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虐待サバイバーからの質問コーナーの回答

先日、Googleフォームを用いて私への相談・質問を募ったのですが、その相談への回答を以下に書いています。回答はあくまで私の個人的なものです。

【質問者①】はじめまして、私も虐待を受けて育ちました。近々家を出るつもりですが、出た後も両親がつきまとってきそうで怖いです。羽馬さんは、現在はご両親と連絡を取ることはありますか?もしなければ、どのようにご両親と関係を絶ちましたか?

はじめまして。私個人の考えですが、虐待サバイバーは実家を早く出た方がいいと思っています。事情があって実家から離れられないというケースも聞きますが、親との関係が悪い中、自分が18歳を過ぎても親と同居していては、いつまでたっても虐待環境からは逃れられません。結果、精神を病んでしまうと思います。

もちろん、18歳で実家を飛び出しても、虐待サバイバーは親から社会常識を教わっていなかったり、学歴が低くよい職に就けなかったりしますから、自立して生活していくことは至難の業です。そして、虐待の後遺症(精神医学的なものや、社会常識がないなど社会的な後遺症)が顕在化するのは、実家を出た後の成人後に顕著になるように思います。こうしたことから、親から離れて一人暮らしをしても、大きな困難が待ち受けています。それでも、18歳を過ぎたら、早く虐待親から離れて、自分の人生を歩んだ方がいいと私は思います。

「実家を出た後も両親がつきまとってきそう」、とありますが、質問者さんの両親は、過干渉なタイプなのでしょうか?。私の場合は、実父と実母が私が0歳で離婚しているため、実父には今まで1度も会ったことがなく、父のことは戸籍で名前しか知りません。一方、実母とは0歳~18歳まで同居していましたが、大学進学をして私が実家を離れてからは、何か用事があるとき以外は、特に密に連絡を取り合うことはありませんでした。これは母からもだし、私からも必要以上の連絡を取り合わなかったので、つきまとわれるといった体験は私自身はなかったのです。そもそも、子ども時代から、すでにネグレクトが酷く、ご飯も朝、昼、晩と手作りのものは作ってもらえず、食事で家族団らんをしたことがないので、私の場合は過干渉ではなく、無関心(ネグレクト)といった虐待を受けたケースです(暴力など身体的虐待もありました)。

しかし、8歳年下の私の妹は、性格が大人しかったせいもあり、実母から異常な過干渉を受けて、「支配という虐待」を受けていました。これも、姉として見ていて、妹がどんどん精神を病んでいく姿を見ることは辛かったですね。つきまとわれる、という過干渉も精神が相当に参りますよね。

一番いい方法として、実家を出たら、連絡先を両親に教えないという方法を取ることです。電話番号も変えてしまって親には教えない。住所は、市役所で、住所が確認できる公的証明書の閲覧制限をかける制度を利用してください。正式名称は「住民基本台帳事務における支援措置」と呼ばれるものです。この制度を利用すれば、第三者(自分以外の者)が住民票などを閲覧・取得できないようになります。親からの暴力や児童虐待もこの制度利用の要件に該当します。

実家から出たら、まずは、市役所に相談しましょう。ただし、アパ―トを借りる時に、保証人がいりますから、親が保証人の場合は、この制度を最初から利用できないかと思います。保証人を親以外(保障人会社を利用するなど)に最初からするか、段階を踏んで居住地が親にばれないようにしていくしか逃げる方法がないと思います。

私の場合、実母とは今はふつうに連絡を取り合える関係にはなりました(実父とは、今でも1度も面識がない状態です)。20代の若い頃は、私も実母と縁を切りたい、二度と連絡を取りたくないと思い、用事があって電話で母と話すときは、子ども時代の虐待被害がフラッシュバックし、激しくパニックに陥っていました。今は、母を赦せているし、ふつうに電話などで会話はできます。そこにはとても長い時間がかかったし、私自身が自分の人生と向き合う内省的な作業が必要でした。

質問者さんが、将来的にご両親を赦せるか、赦せないかはわからないし、ご自身が楽な方を選べばいいので、どちらでもいいと思いますが、ご両親との関係に結論が出るまでは、時間がとてもかかるし、質問者さんの気持ちが第一で、他人があれこれ言うべきことではありません。質問者さんが、時間をかけて、自分が幸せな答えを見つけてほしいと思います。なので、まずは、早めに実家から離れて暮らした方がいいと思いますよ。お大事にしてくださいね。

