トラウマの癒しと「懐かしさ」

「心の故郷」を暮らしに取り入れる智慧

私の部屋は、幸せだった幼い昭和時代を想起させるような黒電話など「懐かしさ」という記憶と繋がる「原体験」のアンティークな物に囲まれて暮らしています。
誰しもある「心の故郷」を日常という「暮らし」に取り入れる「智慧」は、トラウマ治療にとても良い効果があると感じています。

公的支援の制度改革や医者など専門家に理解を啓発することも同時並行で重要な活動です。しかし、虐待の後遺症（複雑性PTSD）に関心がある医者や専門家は、日本ではまだ非常に少なく、支援や治療が適切にできる専門家や国の体制が整うまで、かなりの年数がかかると感じているからです。

セリフでもできる心の癒し

治療や支援体制が整うまで、時間が非常にかかる虐待サバイバー問題を公的支援や医者の治療環境が整うまで、何十年とただ待っているだけでは、救われない多くの被害者を放置したままになってしまうと思います。

そこで、現時点で、セルフでもできる心の癒しというものを、私なりに思考錯誤しています。

私は生き物が好きなので、カメやメダカを飼育したり、植物を育てたりすることは、私の日常の暮らしの中の癒しの１つです。特に、メダカが卵を産み、新しい生命が誕生することや、種から土に植えて、芽が出て生長する植物を観ることは、私にとっての悦びであり、「生きる力」を生き物たちからもらうことができる大きな癒しになっています。

私のプライベートルームの植物たち

心が癒されるような「暮らし」の工夫

私個人としては、医療や福祉の制度はあった方がよりいいとは思いますが、制度改革には時間が非常にかかります。なので、心が癒されるような「暮らし」の工夫をセルフでしていく「智慧」を共有していくことが大切ではないかと思っているのです。

また、医療や福祉という「非日常」の場より、その人の「暮らし」という日常の方が、医療より遥かに大事なのではないかと思う側面もあります。心の癒しとは、日本人が「便利さ」と引き換えに、失ってきた「文化や自然」のようなお金にならない「無駄」ではないかと感じているのです。

治療と違い、癒しは個別性が強く、工夫をすればセルフでもできるものです。
以下は、私の部屋の写真、3枚です。古い地球儀なので、ソビエト連邦と書かれてあります。私が生まれた頃の地球です。また、パソコン机は、祖母がよく内職をしていた昭和時代の「足踏みミシン」を机として使っています。

昭和時代の地球儀と黒電話と足踏みミシン

黒電話にも、足踏みミシンにも、私の心の中で、幸せだった時代の懐かしい「心の故郷」と繋がっているものたちなのです。黒電話と祖父母との楽しかった時代の思い出や、祖母がよく足踏みミシンで内職をしていた時の「音」が聴こえてくるのです。すると、私の心は、その当時の時空に飛ぶことができて、若くて元気だった頃の祖母と心の中で再会することができます。

こうした「懐かしさ」に触れる暮らしは、私の心が少しずつ、癒されていく感覚を得られています。

柱時計や、オバQなど

昭和時代の看板と、温度計

幼い頃、どこかで見たことがあるという「懐かしい」風景で、良いものは暮らしや、街並みに「復活」させればよいのではないか、と私は思うのです。
まずは、個人レベルで、自分にとっての「懐かしさ」を暮らしの中に取り入れてみる工夫をしてみることをお勧めしたいなぁと思います。

（注）ただし、過去の虐待を想起させる懐かしさ、は当然、ＮＧです。自分にとって何かしら、楽しかった思い出のものがあると思います。それは家庭でなくても街並みや、楽しく遊んだ友人といつか観た「風景」でもいいのです。

医者は、あるものをフル活用してほしい

「複雑性PTSD」は、まだこれといって治療法が確立されていません。なので、日本の医師の方々にお願いしたいことの１つとして、西洋医学に偏りすぎず、東洋医学やアロマオイルなどの代替医療などと連携し、「統合医療」ができる医師を増やしてほしいと思います。

私が使用しているアロマオイル

海外では医師が、自然治癒力を高めるアロマオイルや、ホメオパシーの専門医までいます。また、薬だけに頼らず、栄養療法や運動療法なども日本の医療界には欠けていると思います。医師だけでなく心理師や栄養士などと連携して、「心的外傷」の治療に、西洋医学だけでなく、あるものをフル活用してほしいと切に願います。

※精神医学的な病状に関して、以下の書籍で、虐待の後遺症（複雑性PTSD）の典型的な症例としてまとめてあります。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付き。

わたし、虐待サバイバー