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『テイカカズラ』と、それにまつわる「恋のお話」とか「散歩の話」とか

こんにちは。ガーデンプランナーのhacoです。山ではスイカズラに代わって、テイカカズラが咲き始めました。今日はテイカカズラのお話です。

テイカカズラとは

テイカカズラ キョウチクトウ科 テイカカズラ属
常緑蔓性植物 原産国.朝鮮半島、日本(本州ー四国ー九州)

テイカカズラは、日本の野山に古くから自生する蔓性の植物です。蔓や葉は有毒とされていてちぎった時に出てくる樹液に被れたりする人もいるので注意が必要です。

花はちょうどこの5月末から見られるのですが、いつも梅雨に入っていてなかなか写真を撮ったり近くで見ることができなかったのですが(山に生えているから。)今回は運良く写真を撮ることができました。

とても香りが良く、ジャスミンの、そうスイカズラの香りにもよく似ています。とても甘い香りですが、スイカズラほどの強さはありません。それでもこの良い香りの為に「つるクチナシ」と別名が付けられています。

テイカカズラの花(6月1日)

テイカカズラの名の由来

テイカカズラの「テイカ」はあの藤原定家からついたものだと言われています。そしてそこには悲しい恋のお話がありました。

京都を旅していた僧侶が夕立にあい、雨宿りで駆け込んだところが、昔、歌人の「藤原定家」(西暦1200年頃の人)が 建てた家だった。どこからか現れた女性が、その僧侶を、葛(つる)のからんだ「式子内親王(平安時代の、後白河法皇の第三皇女)」の墓に案内し、こう語った。  
”藤原定家は式子内親王を慕い続けていたが、内親王は49歳で亡くなってしまい、定家が式子内親王を想う執心が 葛となって内親王の墓にからみついてしまった。 内親王の霊は葛が墓石にからんで苦しがっているらしい”  
僧侶はそれを聞き、内親王の成仏を願って墓の前で読経した。  
じつは、先ほどの女性は式子内親王本人の「霊」で、僧侶が読経してくれたことで成仏できて喜んだ。そして、このからみついた「葛」に後年「定家葛」の名前がつけられた

謡曲「定家」より

他にもテイカカズラの名前の由来は諸説ありますが、このお話の前までは元々テイカカズラは「マサキノカズラ」と呼ばれていたそうです。

テイカカズラの蔓

結果的に、その式子内親王のお墓に絡みついたテイカカズラは、僧侶の読経によって一旦は綺麗に剥がれ落ちてしまうのですが、また数年後にはお墓にはテイカカズラが絡みついていた。
と言うお話も続きてあったりするそうなんですがね、それくらいある意味執念深い植物です。

テイカカズラの茎(つるの部分)には「気根(付着根)」があるため、岩や塀などはつるを這わせながら、根を張っていきます。時間が経ったそのような状態のテイカカズラを取り除こうと思うと、根を張っている側を傷つけないように慎重に行う必要があります。

蔓の這う家に住んでいた人物は

そうそう、そんなテイカカズラが覆う家に晩年住んでいたのが「方丈記」を書いた鴨長明だと言われています。
方丈記の現代語訳を見つけました。そこで「まさきの葛」と出てくるのがどうやら「テイカカズラ」なのではないか。と言われています。

方丈記ー心の章ー「その生活」部分
南に懸樋(かけい)[竹やくり抜いた木などで、庭などに架設した人工的な水路]がある。岩を立てて水を溜めている。林は軒に近いので、爪木(つまぎ)[薪用の小枝]を拾うのにも乏しいということはない。山の名を外山(とやま)という。まさきの葛(かずら)[テイカカズラの事とされる]が路あとを埋(うず)めている。

鴨長明「方丈記」現代語訳と朗読

鴨長明のお散歩

方丈記は「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。」から始まる随筆で、その時に起こった震災についての記載もあることで有名ですが、「心の章」をよくよく読むと、鴨長明の暮らし中にいくつもの植物の名前が出てきます。
そしてどうやら、鴨長明もお散歩が気分転換になっていたようです。なんだかとっても親近感(笑)

こころを慰める方法は同じである。ある時は、例えばちがやの花を抜き、岩梨(いわなし)を取り、零余子(ぬかご)をもぎ取り、芹を摘んでは、これらを口にしてみたりする。
ー中略ー
もし、うららかな日であれば、峰によじのぼって、はるかにふるさとの空を望み、木幡山(こはたやま)、伏見の里、鳥羽、羽束師(はつかし)を見わたす。勝地(しょうち)[景勝の地、眺めの良い風景のところ]は持ち主もないので、こころを和ませるのに差し障りなどないのだ。

青空文庫にもありましたので、一応リンクを貼っておきます。ちょうど真ん中から後半あたりに「まきのかづら」と出てきますよ!


まとめー植物を知ることとは

去年の9月からnoteを書いていて思うことがあります。
植物を知ることは、できればその植物が人とどう関わってきたのかを知り、より身近に感じてみたり、ちょっとその植物に興味を持ってみたりすることから、皆さんの植物への「好き」が深まればいいな。と。

葉っぱがどんな形をしていて、どうやって子孫を残してきたのか、それももちろん大事なのですが、その植物に対して先人がどのように関わり、どう感じていたのか。それが案外、今も昔もさほど変わらないのが面白いな。と感じたりするものです。
そうそう、鴨長明と私のお散歩スタイルがそもそもあんまり変わりがないんですから。皆様もどうぞ心を慰める時、気分転換したい時はお散歩してみてくださいね。

さてさて、今日はここまで。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。


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