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最新研究より考える!自己中な人を協力的にさせるためには、「怒り」と「恐怖」どちらを与えるのが効果的か?【悪用厳禁】

【参考文献】Cooperation across multiple game theoretical paradigms is increased by fear more than anger in selfish individuals

みなさんの所属する組織には、常に自分のことばかりを考えている利己的な人はいますか?

どの組織にも、一人ぐらいはそういう人がいるのではないでしょうか。

単なる友人や知人であればそういった利己的な人と距離を置くなどして関わらないこともできます。

しかし、組織で仕事をする場合を考えると話は変わります。

あなたに「その利己的な人物」の人事権が無かったり、

また、そもそも組織内の仕事が多すぎてその利己的な人にも協力してもらわないと仕事が片付かないというような状況はあるでしょう。

利己的な個人には、単純に説得して、すぐ協力的になってくれるのであれば困りません。そこで、最終手段として、その人に時には多少の「怒り」または「恐怖」を与えて協力的になってもらわなければなりません。

また、もし「怒り」や「恐怖」を与えるとしても必要最低限にできればいいですよね。

では、果たして「怒り」と「恐怖」では、どちらが協力的になってくれるのでしょうか。

最近Nature紙に投稿されたハーバード大学の研究によると[文献1]

効果的なのは、「恐怖」の方です。

被験者には、大まかに次のような方法で、「恐怖」または「怒り」の感情を誘導されました。

1)恐怖を与えられたグループ:主に圧迫面接のようなストレスの掛かる状況化に置く→その後、恐怖感情のスコアを評価し実際に上昇が確認されたグループ
2)怒りを与えられたグループ:被験者に短いエッセイを書かせる→それ対して否定的で不公平なフィードバックを与える→その後、怒りの感情スコアを評価し実際に上昇が確認されたグループ
3)対象グループ:ただ単にテキストの一節を読むように要求され→「怒り」と「恐怖」の感情に特に変化がなかったグループ

また、それぞれの被験者は、別日に、「利己的(自己中)な性格を持つか」or「利他的(社会的)な性格を持つか」も評価されました。

さらに、各グループの被験者は、「恐怖」や「怒り」を与えることにより「報復」をする度合いが強くなるかも調べられました。

本研究より次のような結果が得られました。

【結果】
●「恐怖」および「怒り」を与えられることにより、それぞれの被験者の幸福感は一時的に下がった。「恐怖」を与えられたグループと比較して、「怒り」を与えられたグループにおいてより幸福感が下がった。

利己的(自己中)な性格の人は、
・他のグループと比較して協力性が低くかった。
「恐怖」を与えられることにより、他のグループと同様のレベルまで協力性が上がった。
・一方で、「怒り」を与えられることで協力性が上がるどころか、むしろ、さらに下がった。

●既に利他的(社会的)な性格の人は、
・利己的な個人と比べて協力性が高かった。
・また、「恐怖」および「怒り」を与えても協力性に影響を与えなかった。

●さらに「恐怖」や「怒り」を与えることにより、各グループの「報復をする度合」にいずれも大きな変化はなかった。

以上より

私たちが、組織において、感情を動かし協力性を高めようとする際、次のような対応が合理的と言えるのではないでしょうか。

・「怒り」は特に協力性を高める要素とならないので、不用意に「怒り」を与えるやり方はしない。
→本研究のデザインより、特に「不公平なフィードバック」や「否定的な言葉」を与えると怒りが増強される可能性が高いので注意が必要。

・「恐怖」を与えるやり方は、自己中な人に対しては、協力性を上げるのに効果的な可能性が高く、最終手段として使うのが良いと思われる。
→具体的には、本研究デザインより、周りの同僚にも協力してもらい、ちょっとしたプレッシャーを与えるやり方が効果的と考えられる。(ex「自己中なふるまいをした際に周りが少し冷たく対応する」「納期が近いよ間に合うの?と声を掛ける」等)なるべく理不尽なプレッシャーにならないように注意する。

・(「怒り」の場合よりも度合いが低いとしても)「恐怖」を与えられたグループの幸福感は一時的に下がるので、「恐怖」を与える際には、「緊急の場合にのみ」かつ「長引かせない」のが原則

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