ダーウィン医学と発達障害
発達障害(自閉症スペクトラム)という遺伝子は、なぜ人類に存在するのか?
発達障害は、日本だけが異常なブームが起きているという指摘は、発達障害の専門家も言っていますが、私がずっと興味を持っていたのは発達障害(自閉症スペクトラム)という遺伝子は、なぜ人類に存在するのか?ということでした。人類に有益な存在意義があるから現代まで淘汰されずに残ってきたのではないか?という疑問を随分、むかしからもっていました。
発達障害は、実際にその症状で困っていて支援がいる人が沢山いることは私も否定しません。しかし、間違った解釈を日本人の多くがしてしまっていて、当事者への偏見にもつながっているのではないか?と思うのです。ちなみに、私も発達障害が専門の精神科医(過去の主治医)にASDとADHDの診断は受けており、心理検査の結果からも凹凸が激しいことは指摘されています。
しかし、私も発達障害の当事者として、きちんと、自閉症スペクトラムの遺伝子の存在意義を解明し、もし人類にとって有益であるならば、正確な情報を国民がもたなければ、偏見にもつながると考えています。
人類の「病気」をダーウィン医学(進化医学)というという視点でみる学問があります。進化生物学に基づいた医学であり、進化の理論は、すべての生き物は自然選択による進化の過程の結果とされていることから、適応的である(人類に何かしら有益である)特質が淘汰されずに残るという視点から、「病気」という人類にとって「有害」とされるものも、実は、進化の過程の中で、人類に有益に働いた時代があった、もしくは現在も有益に働いている側面があるから淘汰されずに残っているという考えで人類の病気を解明する学問です。
発達障害もおそらく、人類に有益な遺伝子として現在まで淘汰されずに残っているという見方を私個人はしていますし、「障害」という見方を私はしていません。
また、発達障害以外では、「ネガティブ思考」が現代人に残っているのはなぜか?というテーマで1万年も続いた縄文時代の人たちは、「ネガティブ思考」が優勢という中、生き残ってきたのではないかという仮説は以下のコラムにまとめてあります。合わせてお読みください。
発達障害は「障害」ではなく「発達多様性」では?
私の見立て(自閉症スペクトラムは人類に実は有益な遺伝子)が当たっているかは、分かりませんが、発達障害は、「障害」と専門家が名付けたことは私個人は、大罪だったのではないかと思うのです。確かに、障害とつなかいと公的支援が受けれないということも分かるのですが、「発達多様性」という言葉の方が適していたのではないか?と思うのです。
発達に凹凸があることの方が人間としては当たり前で、凹凸がない人間の方がむしろ少数派だと思います。
ただの人類の凹凸の多様性を「障害」「障害」とし、たくさんの障害者を作りあげ、薬づけにしてきた精神科医や製薬会社は大罪としか思えません。
当然、社会的に不適合が難しく「生活障害」がでて困っている方については、治療や支援が必要であり、投薬が有効な場合も存在すると思います。そうした場合は、「障害」とし公的支援を受けることには反対はありません。
児童虐待と発達障害の関係
少し話は変わりますが、虐待と発達障害の関係について記載したいと思います。発達障害は先天的な障害とされていますが、虐待家庭で育った人は発達障害に類似した症状を呈することが報告されているし(精神科医の杉山登郎志氏が提唱した第四の発達障害。虐待された子供には、臨床像としての発達障害がみられることを指摘している)、発達障害をもつ子どもが育てにくいために親が虐待をしてしまったり、逆に親が発達障害の特性が強いために、子どもに虐待をしてしまうなど、発達障害と虐待は密接に関連しています。
遺伝的多型ですべての精神疾患を説明することは難しく、後天的な環境要因など複合的な要素から病気になるケースが多いように思いますが、発達障害も例外ではなく、遺伝的なものだけでなく、後天的な環境要因も複雑に絡み合っていると思います。そのため、発達障害に関しても、精神科での誤診も多いだろうと予想されます。
「発達障害グレーゾーン」の人も公的支援がいる
生活に支障が出ているのに、心理検査では凹凸がそこまで激しくなく、発達障害とは診断されない「発達障害グレーゾーン」とされる方が国の制度の狭間で支援が受けられずに困っている方がかなり多いです。やはり、凹凸がどれだけ激しいかではなく、その人が「生活障害」が出ていて困っていれば支援が受けられるようにしないといけないというのが私の持論です。
逆に言えば、どれだけ凹凸が激しくても「生活障害」が出ておらず、社会適応できていて本人が困っていない方については、「発達障害」という診断名も必要ないし、支援がいらないということだと思います。
また、発達障害グレーゾーンと診断されて公的支援が受けられずに困っている人がいる一方で、日本は「発達障害ブーム」と言われるように、発達障害がここまで市民権を得て、過剰診断まで起きていると指摘する精神科医もいます。このため、児童虐待の影響で、後天的に発達障害に類似した「臨床像としての発達障害(第四の発達障害)」が児童虐待の増加とともに社会的に増加するという現象には、納得できます。
ダーウィン医学(進化医学)という視点で、あらゆる病気を見ていくと、有害とされている病気も別の視点で捉えることが可能になる
私も虐待の後遺症で、複雑性PTSDや、解離性同一性障害など、複雑性PTSDに起因するあらゆる精神疾患に罹患してきましたから、「病気」や「障害」というものがどれほど苦しく、人生も壊滅していくものかはよく知っています。しかし、私は、ダーウィン医学(進化医学)という観点からも、自分が罹患してきたあらゆる精神疾患の存在意義を考えてみたいと思っています。
自身を苦しめている「病気」や「障害」というものを「有害」とみなすだけでは本人にとっても苦しいだけですが、ダーウィン医学(進化医学)という観点から、人類にとって有益だったから現在まで残ってきた特質だという見方もできれば、「病気」や「障害」に対して、また別の見方から、気持ちが少し楽になる気がしています。今後の私のテーマの1つとして、ダーウィン医学(進化医学)という観点から見る「精神疾患」の意義について考えていきたいと思います。
以下の参考書籍はダーウィン医学(進化医学)を知る上でおすすめです。
■人体 失敗の進化史、著:遠藤秀紀(2006)※この書籍は、人体の身体的機能に関しての「ダーウィン医学」の話でもあります。
・進化から見た病気―「ダーウィン医学」のすすめ 、著:栃内新(2009)
【参考文献】 子ども虐待という第四の発達障害、著:杉山 登志郎(2007)
虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!