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30日間ブックチャレンジ

少し前までSNSでやっていた、30日間テーマにそった本を選んでいく「ブックチャレンジ」をまとめました。

1日目
トランジット44号

トランジットは本当に写真が綺麗です… 。一冊の中にテーマにそってあらゆる方向からリサーチしてあって、旅をしている様な気持ちにさせてくれます。

今、こんな時期だから余計に、同じ時の中にある見知らぬ景色の多様さに心が動かされるような。

砂漠特集は、ラクダや、砂の種類、生活している人々の日常まで知る事のできる楽しい一冊でした。

ブックチャレンジの日本語版

もともと、海外から始まったチャレンジだったそうです。
Twitterでこの翻訳版を作って下さった方に、よかったらやってみませんか?と教えていただき、これまで読んだ本の記憶を遡ってみました。

読書は、小学生の頃が一番熱心だったような気がします。
両親が、文芸書であれば好きなものを買ってくれていた事が、
いろいろな物語と出会うきっかけになっていたと思います。
中高大と、目まぐるしい毎日で
読書から少しずつ離れてしまっていましたが、社会人になった今、もう一度本の、言葉の力に圧倒されている日々です。
と言いつつも、読んだ本の数はとても少ないのですが💦

今回の30日チャレンジはとくに物語の本に特化したテーマのようで、
どちらかというと写真集や図鑑を
ぼんやり眺めている事の多い自分は記憶を探り探り…。
雑誌、漫画、写真集、なんでもありで選びました。

2日目
ロバート・ウェストール
『ブラッカムの爆撃機』

第二次世界大戦中、イギリスの爆撃機ウェリントンに乗る、一人の通信兵からみた戦争のお話です。
ウェストールの作品は、忘れられない痛みがいつも佇んでいます。

柔らかく軽やかな語りに引き込まれたはずなのに、読み終わる頃には心がずきずきとして
途方に暮れていることが…。

一度絶版となった本書は、
宮崎駿監督が復刊したいとご本人が企画し、ロケハンを組み、描き下ろし漫画まで収録した愛の詰まった一冊です。

3日目
イエールジ・コジンスキー『異端の鳥』

ナチスドイツから逃れる為、東ヨーロッパに疎開させられた少年が
迫害と暴力の中で過ごした6年間。
…必ず最後まで読もうと思いますが、衝撃的な残酷さに耐えれず、読んでは休みの繰り返しで半年近くかかってまだ読み終えていません…
ポーランドではその内容から発禁書扱いとなっていたそうです。映画化もされています。

4日目
ジェリー・スピネッリ『ひねり屋』

その街で行われる「鳩の日」の祭りは
大人達が空に放たれた鳩を射撃し、落ちた瀕死の鳩の首を10歳になった男の子達が捻る。
でも、9歳のパーマーは「ひねり屋」になりたくなかった。
ファンタジー一択だった中学生の自分にとってずっと忘れられない一冊だった作品です。

思い出すのが、この本は高校生向けの棚に置いてあったことでした。(中高一貫校だったため、幅広い年齢層に合わせた本が一つの図書室に集まっていました)

理解できなくても、その棚にある本をパラパラとめくっては少し大人になった気分を味わいたい、ちょっと変わった時期がありました。
その時に出会ったこの本は、
これまでの人生であまり触れることのなかった薄暗さと悲しみが描かれ
部活をさぼってまでひとりぼっちの図書室で読み耽った記憶があります。

夕方の、西陽が差し込む館内で
自分が何か別の世界へ踏み出していったようなあの感覚は、今もときどき思い出したりする不思議な瞬間でした。

5日目
レマルク『西部戦線異状なし』

ドイツ軍兵士として第一次世界大戦を経験したパウルの物語。 主人公の心が空っぽになっていくのを、自分の事のように感じさせる繊細な描写がとても印象的でした。
古典にあたるのかもしれませんが、今に通じる感覚ばかりでもっと早くに出会いたかった…と少し後悔です。

6日目
リチャード・フラナガン『奥のほそ道』

打ちのめされすぎて、この本についてはなんて言ったらいいか…。
本当に血が流れ
それは今も止まっていないのを感じます。
とてつもない物語。
きっとこの一冊を超えていく作品に
これから何度も会えるのかもしれないけれど、一生側に置いておくことを決めた作品です。

7日目
ビル・ブライソン『究極のアウトドア体験』

ブライソンとカッツが、3500kmに渡る
アパラチアントレイルに数々の困難に見舞われながらも挑んでいく記録。
二人のやりとりが軽快でとても楽しいです。
歩く事や、自然の多様な表情、いくつもの発見が出来る素敵な作品でした。
オーディオブックは英語版が販売されています。

8日目
ハンス・ぺーター・リヒター
『あの頃はフリードリヒがいた』

ドイツ人の『ぼく』がナチス政権の時代を
どう生きたのか。
幼少期〜20歳で経験した敗戦までを追った作品です。
小学生の時、姉の課題図書だった本書を借り、全てを理解できなくても大きなショック受けた。
三部作と知ったのは数年前でした。

