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再録ハコボレ落語研究会『世別レ心中』稽古場こぼれ噺〜その④



おまくら

どうも。今晩も一稿のお付き合いを願います。
今日から、俳優の木村聡太(きむらそうた)にいやんと、インスタライブにて「本番直前俳優の夜な夜な脳内整理記録」なるものを始めました◎
ここに書いていることに近しいのですが、一人で整理するのではなく、相手に聞いていただいた方が落とし込みやすいんじゃない?と木村氏が提案してくれて、ご好意に甘えて対談のような形をとってもらいまして。
そのお話のアーカイブも残っていますので、これから本番までの一週間、お付き合い願えたらと。


稽古場にて

さて。本日のこと。今日も基礎練と稽古の合間に喫茶店にこもって、ご案内をコツコツ送っていきました。木村氏とも話をしが、この「案内を送る」ということを特別に考えすぎてるのかもしれない。
送ってから、見に行けない場合は「ごめんなさい、その日は〜」と相手に謝らせてしまう、罪悪感を飢えてしまう行為になるんじゃないか。そんなことを思って、連絡にビビったり、小心していたり。いやまて、断られること前提の考えもおかしいだろ。とお思いの方もいられるとは思いますが、考えてしまう。それでもやっぱり、観にきて欲しいから、それこそ誠意と想いを乗せて、文章を考える。今度は熱が入りすぎて、「どう返したらええねん」みたいな思い上がったこともやってしまう。そんなセンシティブな部分も卒業しようと思った。
言葉を重ねれば色々あるのだけれど、一つは九州で活動している友田君といいう俳優に影響を受けた。同じ年の彼はチケットを売ることに逃げない男だ。劇団の成長を願い、マメに告知をし、露出もする。ファンを大事にする。そして、明るい男だった。出会って2日目には二人で寄席に行くくらいの関係を気づいてくる。そのパーソナルの埋め方にも驚いたが、何より彼はその行動を誇りに想ってた。

最初は劇団員にそんな強い想いがある人がいるのは羨ましいと思った。
でもそれは、とても恥ずかしいことだと気づいた。
言い訳だった。私は作品を作ってるんだからと。作家であり、作品が評価されたいと思うあまりに、声をかけることは媚びているんだろう。そんな事を考えていた自分を殴ってやりたくなった。
これは誰の作品で、誰の責任の公演なんだ。答えはわかる。
自分がやりたいから始めたハコボレだろう。

作品だけを作り続けたい。それはそう。
だけどそれとは別で作品を観てもらいたい。公演が終わるたびに何度も「もっと観てもらいたかった」と落ち込むじゃないか。いつからかその責任を任せていた事を恥じる。そんな出会いだった。

自身の性質の問題。そんなもの変えていこうよ。作品が面白くて売れる。はすごい事だ。ただ、それよりも、お客様も大切に考えて、作品も面白い。方が素敵じゃないか。当たり前だけれどなかなか、出来たものじゃない。パッと軽く案内なんて送れない。それでいい。だからこそ誠意を持って連絡をとってみる。私には覚悟がいる行動だった。

結果、高校演劇部の友人や、いろんな場所で出会った公演の共演者。居酒屋でたまたま話が弾んだおじさんまで。それぞれが、予定が合ったり、合わなかったりするんだけれど、誰一人として「二度と送ってくんなバーカ」みたいな悪意のある文章なんて送ってこなかった。そりゃそうだけれど。

暖かい言葉をくれる皆さんは、当たり前じゃない。それぞれが時間を作って返事をくれる。返事をくれる事がまず嬉しい。さらには「応援してる」「公演頑張って」「観に行くね」なんだろう、呪いが溶けたようにスッとした。

お客様を納得させないと。楽しんでもらわないと。みたいな強迫観念があったり、同業者よりも圧倒しなきゃとか。どこかで「戦い」や認められるための「挑み」の想いが強い舞台を作ってきた。だけど、そうじゃないよな。期待してくれたり応援してくれる、ひとりひとりの顔が浮かんで。何を怖いことがあるんだと、みんなとそれぞれ過ごした時間を思い出すんだと。笑ってる顔や、真剣に過ごした日々しか出てこないじゃないか。

あらためて、おもいました。


とはいえ皆さんに披露するのはやっぱり作品で。
期待に応えたいし、笑顔で帰ってもらいたい。
そのために、千秋楽まで頑張ろうと思いました。

さて。ここまでのお付き合いありがとうございます。
まだまだ公演の稽古に励みますので、今日はこの辺りで。
おやすみなさいませ。

ハコボレ 前田隆成

以下、詳細です。

再録ハコボレ落語研究会
「世別レ心中」

◎日時
4月8日(木) 18:00
4月9日(金) 15:00/18:00
4月10日(土) 11:00/15:00/18:00
4月11日(日) 11:00/15:00

◎会場
花まる学習会王子小劇場
東京都北区王子1-14-4 地下1F

◎チケット料金
前売:2000円
当日:2500円
あさハコ:1500円 ※11:00の回のみ

-----作品内容-----

◎作・演出・出演
前田隆成

◎古典落語「鰍沢」のあらすじ
旅人は身延山に参詣へ向かう道中、吹雪に見舞われた。遠くに灯りを見つけ尋ねてみると、美しいが喉元に傷のある「お熊」と名のる女が現れた。見覚えがある彼女は元、吉原の花魁で旅人も一夜を明かした過去がある。羽振りの良い旅人に、お熊はそっと卵酒を差し出した。雪山のあばら屋から鰍沢へ駆ける、一夜の物語。

◎演劇「世別レ心中」のあらすじ
旅人は激流を下る際に、本当にご利益があって助かったのか。お気楽なニンゲンの言い伝えに嫌気がさすモノがいた。彼らの村に伝わる「鰍沢」の伝承とは話は少し違う、旅人との関わり。ケモノの九太はあの夜目にした真実と森に伝わる呪いについて語り出す。



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