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ここまでやるから売れる。「購入」という最終決裁時、顧客は牛田から無形の資産を手にしている

「営業」という職種に対する固定概念を見事に打ち砕く、「CSまでやるの?」ではなく顧客満足のためであればそれを「営業」として当たり前のようにできるのが牛田その人。社内のコミュニケーションツールでも、自分の業務以外の発信にもくまなくアンテナを張るその理由、「やるしかない」と腹の座った冷静さ、その奥にある思いに迫ります。

物流DXシステム事業部
牛田 梨惠香 Rieka Ushida
新卒から10年、大手企業向けERPパッケージ企業でエンタープライズ営業に従事。顧客開拓~提案~アップセルすべての工程を担当し多数の実績を築いたあと、マーケティングに異動し、リードからインサイドセールスへのつなぎ込みなどを担当。2021年10月、ラクスルへ転じ、ハコベル事業本部 ソリューション事業部に配属となりフィールドセールスに従事し、現在に至る。

その商材は「なんのために必要なのか?」でつくりあげた実績。転職市場で高い価値を放つまで

—— 牛田さんは、全方位にアンテナを張って大手企業様の案件を獲得していらっしゃいますね。最初に現在の仕事内容とこれまでのご経験についてから教えてください。

 物流システム事業部でフィールドセールスと導入PM、CSもカバーして担当しています。LE(Large Enterprise)とMIDとに分かれており、私が担当するのはLEで、売り上げ規模の大きいお客様に向き合う営業です。また、「ハコベル配車計画」は顧客規模に関わらずLEが担当しています。

 人数で見るとMIDのチームの方がわずかに多く、CS担当者はLE・MID双方にまたがってはいつつも、LE側はCS業務も見ています。人数は充足していませんので採用もずっと動いている状態ですね。

 前職はERP(Enterprise Resource Planning)企業で10年ほど営業として従事していました。エンタープライズ企業を担当していて、そういった従業員数も巨大、歴史も甚大、という企業に対する他社の営業担当者と渡り合っていく術を身に着けることができました。

 企業規模によって営業スタイルやアプローチは全然変わってきますので、前職のそういった大手企業向けの営業でつくったスタイルが私は面白かったですし、得意なんだと思っています。

—— 現在の牛田さんの活躍につながる営業職の原点、のちほどさらにお聞きするとして。ハコベルへの転職はどういった経緯ですか。
 前職で会社の大きな過渡期に直面し、分社があったりで伴ってそこで何がやれるのか、やりたいのかを考えて希望して異動しました。変わったのはセクションだけでなく、会社の文化も大きく変わってしまい、さらにはこれまでお世話になってきたお客様との関わりもなくなってしまいました。担当だったお客様をそのまま残して去れないという後ろ髪をひかれる理由もなくなり、これまで1社しか経験をしてこなかったことからさらに視野を広げるためにも転職をすることにしたんです。

 その際、営業職から離れることを考えてもみたのですが、転職市場を見渡すと自分がより評価されているのが「大手企業向けでハイタッチで営業ができ、ひとりで一定の売り上げをつくってくる」ということで、これはけっこう希少価値が高いのだととわかりました。それで、その点を売り込んだ方が良いということで、まずは営業で転職活動をしていたのです。

 一方で、まず営業から入社したあと、別のキャリアも開ける可能性があるところを重視して探しました。ハコベルは、転職活動をしていた当時の同僚が先に面接を受けていて「おもしろい会社があるよ」と紹介されたのがきっかけ。その人は入社しなかったんですが。
 ひとつこだわったこととして、「お金のにおいがする商材の営業」は明確に選択肢から排除しました。なぜかというと、そういう商材は「なんのために必要なの?」という売上が上がるから、という未来への希望で説明できるので比較的大きな予算もつき売りやすい。そういうのは私の思いとは違うので、「いま困っている人がどうにか解決できるようなもの」を手がけたい。前職の商材も地味でしたが、一環してそうした思いを持っています。

求められるには理由あり。提案に進む前段階でこれだけのことをおこなう

—— そうして入社なさったあとチーム体制も混迷のタイミングだったと別の方のインタビューでお聞きしています。

 そうです。入社は2021年10月で、渡辺さんが12月に入社しましたが、もともと立ち上げから関わっていた方がマーケティングとCSでいらして、このお二人が営業も兼務していました。そのうちお二人が退職していき、最初から関わっているのが狭間さんだけになり。

 「話が違う」とは思いつつも別に、やるしかないですからね。前職の経験が大きくて、会社の環境が想像を超えて突然変わるということって普通にあるとわかっていますし、その状況下で今後どうしていくか?などをお客様に方針を説明しながら、社内の動きを見て聞いて、ではどう立ち回るかを考えたりしていました。「まぁ会社ってそういうものだよな」という感覚がもともとあるので、状況が変わっても「やるしかない」。そう思えるようになっていました。