9日目
アンソニー・ドーア『メモリーウォール』

"記憶"をテーマにした6つの物語。
ドーアの描く世界は、光を閉じ込めた雪の結晶みたいに儚くて美しいです。
中でも、この短編集最後に収録される「来世」は息をのむような、忘れられない物語でした。

10日目
サン=テグジュペリ『人間の土地』

自分の見ているもの、 今いる場所を
こんなにも思考する事が出来るんだとはっとさせられた作品です。
彼は空から世界を 少し離れて見ているのに、 地上に小さな点のように散らばる人の内側、
自分の内側まで心を近づけられる。
ずっと閉じていた目が、開かれていく感覚に思わず涙しました。

11日目
デイヴィッド・ベニオフ
『卵をめぐる祖父の戦争』

ある命令の元、包囲下のレニングラードを彷徨う2人。
一緒にご飯が食べたいというか…本当はなんでも良くて、ただ、コーリャの話す言葉をもっと聞きたかった…ウシャコボの話し、もっと知りたかった…😢
レニングラード包囲戦について調べるきっかけとなった、魅力的なキャラクターと
映像的な描写が散りばめられた、大好きな一冊です。

13日目
ケヴィン・パワーズ『イエローバード』

バートルは18歳の初年兵マーフを無事家に連れて帰ると約束した。
そしてそれが難しいと知った時には、もう遅かった。
実際に、イラク戦争へ従軍した著者が
帰還後PTSDに苦しみながら5年以上の歳月の末、書き記した物語です。
詩的で美しいのに、圧倒されるような痛みと悲しみの言葉たち。
その一つ一つが胸を打つ大切な本。

15日目
スヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチ
『アフガン帰還兵の証言』

ソ連によるアフガン侵攻。
帰還兵やその親達へのインタビューをまとめた一冊。原題は『亜鉛の少年たち』。
戦死した兵士は亜鉛の棺に入れられ、開けられないよう封をされ故郷に送られた。
衝撃の事実が連続し、愕然としながら読みました。

16日目
ギイ・サジェール『忘れられた兵士』

アルザス出身でドイツ軍として東部戦線に従軍した少年の手記です。
全部の始まりになったとてもとても大切な本。出会ってなかったら、絵を描くことも、本を読むことも、何かを考えたりする事も今とは全然違うところに立っているような気がします。

17日目
ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』

教師として生きた一人の人生を描いた物語です。
彼を嵐へ連れ込み そして吐き出した戦争や 、人生の分岐点…。
騒ぎ立てもせず、ただ日常の一場面として起こり、そして去っていった。
悲しく、完璧に美しい小説。
きっと誰もがこの本の何処かに
自分を見つけるのかもしれないと思いました。

18日目
カート・ヴォネガット『追憶のハルマゲドン』

著者が亡くなる前に書いていたスピーチ原稿や、ドレスデン大空襲の経験を振り返ったエッセイ、幾つかの未発表短編…
彼の作品で一番好きな一冊です。
軽やかで、ユーモアが散りばめられているのに、いつも優しい眼差しとすごく深い悲しみを感じる。
自在に織り成される物語に潜在する、ある記憶をいつも探してしまいます。

19日目
リチャード・フラナガン『奥のほそ道』

オーディオブックのナレーションを著者本人が担当しています。 (こういう作品はよくあるのでしょうか?とても贅沢で素敵なことだな…と思います。)
どんな気持ちで、この場面を描き、
そして言葉にしてるんだろうって考えながら聴くことができました。
ダーキーのことを話す声、つい耳をすませてしまう。

20日目
カート・ヴォネガット『スローターハウス5』

主人公ビリーは過去と未来を行き来する時間旅行者。
時として、異星人に誘拐され、時として1945年に舞い戻っていく。
これはSF小説だったのでしょうか。
飄々と話す彼がなぜ、今を生きられないのか?隠される痛みとトラウマ。
言葉の奥を探す必要のある作品でした。

21日目
『アメリカ名詩選』

とても好きなシリーズです。
ロバート・フロスト、ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ、エドウィン・アーリントン・ロビンソンに出会うきっかけになった一冊でした。
他にも、フランス、イギリス、ドイツ版があります。

22日目
クリストファー・デイヴィス
『ジョゼフとその恋人』

もう読んだのは何年も前なので、今の自分がどう感じるかは分からないけれど
著者の本が大好きでした。
書かれた時代もあると思いますが、優しくて、どこかおとぎ話のようにも思ってた。
夏の間海辺で過ごす2人、愛や喪失を丁寧にそっと辿る物語です。

23日目
クリストファー・デイヴィス
『ぼくと彼が幸せだった頃』

コヘレトの言葉。
作中で、確かテッドと呼ばれる青年が朗読していたと思います。
書き写して自分に言い聞かせるみたいに、繰り返し声に出してたらいつの間にか覚えてしまいました。
全ての事に通ずるような、いつも立ち止まらせてくれる言葉。

