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徹底した「見える化」と現場を最重要視する姿勢を全社へ浸透させてきた。目指すのは「やり抜く強い組織」

 「強い会社にしたい」。いよいよ社会においても懸念が拡がる物流クライシスに際し、どんな組織にしたいか?の問いにほとんど即答で返した田島 裕也。ラクスルでは祖業の印刷事業で経験を積み、自ら希望してハコベルへ異動し辣腕を奮います。誰よりも現場を重視し、現場感が組織風土を磨き上げたと考える、その実態に迫ります。

執行役員 事業統括本部長
田島 裕也 Yuya Tajima
2005年に東大院情報理工学系研究科を修了後、新卒でリクルートに入社。不動産ポータルのシステム開発のプロジェクトリーダーを経て、オイシックスとのJV設立やEC系の新規事業の立ち上げなどを経験。14年10月にラクスルに入社後はシステム部・プロダクト開発部の責任者、オペレーション統括などを歴任後、ハコベルに参画。現在は、事業全体の責任者を務める。

成長過程にある各フェーズの再現性を確認できる醍醐味。自ら「きつい」チャレンジの場へ


——  田島さんはラクスル在籍時、ご自身からハコベルへの異動をご希望されたそうですね。

 そうです。リクルートでシステムと新規事業開発に従事したあとラクスルに入社しました。当時2014年、今でこそグループ全体で約600名にまで達していますがまだ20名ほどでした。整備されていないことも多く “未来はあるけどカオス” 、といった様相。印刷業に6年ほど従事して、2020年あたりに志願してハコベルへ異動しました。

 最初の転職でラクスルを選んだ理由は、自分自身が後ろ側というか、オペレーション部分のサポート、効率化に興味があったから。そこに自分の適性があり、willが強くありました。世の中で大きな需要があるものの裏側にあるもの、そこを支えていくというところに心から共感した、というのが大手企業から設立間もないラクスルを選んだ1番の観点でした。

  もうひとつ、“それ” をつくっていく段階に自分は興味があります。できたものをより伸ばしていくよりも、どう作るか?から考えていけるポジションや会社のフェーズにとても興味を持ちました。転職をするならチャレンジがしたい。それだったらすごく良い環境ではないか、と。良い意味で「きつい」チャレンジの環境だろうな、と思って選んだのが背景ですね。

 私がラクスルで経験してきた「0から1」や「1から10」といった、成長過程における各フェーズの再現性を確認できていることは醍醐味と言えます。かねてこの経験は社会還元していきたい、もっといろいろなところに貢献できるのではないか、と考えてきたので。

 そんなときに、社内でちょうどハコベルの事業がフェーズを変えていくタイミングが2020年にあり、そこで代表の狭間らと話すなかで見えてきた課題が、私がラクスルで「0から10」へとしてきた経験が生きるのでは、と思い、チャレンジする決断をしました。
 そうした考えから参画したハコベルは、まず世の中の本質的な課題に直接アプローチをしている事業特性ですので、すごく責任感ややりがいを感じる仕事だなと痛感しています。それこそかつて、前職で担当していたEコマースの事業なら「これから未来が広がっていくからもっと利便性を上げていこう、もっとこんな世の中にしていこう!」という、どちらかというと「明るく良くなっていく世界」を描いていく仕事でした。

  対するハコベルが立ち向かう領域は課題が山積していて、それをもっと持続可能な状態を目指していく事業です。責任も重ければ、世の中に対する価値も甚大である、というのがまず大きな独自性です。さらに、「社会課題にアプローチできている」という重要な点に対して、非常に質実剛健というか、コミットしたうえでしっかりと積み上げていく思想、アプローチを採っていることに、ハコベルらしさが現れています。

—— ラクスルから生まれ、「ハコベル独自」というポジションを獲得したわけですね。もう少しその違いについても教えてください。

 やはり課題が大きいが故にアイデアだけで突破できるレベルではなく、アイデアにプラスして「現場に実装していく」ことを加えるべき。それこそが実はとんでもなく難易度が高く、工数がかかる部分があるわけです。そこに真正面からコミットしてやっていくことが、この会社の強みや面白さになっている。そういう “現場感” や “実装力” と呼ぶべき地に足をついて事業推進している点はハコベルの強みとなっているでしょう。