 会社の環境変化に直面した経験と、もうひとつが前職でモチベーションに左右されて仕事をする人がいたんですよね。今日はやる気ない、今日はめちゃくちゃやる、みたいな。「仕事なんだからそんなのやめろ」という感じに思っていて、とりあえず自分がやりたくないことなどがあったとしても、目の前で「やらなくてはならない」と決定したのであれば、それはやるしかないんですよ。

 反対に言えば、やりたくないことはやりたくないので、やらないためにはどうしたらいいか?という、実績をつくって発言力を持つとか、こういうケースにはこういう想定ができるから、先んじてこうしておこう、とか自分なりの対応プランを持つようにしています。

—— 体験が進化につながっているのですね。牛田さんのきめ細やかな情報収集はどのようにしているのでしょう。

 これもやっぱり、大手企業の営業をやっていたことが大きいんです。エンタープライズ企業を多く担当していたのですが、そういう会社は出入りの営業担当者も歴史があって、専属担当10数年などの年配の人ばかり。そういう人たちと渡り合おうと思ったら、お客様の「お作法」みたいなものをインストールされた状態でないと、まともに会話してくれないんですよ。
 
 たとえば企業ごとの社内用語。これを認識していないでいたらまずダメですので、そういうのをまずはインストールするんです。訪問前であればネットで検索をしまくります。お会いする担当者のお名前がわかっていればその方の各SNSをチェック。わりとパーソナルな情報まで見られるので「犬を飼っているんだな」とか、上場会社であれば部長職以上だと経歴が出ていますから、それらはもちろんチェック。

 事前に可能なかぎりのリサーチをして、「この方はこういう状況ではこういった発言をしているんだな」とか「ここでこういうことを仰るんだな」、さらには「この役割が変わってこういうことになったんだな」など、時期を辿っていく。特に、役職が上の方ほど表に出ている情報が多いですから、めちゃくちゃ調べあげるのです。

 さらに、「こういう話をしたら受け入れてもらいやすいな」とか、「言ってはいけないことはこういうこと」などを全部頭に入れます。そこからご対面に入ると受け入れていただける率が上がり、さらに受け入れてくださったら今度はそこから、ネットなどパブリックな場所に出ていない情報を教えてもらえるようになるんですね。いま興味を持っていることに始まり、誰と誰が同期でとか、個人格でやりたいことや特性、部署では?そして法人格ではどうか。

 大手企業だと法人もグループも数十とあり、それぞれのグループ会社の機能や序列があり、オープンになっていなくても確実にあるわけで、少しずつお客様との信頼関係を構築して教えてもらいながら、そこを知って押さえたうえで提案するのです。

単価が大きく関係者が多いIT商材の営業だからこそ身についた、物事の本質に迫る能力

—— レベルが想像を超えていました…。「大手企業の方が得意」と仰る背景を垣間見た思いです。

 ただ、エンタープライズ相手の営業職で成績を上げている人はみんなやっていることなんです。やはり、1回で数億円の売り上げになるのでそんなに簡単にはお買い上げとなりませんから、これだけ労力をかけても全然意味がある。それをやり切るのが大変だからこそ、高額でお買い上げいただけるのだと前職では普通にやっていました。こういった素地を持ったうえで、現在の状況や顧客規模に合わせておこなっている感じです。共通しているのは、「個人格でどうなのか」、「部署としてどうなのか」など、そういったことはすごく意識しながらやるようにしていますね。

 システム営業の経験がありつつ、こうした基盤を備えている人材というのは多くないです。では「なんでそこまでやるの?」と言われれば「なんのためにこれをやるの?」なんですよ。「いまなんでこの人はこれを言ったんだろう?」とか、物事の本質に迫っていくためと、物事の方向性をうまくマージして自分の方に誘導していく、といったことのためにおこなうわけです。ただ、そういったことができるというのは、ITだと単価が大きいという事実と、関係者が多くなるので身につきやすいのです。

 先ほどお話した「企業規模で営業スタイルもアプローチも変わる」と言ったのがこれで、中小企業では公開されている情報がそもそも限られていますし、決裁の流れも違います。
社長が「NO」と言えば他の部長以下がやりたくても通りませんし、大手は社長が仮に「やる」と言っても部下が「NO」だと通らない、とか。

—— 勉強になります。さてハコベルではまた特殊なケースと言いますか、ジョイントベンチャーとして始まりました。ここでもスムーズだったのでしょうか。

 大手企業へ向き合うときと同じく、まずは「セイノーさん」の流儀になじむ必要があります。これは少し大変ではありました。というのも、前職で扱っていた商材はERPまわりでしたので、正直社長という立場からしたらそこまで介入せず現場に任せる傾向にあるんです。
 ところがセイノーさんにとって、ハコベルが扱う商材は事業ドメインの「物流」ど真ん中です。そういったものに対してどのように関わってくるのかというのは初めてでしたし、文化も私にとっては初めて体験するようなことが多かったですね。

 業務はその後、私はセイノーさん中心は別の部門に任せ、大手企業を中心に対応してますので、具体の日々の営業という意味ではそこまで大きくは変わっていないです。ですので、JV化による影響で言えば経営の判断軸が変わりました。変わったことへの対応というのがありましたが、それこそ「やるしかない」です。変わること自体に方向性は理解しますし、なにか疑問があってもずっと狭間さんに聞いていましたから、自分の知りたいことをクリアにしてまた対応を考えていくのみ、でした。

