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プラス5万円か? マイナス5000円か?



このところ駐輪場でずっと眠っていた原付を、ついに手放すことにした。

夫がバイクの買取をしてくれる某業者さんに電話をして、原付の基本情報を伝えると「実際に見てみなければわかりませんが、それですと最大5万円ほどになると思います。ですが状態などによっては、逆に5000円ほど費用が必要になるかもしれません」という返事だった。


最大5万円。


はあ〜〜これは心が躍る。だって、もう長い間乗っていなくてあとは捨てるだけだと思っていた原付が、5万円になるかもしれない。駐輪場からぼた餅。査定、たのしみ!原付ドリーム、掴みたい!

「ねえ、まあ実際5万円はむずかしいかもしれないけどさ、原付売れたらそのお金で何かおいしいもの食べに行こうよ!」と夫に提案すると、わたしの目がキラキラ(ギラギラ)していることを察したのであろう夫に「いいけど、でももしかしたらむしろ5000円取られるかもしれないんだよ。あんまり期待しちゃだめだよ」と言われる。

わたしだって正直5万円になることはないだろうとわかっている。社会人ですからな。でも、1万円くらいにはなるんじゃないか。もう使わないものが1万円。世知辛い今の世。こんなときくらいふたりで夢見ようよ。ほら、もっと前向きにさ。ふだん「妻ちゃん、もっとポジティブ思考でいようよ」と言ってくるのはそっちじゃないか。と思いながら迎えた査定当日。気になるその結果は…


0円。


期待はずれ。原付ドリームのわくわくから一転、ずっこけて「えーおいしいもの食べに行けないじゃん!」とうなだれるわたしに、夫はこう言ったのだった。


「なんで?おいしいもの食べに行こうよ!だって、本来なら廃車の手続きなんかで5000円取られるかもしれなかったんだよ?でもそれが0で処分できたんだよ?5000円浮いたじゃん!めっちゃラッキーじゃん!おいしいもの食べに行こうよ!」


は…!

査定前と査定後で、「これってもしかして、私たち入れ替わってる…!?」と、まるで『君の名は。』ばりの立場の入れ替わりようである。

いつだってそう。わたしは勝手に期待して、舞い上がって、はりきって、勝手に落ち込んで。夫は過度に期待したり、ハードルを上げたりしないから、どんなときも平常心。だからずどーんと落ち込むこともないし、起きたことを前向きに捉えることができる。

ただ原付を手放したというだけの話なのに、そこに生き方の、考え方の決定的な違いを見せつけられた気分。そしてわたしたちは5000円分のおいしいものを食べに行くことにしたのだった。


おわり

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