 たとえばラクスルに限らず他のベンチャーとの比較でいうと、ハコベルは客観的に見て社内における現場の比率が高い。営業、オペレーションといった最前線に立つ人たちの人数比率が高いんですよね。そういうところが「地に足をつけて一つひとつ、目の前のお客様に価値を提供していこう」という気風や、活気につながっている。もっと言えば、そこを大事にして経営していますし、それが会社のカルチャーをつくっているのだと思っています。これが仮に「プロダクトが人数比率8割です」となると、同じ事業をやっていたとしてまた少し雰囲気が変わってくるものです。

 そうした「まずは現場を補強する」という着想は、ひとつはラクスルとハコベルのカルチャーとして、行動指針の最初に “Reality(現場の課題や一次情報を取得・獲得する力)” とあるように、一次情報を非常に重視する会社であることに寄るところが大きいです。「リアル × IT」というか、リアルを再開発していく観点でいうと、現場を知らないといくら良いものをつくっても使われないし意味がない。というのは、ベースのカルチャーとして存在していますね。

 ある意味では事業を組織を、そういうふうに意図してつくってきたと言えます。現場を重視し、現場からの意見や現場に入っていくことがすごく重要という、それが会社の根底にあるということが、今の組織風土に顕れています。ハコベルのサービスはより現場に近い事業です。運送とは現場で物が動く。データではなくて人が動いていることや、実際に物が運ばれている現実があり、よりそちら側に立たないと仕事が成立しない、という強い属性にも由来している。だからこそ、そうしたカルチャーになっている、という感じですね。

—— 現場感がいまの組織風土を磨いてきたのですね。一方でセイノー様とのジョイントベンチャー設立以前、以降ではそれらにどんな変化がありましたか。

 大きくは、まず会社の格が明確に変わっています。ハコベルって、運送業界からすると「よくわからないスタートアップ」というか、宇宙人みたいなもの。セイノーさんが我々と手をつないでくださったことで、その宇宙人が「もしや良いモノなのかもしれない」といった格に変わってきていますから、「この流れに乗って一緒にやっていこう」という気運が育ち始めています。

  いま、物流の課題について誰もが「これはどうにかしなくてはいけない」という意識を持っていて、そのひとつの打ち手を私たちが担っているわけですけど、それをセイノーさんという大きな会社が、ある意味で信頼を証明してくださってもいます。そのおかげで「この方向性で解決できるのかもしれない」という可能性、期待が業界で生まれている実感があります。

 結果的に私たちも恩恵を受けていて、具体的には商談の数や商談しているお客様のレベル感がぐっと上がって来ている。そういう意味で、非常に大きな変化があるなというのがひとつあります。また実際、運送の現場をやり抜いているセイノーさんと一緒になることで、まさにリアリティーと言うべき解像度が会社全体で一気に引き上がっているなというのが、もうひとつ感じるところです。

 やはり現場に通って私たちも声を聞かせていただいたり、実際の様子、どんな就業形態なのかとか、そうした肌触り感を含めて「こういうことが行われているんだな」と肌で感じて理解することができているという意味で、解像度がさらに上がっている。この2点は大きな変化です。

ハードな課題解決の真髄は「自分を信じぬく」こと。真に良くなる世界を目指す全身全霊のコミットメント


—— 皆さん「Tシャツからスーツへ変えた」など地道な部分での信頼づくりもあったと聞いています。続きまして、田島さんがこれまでハコベルで推進してこられた業務、プロジェクトについてもお聞かせください。

 もっとも大きく携わったのはオペレーション。私自身のベーススキルは、プロダクトやシステム開発、そしてマネジメントであり、強みと言えます。たとえばハコベルでいうと「見える化」をしてきたところが…つまり、「こういうプロジェクト、バーン!」というのではなくて、組織強化やオペレーションの強化をずっと行ってきました。そのベースになっているのは、暗黙知で進んでいることをどんどん定量化する。カタチ化したり見える化したり、そういう業務をかなりしっかりやってきています。

  経営数字を日時で見えるようにする、ボトルネックとなっている課題の所在を見出す、などといった、現場が今後アクションしていくために必要となるタネのようなものを見つけ出し、それをしっかりと見える化していくことが、おそらく私がハコベルで1番やってきていることじゃないかな。
  領域を細分化すればマーケティング、運送手配、事業拡張、と区切ることもできますが、もう少しダイレクトに表現すると、その場その場で1番困っているところに突撃して解決していく、みたいなことをひたすらやっている感じなんですよね。