 お客様への提案と一緒で、関わる人の話をそれぞれ突き合わせて、もちろんそれが誰を経由してるのかも踏まえ、「つまりどういうことだ」と解を出します。それで日ごろから、社内のコミュニケーションツールでの発言もアンテナを張っているんですよ。誰がどんな発言を、同じひとつの事象に対してなにを発言するのか、とか。

製品を「人から買う」ではなく「この製品を買いたい」と思ってもらいたい。そのためにできることをやり抜く

—— 以前、田島さんが仰っていました。「その人の見えている視座と視界のなかで課題が出てくる」から、必ず自分自身が深く入り込んで真の課題を見出さないとならない、と。

 私の仕事ではお客様がいて自分が入れないこともありますので、なるべく周辺情報を集めて、これが事実っぽいぞ、とかこの人はこう言っているな、などの情報に当たっていきますね。人間観察みたいで面白いです。つまり、その人が物事をどう見ているか?ってことなんですよね。

 「情報」ということで言えば、私は営業として「人間力で売る」ということはやりたくなくて。良い情報をそろえてお客様のメリットを考え抜く。「この人から買いたい」ではなく、「この製品を買いたい」「この会社と一緒に仕事をしたい」と思ってほしいのです。どこまでいっても、私はただ伝えるだけの役割です。もちろん「この人から買いたい」と言っていただけるのはありがたいことですが。

 だからこそ情報を仕入れるわけですが、それが間違って伝わらないように気をつけています。前職で1年間マーケティングをやったのですが、向いていないと思った理由が、マーケティングは「コントロールしている」と思っているのは発信者側だけで、どんな人にどう伝わるか?はコントロールできないものだ、とわかったから。SNSのコメント欄をみれば明らかですよね。同じ投稿に対して、これは偽善だという人もいれば感動したと言う人もいる。さらに、本当は同じ感想を持っているのに「自分がこう見えたい」という思いでこういったコメントを残す、とか、いろんな背景があるなかで、一方通行の発信だと厳しいだろうと思うんですよ。マーケティングは存在を認識してもらうには有効ですが、BtoBの商材で高額の場合は特に、お客様にとってなぜこのサービスが必要かを伝えるには、営業がちゃんと伝える。この役割です。

—— お客様が「商品を買う」という最終決裁のとき、信頼のおける営業を経由していることで得られる無形の資産があるのですね。重視していることがあれば教えてください。

 「なんのために?」を非常に大事にしています。物事の本質をとらえるということ。問題解決をするぞ、となったときに「なんの問題を解決するの?」というのがないとどうしようもないんです。それをきちんと理解するために常になぜを繰り返して考えていく、他責にせず、どこに問題があるのか?自責として考えること、自分ひとりの力だとやれることが限られているから、いろんな人の力を借りることを大切にしています。

 あとは「ちゃんとやる」。「ちゃんとやる」というのを遂行するためにはなるべく「なんのために?」がないと、なにをもってやれたのかがわからない。なのでそれを大事にする。

 先ほどの「人から買う」のではなく「製品を買う」「この会社とやる」のと同様で、私からだから買うというのは再現性がないですし、私がいなくなったらその商品が売れないのなら、そんな商品はなくてもいいということになります。ですから、私以外の人から買ってもらえないということは自分の営業のなかで不足があったということになり、すごくいやなことなんです。

—— 牛田さんの今後の目標を教えてください。また、どんな人がこの仕事に向いていますか。

 やっぱり「良いもの」を売りたい、広めたいです。ですので、そこにつながるようなことができればうれしいですね。全然セールスにはこだわっていないので、PDM(Product Data Management)のような、そちらの方面にとても関心を持っています。営業をやっていると、プロダクトがもっとこうだったらいいのに、という場面に遭遇することがあります。

 プロダクトって「どういう方向にあるべきなの?」という大きい意思決定に基づいて、ではこういうふうにしようと営業をかけることはできるんですが、決めることはできないのはもどかしさもある。そこを決める人になっていけたらもっと面白いんじゃないか、というのはありますね。それをやりながら営業もできたら最高だなと思います。

 物流業界では特性として、まだシステム化がそこまで進んでいません。そこをどんどんシステムを入れることの良さに気づく、そのうえにハコベルがオープンで業界標準となるプラットフォームを実現していく、みたいなところは面白みを感じられると思います。
 普及していく開拓余地がたくさんあるというのは営業として面白さがあるのではないでしょうか。

 自社の経営層はもちろんですが、直接お客様の決裁者への交渉ができるなど、ベンチャーならではの機会が少なくありません。その一方で現場の担当者と深く話して寄り添ったりなど、経験できる範囲がとても広いので、これをやりたいという方とご一緒したいですね。物流については入社後キャッチアップすればよくて、逆にシステム導入の知見、システムを活用してどうするのか、というとこはあった方がお客様には喜ばれる場面が多いです。
  





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