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旅の終わりもノビノビとサンライズ(part2)[2022.4-5 サンライズGR⑫終]


目が覚めると、そこは熱海あたみだった。どうやら列車が停車をする衝撃で起きたらしい。
昨夜の岡山を出てから一度も起きることなくここまでやってきたのである。今回の旅で相当な疲れが溜まっていたというのを思い知らされた。

「サンライズ出雲91号」→「やくも」→「マリンライナー」→「サンライズ瀬戸」と3日に渡って乗ってきている。列車に乗るだけでそんなに疲れるかと私自身でも疑問に思うときがあるが、一日中座っているとかなりの体力を消費するらしい。
これは今までの体験から言えることであって、私みたいな貧弱な体力しか持ち合わせていない人だからこのようになるのかもしれない。

その話はこのあたりまでにしておいて、ともかく、寝台特急で長い時間寝られたのは初めての経験だったから、非常に有意義に感じられた。
以前にも申し上げたかもしれないが、”列車に乗る限り、寝ることは許されない!”という持論があるため、夜行や寝台列車でもそのような行動をできる範囲でしていたわけだが、今回のような素晴らしい体験ができてしまうと、”特別ルールとして定めても良いかな”と思ってしまう。

さて、そうこうしているうちに、湘南の海原が見える区間へと列車は入っていく。
今日も晴天なようで、太陽光を受けている海がギラギラと光り輝いている。この景色を見ると、東海道線に乗っていると感じられるし、関東に戻ってきたと思える。
そのような考えを頭に浮かべると、この海は数多の旅行者の思いを知っているのではないかという突飛な考えが続いて浮かんでくる。あながち間違いではないかも分からないが、私が考えることだから間違いだろう。

ノビノビ座席で十分にノビノビしきったから、少し身体を動かすことにする。まずは洗顔とトイレを済ませる。車両が横方向に揺れ動くのもあり、多少難儀した部分があったが、なんとか終わらせられた。
つぎに、朝ご飯。デッキまで赴き、高松で買っておいたおにぎりを黙々と口に押し込む。美味しい。

以上の作業を終えたら、もうすぐ横浜|《よこはま》に着くというアナウンスが流れた。周りの乗客の一部はせっせと降りる支度を始めている。
車窓に目を移せば、それはもう都会の様相だ。見慣れた風景が帰ってきた。そのように思える。

横浜では半分ほどが降りて、物音で騒がしかった車内も再び静まりかえる。サンライズと共に過ごせるのも、あと20分しかない。そう思うと、しんみりとした気持ちになる。そう思っているのもつかの間、川崎かわさきを過ぎ、そして多摩川を渡って既に東京都へ入ってしまっていた。

私の縄張りにはモバイルバッテリーやペットボトルといったものがまだ広げてある。それを早々に撤収させなければならない。
私は慌てつつも、落ち着いたような相反する状態で、また眠気を伴いながら作業を遂行した。ようやく終わった頃には、浜松町のあたりで、東京に到着するという最後のアナウンスが流れているところだった。

7時8分、時間どおりに東京へ降り立つ。
ホームにはスーツ姿のサラリーマン等がたくさんいて、夢見心地から一気に現実の世界へと戻された気分だ。このギャップにうんざりはするが、少し時間を置くと、その気持ちが一変する。夢見心地にさせてくれた列車に再び乗りたくなり、そのためにも日々の生活を頑張らねばならないと思うようになる。これが一種の依存というものなのだろうか。

サンライズと別れを告げ、次なる目的地へと進む普通列車を待つ。
列車が来てドアが開くと、人の壁がどっと押し寄せてきた。夢にかけられていた私を目覚めさせるかのごとく。



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