【質問者②】どうぞよろしくお願いします。 虐待後遺症の中、実母の介護もあり費用も嵩む中、義理親(夫の親)の所にも仕送りしてましたが、 (義母はパートで8万弱、プラス年金合わせて12万ほど義父は介護度4で仕事はむり) 医療費やオムツ代なども圧迫するばかりで生活保護を視野に入れておく覚悟をしといて欲しいと言いましたが 義母にパートは義父を介護してる疲れの息抜きになっていると言われると辞めて貰うのは忍びなく… ただ、私も少しの外出でさえ疲れ果ててしまう状況で現在はパートの見込みも無理で… どうしたら良いか悩みが尽きません… アドバイスお願いします。

質問者さんは、虐待をした実のお母さんの介護もしていて、かつ夫の親である義理の両親の所にも仕送りをしていて経済的にひっ迫しているという状態ですね。個人的な考えですが、高齢となり介護が必要となった親を子が支援する必要はないと思っています。これは虐待サバイバーに限らず、介護や経済的に貧困の親には、公的サービスを利用してもらいましょう。

実のお母さんも、義理のお義父さんも、その子どもや奥さん(義理の母)だけが、介護負担を抱えるのではなく、介護サービスを利用してもらいましょう。要介護4であれば、以下の行政サービスが受けられます。早く行政に相談して受けられる公的サービスをしっかり受けてもらいましょう。実のお母さんの介護度がどのくらいかは分かりませんが、どちらの親も、早めに行政に相談しましょう。

それと、義理の親(夫の親)が、経済的に苦しく仕送りをしているとのことですが、生活保護を利用してもらいましょう。義理のお義母さんのパート代が8万弱、プラス年金合わせて12万ということは、年金受給額が、国民年金のみ(約5万)ということですね。お義母さんが夫の介護の息抜きになるからパートを辞められず、生活保護に至れないとのことですが、それは完全に義理親のワガママです。子どもも生活が大変なのに、経済的負担をかける親などおかしいです。

公的扶助があるのだから、子どもに経済援助を求めるものではありません。子どもは、親の介護や親が高齢になった時に経済援助してもらうために存在しているのではありません。もう、仕送りを止めて、生活保護になってもらいましょう。相談者さんの今の生活やこれからの将来もあるのに、親が経済的に子どもに負担をかけるというのはおかしいです。

「もう、仕送りはできません。もう援助できるお金が一切、ありません」とはっきり言いましょう。冷たくもなんともないです。義理の親の方がワガママです。義理ではなく実のお母さんについても、介護サービスを利用して相談者さんの負担をなるべく減らしましょう。また、実のお母さんも経済的に援助が必要であるならば、生活保護を利用してもらいましょう。同居しているなら、世帯分離してください。

高齢となった親を経済的にも時間的にも余裕がない子ども世代が養う必要は私はないと思います。虐待した母親を介護したり、義理の両親の経済的援助をされているということは、相談者さんは、とても心の優しい方なんだと思います。でも、キッパリ援助を断りましょう。

【質問者③】性的虐待が判明してから、母が彼氏と結婚し、私とも仲良くしたいと、いいだしました。どうしたらいいでしょうか。

えっと・・、状況がこの文章からでは読み取れないのですが、性的虐待は誰から受けていたのでしょうか?お母さんが結婚した彼氏からですかね?質問者さんは、どうもお母さんと今でも同居されていて、お母さんが結婚した彼氏から、性的行為を求められる(=仲良くしたいと言われる)ということでしょうか?

質問さんのご年齢が判らないのですが、もしかしたら、まだ18歳以下あるいは20代の若い方で実家から離れられていないのかなと想像しています。もし、18歳以下であれば、児童相談所に電話して、母親の結婚相手から性的行為を求められるという被害を相談してください。それは立派な性的虐待にあたります。

また、すでに成人されているなら、実家から早めに逃げた方がいいですよ。ちなみに成人していても、自分が望まない性行為を相手が強いてくることは性暴力にあたります。経済的に自立が難しければ、生活保護を利用してでも逃げてください。自力で逃げることが困難な場合は、女性シェルターに相談して同行支援や一時的にシェルターに入るなど、逃げる方法を一緒に考えてもらいましょう。相談者さんの居住地が分からないので、NPO法人 全国女性シェルターネットのリンクを以下に貼っておきます。また、よりそいホットラインは電話相談だけでなく同行支援を求めればしてくれます。うまく逃げれることを祈っています。