 具体的な例としては、オペレーションの拡張が課題となった際は、業務委託やコールセンターを導入したり。当初は業務委託をしていなかったので、コールセンターとか外部委託BPOを用いて拡張していくことなどはわかりやすい事例です。 

 またあるケースでは、マーケティングに対してROIが見えていなかった。投資対効果が見えず、どれくらいリピートしているか不明瞭なため、営業の投資可能レベルの判断ができなかったんです。そういう見えていなかったことを「見える化」し、必要だからもっと投資しよう、という話を営業サイドに持ちかけたり、そういったことです。

—— そうした田島さんの「見える化」による課題解決策は、現場でどのように受け入れ推進されていくのですか。

 現場に余裕があれば現場に方向性だけ指し示して動いてもらい、現場に余裕がなければ私が全部やります。なので「困っているよ」と言われたら、困っている状況をどうにかしてくれと言われるのではなく、自分でそこに入っていって「何が問題なのか?」という課題をきちんと自分で探りあてるところから始めます。

 ちょっと厳しい表現ですが、現場が言っていることは正しいのだけど正しくない、という前提でいます。その人が見えている視座と視界のなかで課題が出てくるのですが、それに対して「なぜ?」「なぜ?」を繰り返していくと、本質的な課題は別のところにあって、そちらを解決しないと根本的な解決にならない、ということが往々にしてあるわけです。

 そうした真の課題と解決策を見つけるためには、現場の声を数多く集めるだけでは決して得られず、自分が入っていって「ここだ!」と、自分の経験と勘で突き止める必要があるのです。

 課題解決はハードなので、現場を1回ひっくり返さないといけない事象も出てきますよね。そういうときに自分で信じられなくなってしまうと、戦略がぼんやり曖昧になる。なのでやはり自分で現場に入ること。現場の業務に深く入って理解して「これだ」と決めて行う。基本は現場に入って自分でハンズオンでやっていきます。

—— 非常に本質的な姿勢ですね。明確な目的意識で現場に入り込んでいく田島さんが理想とする組織とは?

 大きな課題に対して向き合っていくので、強い会社にしたい。社会課題とは解決が難しいために積もり積もって大きくなってしまっているので、それを解決しようとなると結構なストレスや変革を余儀なくされ、その実現に至る道のりはきわめてハードです。

 その難易度の高いことをやり切るのは社員の皆さんですから、一つひとつの小さい積み上げをしっかりやり切っていかないと、おそらく「絵に描いた餅」になってしまう。 要するに、一人ひとりがすごくタイトにコミットしてやりきる部分が非常に大事になってきますので、そうした責任感や強い気持ちを持って取り組んでくれる人たちをどんどん増やしていきたいですし、コミットしていってもらいたい。そういう組織にしていきたいとは、すごく思いますね。

 逆にそれが解決できれば、今までの世の中になかった価値がつくられていき、真に良い未来につながっていくわけなので、そこはやりがいや「自分たちが貢献したんだ」という思いにつながっていくでしょう。そこをすごく大事に考えています。

 働く社員についても、会社が実現しようとしている方針や解決しようとしている社会課題に共感し、そのうえで自分のスキルや活躍する場所をつくっていってほしいです。ハコベルは新しい課題解決をしていくという、まだ答えが見えないことをやっているというのもあって、ポジションや自分のスキルを活かすことにこだわると難しい場面も出てくるはず。そこはやはり会社が志向する、社会を良くしていくということにコミットしていることで、チャレンジや変化を受け入れやすいでしょうし、1人ひとりが「価値貢献」ということを重要視することで、強い組織が築かれていきます。

  さらに言えば、現場をこれだけ知っているスタートアップ、ベンチャーはなかなかないと思うんです。2024年問題の本質的な課題と、マクロの理解とミクロの理解、両方できていることが私たちの大きな強みですから。

 物流業界の現場に僕らみたいなプレーヤーが入っていくことが、実は一番の差別化となっていて、私たちの最大の強み、得意分野は社会実装を推進していくことです。ハコベルがそれをできなかったら社会課題解決は果たされないのでは、とも思っており、僕らだからこそ成し遂げられる、より大きな価値を生み出す可能性を持っているのです。




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