目は梨氏へ提供したときだけのものなのかなぁ……
めっちゃ『鈴ちゃん』に宛てたメッセージだよね。

「死にたいなら死んでくださいw」って何なんだろ……
鈴は、怪談話を読んだ人の心のなかで生き続けなきゃいけないのに……
「死ねるもんなら死んでみろ」ってこと?

メールを提供してくれた「とある方」が創作したんかな……
関係者じゃなければ「匿名希望」とか言わない気がする。

・あと、メール中で『様子のおかしくなった友人男』が出てくるけど、この人の最後の様子が『追悼されてた男』の特徴と似てたのも意味深。

「一方的に理由も述べずに悪態だけをついて、反応が気に入らなければすぐにこちらの意見を遮断してしまう」

この友人男もリアルではなくネット上だけの繋がりのようだから、普段は本名じゃなくてHNみたいの使っててもおかしくないよね。

そんで、男は3通目の添付ファイルがあった時点でメール拒否したという話だが……
それが、この話の主人公と同じく、話を合わせるため嘘をついていた可能性は
続きのメールも読んでた可能性は?
『追悼されてた男の名前』が友人男の本名だった可能性は?
続きのメールの内容が主人公とは違うものだった可能性は?

……疑い出すと、きりがないですね。

まあ、創作話だろうと当たりはつけてるんですけど、全部が全部全くの出鱈目でもなさそうだな〜と。
あたかも本当に「あらいさらし」で呪ったかのような臨場感あふれる文章を通して男を呪っていたのかも?



◎第四話  ##name1##

◈この章の目的

・『横次 鈴』に対する具体的なイメージを読者に与え、読者の心のなかに生きてる『横次 鈴』を居座らせること。

・【名前変換の呪い】を読者に理解させること。

・ウェブ小説サイトに長編小説として投稿した内容が規約違反で削除された。
(外部サイトからの無断転載、過度の引用、過度なゴア表現、反社会的記述などが引っ掛ったとされる)

これを、今回アーカイブ復元して引用した。

つまり「まえがき」〜「あとがき」の全ては当時、この内容のままネット上にあげられていたということ。ですよね?
「引用」だから、信じますよ?

・小説投稿サイトでは名前変換ツールは使えないはずなので、以下の部分はこの名前でネット上に晒されたわけですね。

・『文芸館 臥待月の翡翠』では『りん』
・mixiトピ[36]さんの話では『横次 鈴』
・『微電波コピペ ログno.112』では『鈴』
・『あとがき』では『鈴』

・『あとがき』の「こういった場に投稿するのは久々」「色々と書き溜まった分もあった」という言葉を信じるならば、これらはこの”長編小説の作者”が過去にネット上で書いた文章のログってことになるけど……無断転載扱いされてるんだよね?

『文芸館 臥待月の翡翠』は、mixiトピ[36]さんが見ていた「知り合いのサイト」とは別物……?

だって無断転載できるなら、まだこの”イタい青春小説”のページが残ってるはず。
[36]さんが見た”更新されたHP”には「横次鈴が怖い目に遭う怪談小説」しか置いてなかったもんね?

あとサイト名のところに”(現在削除済み)”とかの注記がないのも気になる。
つまり……

・『文芸館 臥待月の翡翠』は『りん』の本当のHP。
無期限休止になったあと、さすがに乗っ取りはできなかったか?
[36]さんが見ていたのは『40代女性』が管理人のHPでは?
この人も話を信じるなら、同人女だったようですし。

・『微電波コピペ ログno.112』も、夢なのか現実なのか訳分からんくなる文章ですよね……

この話での『鈴』の人物像が、まず痛々しい。

・霊感があると触れ回る(実際は無さそう)
・深夜に「いつものように接客トラブル」「ぺらぺらの布製のセーラー服」
→コスプレ系の水商売?
・「普段手渡しなどに使っている公衆トイレ」「隠語」
→違法薬物などの取り引き?
・「ゆうれいがいる」と怯えてる鈴に対して、深呼吸を促し、むやみに外に出ないように助言
→オーバードーズに対する助言とイメージが被る。
・男を呪い殺したつもりでいた

う〜ん、色んな意味で危険な香りのする面倒くさそうな女性像……

・あと、私は「死体画像の女」は『鈴』だと考えてます。
普通に警察に通報されて、普通に薬物乱用の末の自殺かなんかで処理されてると思ってる。
夢の中のように損壊されたり、「あらいさらし」メールのように腐乱させられたりはしてないんじゃないかな〜。なんとなく。