24日目
ホースト・ファース、ティム・ペイジ
『レクイエム』

インドシナ戦争の取材中に死亡、あるいは行方不明になった135人のカメラマン達。
かつての仲間だった2人が、追悼のため、彼らの写真を一つにまとめた一冊です。
キャパ、バローズ、アンリ…一つ一つのエピソードに胸を打たれました。
そして圧巻の残された写真達。

25日目
ハンス・ファラダ『ベルリンに一人死す』

ナチス政権下のベルリンで国防軍だった息子の死をきっかけに、レジスタンス活動を始めたオットーと、ゲシュタポや密告者達との追跡劇。 悪役…立ち位置が変わればこの言葉は
多分誰にも当てはまらない…
エッシェリヒ警部を通して、本当に多くを考えさせられました。

26日目
W.G.ゼーバルト『アウステルリッツ』

アントワープ中央駅で<私>はアウステルリッツに出会う。
建築史について博識を持つ彼は、それらが暴力や権力の歴史と密接に結びついている事を語った。
そして彼自身、自らの失われた歴史を探している。
そこには、壮絶な痛みが隠されていた。
宝物の本です。

アウステルリッツは恐らく実在の人物ではないので、伝記には該当しないかもしれませんが、どうしてもこの本を何処かに入れたくて…。

27日目
ファビオ・ムーン『デイトリッパー』

自分は誰でもあって誰でもない。
その生と死も。隠された人生の秘密について。 この世界には、こんなにもすごい漫画があるんだって涙が止まりませんでした。
毎年読む度に、見える景色が変わっていく作品です。

28日目
ホメロス『オデュッセイア』
ジョイス『ユリシーズ』

いろんな本に登場する度に、読まなくちゃ…と思っています。

29日目
アンソニー・ドーア『すべての見えない光』

戦時下のフランス、サン・マロ。
ドイツ兵の少年と目の見えない少女の邂逅。
表紙は1945年のベルリンでロバート・キャパが撮った写真。
1938年以来に初めて行われた、ユダヤ教会のロシュ・ハシャナの礼拝式での一枚です。
この本は特別な雰囲気を纏っています。

30日目
ネミロフスキー『フランス組曲』

ナチスによるフランス侵攻時の人々の騒乱を描いた第一部、
占領下での生活を描いた第二部。
コップの水を倒したような、人の濁流をまるで空から眺めたような圧倒的描写力。
しかし作者はこの作品の三部以降を書く事も出来ず、アウシュヴィッツで亡くなりました。
強制連行直前まで綴った本作の草稿を隠したトランクは2人の娘に託され、彼女の死後何十年と経った後、刊行に至っています。
なんて事だろう。
得難い読書体験をさせてくれた一冊は壮絶な困難の中で書かれ、この先も続く筈だった物語や書かれるはずだった世界…
それをどれほど読みたくても、もう叶わないことを知りました。


30日間ブックチャレンジ終わりです。
とても偏った本選びでしたが、どれも大切な一冊一冊でした。

本の感想をこれまでもSNSにアップしていた事があったのですが、
今回の30日チャレンジの中で、毎日目まぐるしく読んだ区切りとして、
字数制限のある中「まとめる」ことがとても苦しくもなったりしていました。(自分で始めておいてなのですが💦)

これらの本に書かれていたことたちは、
本当は言葉にはならない感覚を与えてくれたものばかりだったのに
自分の持ち合わせの、ほんの僅かな拙い言葉に当てはめて閉じ込めているような…
それで、一区切りにして消費していくような
あっけない感覚に、だんだん気持ちが落ち込んでいくのを感じていました。

記録をつけることは、振り返りにつながり、すごく重要なことだと思う部分もあることから、ジレンマも…。

もっと蜘蛛の巣のように、一冊から得た事を広げて今に繋げていくことができたはずなのに勝手にいろんな事を完結させてきてしまったんだなあと改めて。全てのことを携えて進んで行くのは現実的ではないかもしれないけれど、やっぱり置き去りにしてきたものを見返すのは寂しさがありました。

感覚と言葉を、すり合わせていくのは、そして納得する所まで掘り下げて辿り着くのはとても難しいです。だからこそ、それを研ぎ澄まして生み出された本達がとてもかけがえがないのだな、

もう少し立ち止まり、時間をかけて大切に考え続けていくこと、何に対してもそういうふうにしていけたら…。
そして、自分自身圧倒的に足りていない、考えるための材料を集め続け、言葉を僅かずつでも磨いていく必要があること。
そう思わせてくれた、発見のたくさんあったチャレンジでした。

これからの人生でまた、たくさんの出会いがあったらいいな!
これを見てくださった方の
大切な本も、もし良ければ教えてください。

とても長くなってしまいましたが
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

おわり

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