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ひそかな憧れ | Kii

毎朝、目覚めていく中はじめに感じるのは全身を纏う重力。そして思うのは、夜のあいだにすっかり私となじみきった布団へこのまま沈みくるまれていたいと言うこと。
 
「起床能力」と言うカテゴリーがあるならば私は、最弱クラスだと思う。もし夫に尋ねてみたら即同意するだろう。つまり、朝起きてすぐ目を覚ますことが私は大の苦手だ。
 
「目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた」なんてエピソードは、私にとって異次元の話で、毎夜寝る前には携帯電話のアラームを、幾重にも刻んで備える。スヌーズ機能も相まって、翌朝繰り返されるアラームに気づきはじめた頃には、一体何時の設定で鳴っているのかわからない。停止させるたび意識を行きつ戻りつさせた末、最後のアラームでは渋くも起きられているので、結局いつもの時間に起床できてはいる。
 
朝の目覚めを信用できないことはなかなかに辛い。たまに用事があり普段以上に早起きしなくてはならない時などは、寝過ごさないか心配で眠れず、ほとんど徹夜になるケースも多い。ただ、そんな私も自宅以外の旅先などではパチリと目を覚ませるから不思議だ。
 
そもそものところ、子どもの頃から眠り方がわからない。眠ることに方法があるのかはわからないけれど。世間にはすぐ眠れる人の方が多そうに見えて、とても羨ましく思う。

今日の日を終え、眠るためにベッドに入ってからは、眠気が訪れるまでどうにかやり過ごしている。子どもが生まれるまでは、眠る寸前まで煌々としたところでそれなりに過ごせていたけれど、添い寝するようになってからは真っ暗な視界でスマートフォンの中が私の過ごすところだ。
 
メンテナンスに通っている整体の先生に眠れないことを相談したことがある。先生の診立てでは、私の身体の場合、エネルギーが使いきれず余っているからなので気にしなくて良いと言われた。確かに睡眠が短く、目覚めは遅くとも元気に過ごせているとは思う。それに一旦眠ってしまえばしぶとく起きないので、眠りは深い方だとも思う。と言う訳で、このループを回り続けているのは必然なんだろう。
 
家族の寝息を耳にする平和な時間はこの上ない幸せを感じている。でも時折エアポケットみたいに孤独感がやってきて無性に寂しくなる。歌のエピソードが続くが、そんな時は、岡崎体育の「龍」と言う歌にとても助けられている。もし眠れぬ夜を過ごしている方がいたらぜひ聴いてみてほしい。聴くと寂しい気持ちがすっと解けていく。

夜、目を瞑るとすぐ眠りにつき、朝が来たら目を開けながら高く両腕をあげて「あーよく寝た」と言ってみたい。その一連はもうずっと私のひそかな憧れだ。
 
そうして窓を開けて朝の風を感じながら、落ち着いた穏やかな時間を送りたい。そんな風に暮らしている仲間ができたことは、これから変わりゆく予兆でありますように。

目を留めてくださり、ありがとうございます。 いただいたお気持ちから、自分たちを顧みることができ、とても励みになります! また、皆さまに還元できますよう日々に向き合ってまいります。