陸上部の引退試合は、6月のT校戦。 絶対に見に行こうと決めていた。 そんなことができる立場ではない。 わかっていたけど、 どう思われてもいいから 最後の佐野くんの走る姿を見たかった。 それは、高校に入学してすぐに 佐野くんを好きになって 頑張って!一番になって! という思いで応援してきた私の 勝手な使命感だった。 「今日もハチマキしてたよ」 と教えてくれていた子は、佐野くんのことが 好きだった。 他にも何人か、佐野くんを好きな子はいた。 だから、私が行ったらヒンシュク
もう半年以上たつのに あの日のことを思い出すと 穴があったら入りたいほど 恥ずかしい あなたはすっかり忘れているか 大して気にしてもいないこと あなたは私のことを馬鹿にしたり 絶対にしないし ただちょっと心配そうに 見ているだけ だったら、私だけ ずっと恥ずかしいままでいい これからもずっと ふと思い出しては ああ!もう! 私ったらなんてことを、、、 チクショー!! と落ち込む それを何とも思わない 私になりたくないし、 あの日の自分も 可愛いなと思うから 超えたい
今年の最後の日 どう過ごしてますか? 私はあなたの住んでいる町に 行った日のことを思い出しています。 初めて一緒に歩いた道は、 きっともう何回も通っただろうな 一緒に見た青くて若い10月の クリスマスツリー まだあの場所にある? 「もう彼女できたんですか」 って店員さんにからかわれたお店にも また何回も行っていて 「この前と違う人ですね」 とか言われてたりして。 ブラブラと歩いていた橋の上でみつけた 小さいお城 あの場所からのお城の姿はレアなんだって。 あなたは
お誕生日おめでとう 言ってあげたのかな 彼女の今日のTwitter 寂しいんだよ あなたの声が聴きたいんだよ 私にはわかる あなたのことがずっと長い間 彼女も私も、好きなんだもの 早く戻ればいいのに 彼女のところへ ハッピーバースデー あなたから、彼女へ届くかな 一緒に風に乗って私のところにも 届けばいいのに 同じ日のバースデー これはただの偶然? やっぱり私も あなたの声が聞きたいな
あなたの住んでいる南の国も 12月はとても寒いみたい 昨日、雪が降ってたよね 今日もも雪が降ってくれたらいいのに ヒラヒラと桜の花びらのように あなたの肩に落ちてくる雪 「あっ、雪だ」 それは私だよ! 私の名前 誰と一緒にいるだろう 友達と一緒に遊んでる ひとりで部屋で飲んでいる まさか誰か女の人と一緒 どれでもいいや。 穏やかな気持ちで 過ごしていたら。 笑顔でいたら。 私は、まだ暑かった10月に 2人で歩いた長い道を思い出しながら 過ごすいつものクリスマ
「社会人の区民大会に出るから、見に来なよ」 佐野くんに言われたので、 よく晴れた寒い4月の日曜日、早起きして駒沢競技場へ行った。 佐野くんは幅跳びの選手で、 高校の時は、都大会で7位とか8位とかのいい成績を出していた。 「遊びだからね。 1年間全くやってないし。」 8時過ぎに着いたら 見覚えのあるウインドブレーカーを着て、すでにアップをしていた。 広い駒沢競技場に人は少なく 趣味で陸上を楽しむ人たちの集まりみたいだった。 佐野くんともう1人、キャプテンだった大村がい
大学1年の2月 浪人していた佐野くんから、弾んだ声で電話があった。 「合格したよ!よろしくね。教科書下さい」 まさか!! 同じ大学の同じ学部で一緒になるなんて こういう再会ってあるんだね。 数週間後 佐野くんのうちの近くでふと思い出して 電話をしてみた。 「暇で死にそうだったよ!」 そういってすぐに自転車で佐野くんが来た。 何度か予備校に通う姿を、朝のラッシュの渋谷で見かけていた 一度だけ「頑張って」と声をかけたら、 あっ、という顔をして、そのまま 人混みで、反対方
高校の卒業式で、撮った写真がある 卒業証書と花束を持ったふたり 佐野くんは、すごく嫌そうな顔をしてる。 1年生のとき陸上部の佐野くんに ハチマキを作ってあげたことから なんとなく始まったような恋は 2人で会うこともできずに何ヶ月も過ぎた 何も言ってくれない佐野くんに 痺れを切らせた私が、 佐野くんをほったらかしにして その時好きだと言ってくれた人と 付き合った。 佐野くんは怒りもしないし、追っても来ない。 「わかった」とだけ言って、 私の前から去ってゆく。 当たり前
サンロード新市街の入口で 私は佐野くんを待っている。 こんな遅い時間の待ち合わせは初めてだ 市民会館でライブが終わって、真っ先に会場を出た。 南国の鮮やかな色の花が まだ暑い10月の夜の風にゆらめいて 目の前を路面電車が通り過ぎる。 この町は佐野くんの日常で、私の非日常。 「自転車ですぐだから、終わったら行こうか」 と言われたときは、ちょっと驚いた 佐野くんは安心している 私を信頼している 私は何の不安もなく覚悟もしなくてよくて、 初めて来る南の町で佐野くんに
私は文章を書くのが大好きです。 小学生の頃、日記をつけてました。ほぼ好きな男の子の話。こんなこと言われた、こんなことで遊んだ、みたいな話。 小6の時に、母に見られて「見ちゃった。ごめんね」と言われた時、怒ってしばらく書かなかった時期以外は20代後半で結婚するまで、ずっと書いてました。 好きな人を思う、自分の気持ちと向き合う大切な時間でした。 新卒で入った会社の上司に、 「君は文章を書くのがうまい。将来は物書きになりなさい」と言われた言葉は、忘れません。 もちろん物書きなどには