・個人的な主観ですけど、あの話は『明晰夢』あるいは『リダンツ』のつもりで見ていた『普通の夢』だったのかな〜、って思ってます。

全部が全部、本当でも嘘でもない。
現実世界での記憶が反映されてる突飛な夢の世界。

明晰夢なら自分の思い通りにできるはずなのに、携帯画面の鈴が「もうやり直せないよ残念でした」と言ったのは、想定外だった。
だから「変な夢だと思いました」で「本当に不思議な体験だった」になるのかな……と。

・『ヤバすぎる実話怪談 奈落の章』では、洋子さんのその後の話が書かれているんですが……

これ、本当に洋子さんですかね?
まず電話での対応なので、本人の顔が確認できない。
そして「電話口の洋子さんは、前回と全く違う声音でそう続けた」という記述があるんですが、ここの「声音」ってどう読みました?
私は最初「こわね」のつもりで読んでたんですけど、同じ文字で「せいおん」とも読めるんですよ。
これだと、意味が変わるんですよ

・声音(こわね)……声から受ける様子・感じのこと
・声音(せいおん)……声。音声のこと

「声音(こわね)」と似た意味の「声色」を本書で何箇所か使っているのを確認できているので、ここは(せいおん)と読む可能性もあるのでは……

前回と全く違う声音(せいおん)と口調だとしたら、それは洋子さんの名を騙ってる別人では?

◎第五話 0x00000109

◈この章の目的

・この本の答え合わせ
・もう手遅れなことのお知らせ
・他にも同じようなことは起こってるという話

・この章は筆者の地の文なので、他の章とは趣きが違いますね。
油断してるとこに、読者への直接攻撃がぶっ込まれてて「おうおうおう……」となりました😅

強制金縛り追体験で異形の男が話してたことから推測するに……

なんでもできる夢の中で、現実世界での鬱憤を晴らすために、自分が作った「架空の幽霊」を「架空の方法」で呪い出した人がいる。

画期的な方法だと、たくさんの人が、こぞって真似をする。
(「不幸になるスレ」に出没していた人とか、喜んで飛びつきそうよね。)

それがエスカレートして、夢の中で「実在する誰か」を呪う。
その責任逃れをしようと、他の誰かに呪わせるようになる。


呪い返しにより、ブヨブヨの異形になってしまう?

・なんとなくわかったのは『40代女性』が『横次 鈴』を呪っているのも、氷山の一角でしかないということ。

本書の話のずっと前から、他の誰かがすでにこれらを始めていて、他にも同じようなやつが沢山いるってことですね……

・ブヨブヨの怪異の見た目が「ぶにぶにとした皮、肉ではなく皮の塊のような質感の何か」なのは、被害者に被害者を上書きして繰り返していった……被害者の皮をどんどん重ねていったからなんでしょうね。

もしかして、加害者側も「誰かの呪いの方法をマネして呪って」、加害者の皮も上書きされてる?
両者ともおんなじブヨブヨの異形になってるぽくない?

・本来なら「架空の存在」を呪っているだけだから「呪詛返し」は無いはずだったが、「実在の存在」を呪ったことで「呪詛返し」が発生したのか……?
それとも、数えきれない人間の”恨み”という負のエネルギーが凝り固まって、自我のある異形となってしまったのか……?

・『0x00000109』これ、知らなかったけど「死のブルースクリーン」とか呼ばれてるパソコンのエラーコードなのね。もう、関わった人たちみんな致命的な状況になるってことを示唆してるの?

・あともしかしてだけど、梨氏は意図的に本文中に自分の名前を出さないようにしてた……?

【鬼門の呪い】を知ってしまった読者によって、この本の登場人物は総じて呪われる危険と隣り合わせ。
だから「自分の名前」を書かないように意識した。

でも本書で一度も名前を出してないはずの『40代女性』はブヨブヨ怪異になってしまった。
最後に急に「梨」だと名乗りだしたのは梨氏も異形化の呪いからは逃れられないと観念して開き直った?

本書の人物名を「適当な人物に置き換えてもいい」などと提案してるあたりから、やけっぱち感が伝わりますけど。

・たぶん、自発的に呪おうが、他の誰かに呪わせるために拡散しようが、関わった時点で結末は変わらないんでしょう。

あの男の声を持つブヨブヨも「嵌められて脱落した」って言ってたけど、自分が逃れるために”他の誰かに呪わせる行為”もアウトなんだろうな。

つまり『40代女性』や梨氏が本書を通して”読者に『横次 鈴』を呪わせた行為”も結局は……

・本書を手にした我々も、「怖い目に合う誰か」を積極的に求めて「右上から左下」に読んでしまったわけだから呪詛返しの対象なんだろうね。

✙制服の種類が違ってるのは何故?