【質問者④】いつもツイート拝見しています。主に心理的虐待を受けて育った者です。医師からはPTSDのことも指摘されています。精神疾患と身体疾患両方があり、まだ親と同居しています。昔、頼っていた人などにたまに衝動的に連絡してしまい、人との距離感が掴めません。自分の本音を話すとカウンセラーにさえ、これは重いよと言われてしまう始末です。もう何も話さないで普通を装うのが1番の解決策なのか、私の本音はどこにおさめればいいのか分かりません。回答いただけると嬉しいです。

質問者さんのご年齢が分からないのですが、「まだ親と同居しています」という文面から、すでに成人されている方かと想像します。身体的にも精神的にも病気があり自立がなかなか難しい状況下で、心理的虐待をしていた親と同居しているとなると、子ども時代と生活環境が変わらないので、病気(特に精神面)は、良くならないし、どんどん悪化していくのではないかと思います。

基本的に、虐待親からは離れて暮らした方が回復には近づけると私は思います。しかし、虐待サバイバーは、経済的な面での自立を色んな面で困難にされていますし、精神・身体の病気にもなってしまっているので、病気を抱えた状態で、実家を離れ、一人暮らしをすることは、もの凄く大変なことです。

それでも、虐待親とは離れた方が回復には向かうと私は思います。カウンセラーにも相談しているとのことですが、精神科の臨床心理士もしくは公認心理師さんに相談しているのでしょうか?民間のほぼ素人のカウンセラーさんも沢山いますが、そうした人ではなく、精神科の臨床心理士もしくは公認心理師という専門職であれば、クライエントが相談した内容に対し、「これは重いよ」と言うのは不適切な発言だと私は思います。

「昔、頼っていた人に衝動的に連絡してしまって人との距離感が掴めない」とありますが、これは私も20代の頃はひどかったし、衝動的に抑えられず、友人や上司などに過度に依存して、電話してしまったりして相手を困らせてしまっていました。頭では相手が負担だと解っていても、抑えられない深い孤独感と衝動性がありますよね。そこが、われわれ虐待サバイバーの病状の1つなわけです。

これは、恵まれた家庭で子ども時代を育ち、大人になってからも親や結婚した家族に当たり前のように日々、悩みを相談できてきて、独りぼっちになった経験が1度もない人には、想像も理解もできないことなのです。本当の独りぼっちを体験したことがないから、分からない。そして、世間の恵まれた人は、自分は誰にも依存せず、誰にも迷惑もかけずに自力で生きていると勘違いしています。

当たり前に相談できる家族がずっといる人生の人に、本当の独りぼっちの孤独、そして衝動的に電話してしまうほどの孤独という心理状態は、理解してもらえないのです。私もそういう無理解に遭う体験をしてきました。でも、当然、友人も自分の生活があるから、常には対応してもらうことはできませんよね。だからこそ、精神科の医師や心理士(カウンセラー)にお金を払って、自分の辛い気持ちや、どこにも依存先がない心を、医療者と患者という関係だけでも心を満たしてもらうために、専門職がいるわけです。

だから、相談者さんの相談に対し、「これは重いよ」と言うカウンセラーは専門家として不適切な発言だと私は思います。「もう何も話さないでおこう」と思ってしまうことは当然のことで、孤独や心の傷を理解してもらい、できる範囲でいいからサポ―トしてもらえるはずの医療者やカウンセラーから冷たくされたり、無理解に遭ったり、傷つく言葉を言われてしまって二次被害に遭うことは、本当に傷つきますよね。

そして、本当に困り果てても、もうプロの支援者にSOSを出さなくなってしまう。冷たくされたり、傷つく発言をされる方が辛いと思い、プロの支援者を頼れなくなってしまう。精神科の医療者不信に陥ってしまうのです。私も二次被害があまりに酷くて、精神科の医療者不信がひどい時期がありましたから、相談者さんのお気持ちは痛いほど解ります。

でも、私は、次の精神科医を探し続けたんです。最後は、もう医者への理解は諦めました。精神科の薬は精神科医しか出せないので、薬だけもらえればいいと思って、完全に諦めて最後に受診した精神科の病院で出会った今の主治医が、大当たりだったのです。だから、相談者さんも諦めないで、他の支援者を探しましょう。諦めたらダメです。諦めなかったら、必ず理解して適切なサポートをしてくれる支援者はいます。今の病院にとりあえずかかりながら、次の治療者を探してください。よい治療者に出会えることを祈っております。

この質問コーナーは機会があれば、また実施したいと思います。私のTwitterアカウントは、@haba_survivor。また、以下の書籍の中で、虐待の後遺症について詳しく書いています。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付き。



虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!