・個人的にすごい気になって気持ち悪かったので、「女の死体画像」の服装が話によってまちまちだったのは何だったのか検証してみた。ガバガバ理論。

①「制服」としか表現してないところ

・第二話 ブログのおじさん→「制服かなんか着た人の首から下が写ってる写真」
・第二話 洋子さん→「学生服らしきものを着用」
・第二話 スレのROM専さん→「制服か何かを着た女性」
学生服の襟越しにくっきりと痣」

②「セーラー服」と表現してるところ

・第三話 「あらいさらし」メールを受け取った人→「その女性はセーラー服を着ていました」
「白地の長袖、紺色の襟、青いスカーフ、紺色のスカート、コスチュームとしての制服」 
「白地のセーラー服には長方形の大きな穴が開いてる」
・第四話 『鈴』の知り合い女性→「薄い布でできた廉価のセーラー服」「セーラー服を四角く切り取った」
・第四話 電話口で洋子と名乗る女性→「セーラー服」「ただ学生服を着るための学生服」
「その色や装飾は、以前携帯で見せてもらったあの写真に似ている気がした」

・まず注目したいのは、感覚として「セーラー服」って一見したらすぐに「制服」だって解ると思うんです。
でも①の人たちは「制服」だと断言できないような服を見てる感じ……
コスプレ服感が強かった……?

おじさんのブログの後に差し込まれてた画像なんか、まさに「制服……か?」って思いますよね。
本書のカバー絵の女性と同じような「ブラウス」タイプ。
①の人たちは「ブラウス」の女を見ていた可能性が高い。

・次に②の人たちです。
この人たち、そもそも本当の現実の話をしてるのかが、非常に怪しい!!
特に注目したいのが『電話口で洋子と名乗る女性』です。

この本に出てくる「女の死体画像」が全部同一人物のものだとするならば、この②の洋子の発言により①の人たちが見た画像も「セーラー服」になる箇所があります。

②の洋子が「以前携帯で見せてもらったあの写真に似ているセーラー服」を見たと発言。

すると、①の洋子が『大学の友人』から見せてもらった画像も「セーラー服」ということになる。

①の『スレのROM専さん』が見た『黒髪の女性』と『大学の友人』が同一人物のはずなので、『スレのROM専さん』の見た幻覚の女も「セーラー服」を着ていることになる。

オセロのように一気にひっくり返っちゃうんですよ……

ブログのおじさんしか「ブラウス」の女を見てないことになっちゃうんですよ……
しかし、わざわざQRコードを読み込ませるついでに撮影させようとした画像がなんの曰くもない画像なわけない。

なので、信憑性の薄い「セーラー服」の発言はフェイクで、本当は「ブラウス」を着ていたんじゃないかな。

ヤバげな呪力を持った画像はどうやら「セーラー服」らしいとにおわせて、読者が「セーラー服じゃないし、関係ない画像なんだろ」と気軽に撮影してくれることを狙ったんじゃないかな〜、と思ってます。つまりトラップ。


✙最後に

・有無を言わさず読者を当事者に仕立て上げるのは、覚悟して読んだにしろ見事な手腕でしたわ。
本当、色んなギミック思いついて凄いな〜としか。

・あと、この本で語られる時代が、ちょうど同世代なのでグサグサ刺さりましたわ……
同人活動とか夢小説とかを噛ってたので、すごくわかりみが深い。
脊髄反射で名前入力してしまう。
キャラなりきり会話文とか、黒歴史を掘り起こされるかのような、むず痒さが辛かったです😇

・考察は残念ながら途中で放り投げました。
もうね、真偽のわからない情報のどれを取捨選択すればいいのか分からんし、真相は藪の中なんでしょう。
読者にあれやこれや想像させて、それをネットで公開させて、『鈴』ちゃんに恐怖体験をしてもらうことも目的のひとつでしょうから。

・でも、この本の所々に『本当の鈴の話』も混ざってるんじゃないかと私は思ってます。
せっかく「縦書きの本」にしてもらって全力で『横次 鈴』を呪いにかかってるのに、全く違う人の話を載せるだけってのも、なんだか「勿体ない」でしょ?

・個人的な解釈なんだけど、最後に梨氏に「なんであの人を選んだんですか?」みたいに聞かれてブヨブヨ女性はしばらく無言になって「ムカついたからです」って言って消えるシーンあるじゃないですか。

あそこで無言だったのは、彼女の中で「自分でも言語化の難しい『鈴』への感情」と、それを他人にさらけ出す必要性とか、諸々が頭を駆け巡ってたのかな〜、って思ってます。
そんでぶっきらぼうにテキトーな理由を述べた感じ。

『鈴』に対する強い執着心がないと、あそこまで手の込んだことやれないと思うんだよな〜
何か大きな感情が向けられていたとは思う……!

”人を呪わば穴2つ”で、彼女も無事では済まなかったけど、一応目的は達成できたのかな……?

みなさま、お憑かれさまでした。


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