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レーシングカーはエヴァンゲリオンである !?

こんにちは、ドイツレースチームでエンジニアとして働く山下です。

タイトルを読んで興味を持ったけど「この人、頭おかしくなったのかなー?」と思い、記事を閉じようとしている人は自分に言い聞かせてください。

「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ…」

エヴァを知らない?アニメを見ましょう!笑 (知らなくても読めるから読んでくださいw)

すいません、、真面目に書きます。。。
本記事ではモータースポーツを他スポーツと比較する中で、その特異性を考えました。そして僕の結論は 「レーシングカーはエヴァンゲリオンである」となりました。

(1) モータースポーツはスポーツなのか?

F1に限らずモータースポーツにおいて、このテーマは割と頻繁に議論されています。よくある回答は、
「レーシングドライバーのフィジカルな負荷はとても大きい」という話。

ひとつの例として、走行中のF1ドライバーの心拍数はマラソンライナーより高く180前後を維持します。元F1ドライバーの中野信治さんのお話では「コーナ走行中、ドライバーは4, 5Gという強力な横G (= 遠心力) を受けているため、意識せずとも息を止めている」とのこと[1] 。

フォーミュラカーを代表としてエアコンもなく極限下で走行するドライバーは、レース後に脱水症状になることも多々あります。

また、走行中のドライバーは"前走車との距離や駆け引き"、"最適なライン取り"を考えながら、車両挙動に応じて、"前後ブレーキバランス"を調整します。ピットからの情報を基に、冷静に判断する思考力とメンタルも必要です。

これらの観点から見れば、"フィジカルとメンタルの両面が問われるスポーツ"だと思います。

(2) レーシングカーはエヴァンゲリオンである!?

上述の議論からモータースポーツはスポーツとして扱い、他スポーツと比較してみます。この際によく指摘されることは
「レーシングカーという機械的な道具を使っている点が他スポーツと異なるよね」
という意見です。

道具という観点では、サッカーもスパイクという道具を使うと思います。
機械的という観点では、義足や車椅子を使うパラリンピックは近いかもしれません。エンジニアやメカニックが道具を最適化するところも似ている部分があると思います。

その一方で、F1とサッカー、車椅子バスケは明らかに異なるスポーツに感じます。
これはマクロな視点では、「最終的な結果に対して支配的な影響力をもつのが、人であるか道具であるかの違い」だと思います。

サッカーや車椅子バスケはやはり人が中心です。
一方で、モータースポーツではラップタイムという最終目的に対して、最も影響を与えるのがドライバーではなくレーシングカーです。

すると疑問が浮かびます。非常に過酷な環境下でレーシングカーを運転しているドライバーは何をしているのか?

そこで、僕は迷走 (瞑想) しました・・・
そうです!つまりドライバーはエヴァンゲリオンを操縦しているのです!! 笑

新世紀エヴァンゲリオン  [2]

エヴァンゲリオンとは、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空の兵器のことです。

アニメ内では、主人公のシンジや登場人物が、エヴァンゲリオン (=エヴァ) に乗り込んで、使徒と呼ばれる人類を脅かす巨大な生命体と闘います。この際、操縦者とエヴァの神経は繋がれ、シンクロ率によって機体 (=エヴァ)が上手く稼働するかが決まります[2]。シンクロ率が低いと上手く稼働しないため使徒とまともに戦えません。

僕はドライバーとレーシングカーの関係は、この操縦者とエヴァンゲリオンの関係に酷似していると思います。

レースドライバーはステアリング、アクセルへの入力に対する応答から車両、タイヤの状況を把握します。そしてラップタイムを1/1000秒でも削るために車両の限界点を探りながらギリギリで運転しています。ここで、ドライバーがレーシングカーとシンクロして車両挙動を把握出来ると、自信を持って運転出来るため、車両パフォーマンスを100%引き出すことが出来ます。

これは「ドライバーの神経をタイヤの末端まで繋げる」と表現しても良いかもしれません。一流のドライバーは車両の状態を理解する能力に長けています。レーシングカーは単なる道具ではなく、ドライバーの体の一部となります。

つまりレーシングカーとのシンクロ度を高め、車両の能力を100%引き出すことがレースドライバーの最終目標なのです。

過去にはエヴァンゲリオンのカラーリングをしたレース車両もありました 笑 

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エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電[3]

(3) 世界エヴァンゲリオン化の最先端はモータースポーツ!?

スウェーデンでは数千人の人がマイクロチップを体に埋め込みました[4]。個人情報を基本に、鍵やクレジットカード、電車のチケットなど利便性の向上が目的のようです。世界初の装着型サイボーグ (ロボットスーツ) として有名なHAL (Cyberdyne社) は既に医療や作業支援で活躍しています[5]。HALは脳が体に送る微弱な電気信号を検知して、使用者の運動をサポートする仕組みです。

多くの人が機械を道具としてではなく、身体の一部として使う日は近いです。世界は凄いスピードでエヴァンゲリオン化が進んでいます。

その中で、モータースポーツは技術が高度化する以前からドライバーとレーシングカーのシンクロ度の向上に取り組む競技です。これはドライバーのみの課題ではなく、エンジニア、メカニックにとっても与えられる課題です。

僕はデータエンジニアとして働いています。車両に搭載されたECU (コンピュータ)やセンサによって収集されたデータ解析をして、ドライバーとレーシングカーのシンクロ度を引き上げるサポートしています。

時速300km/hを超える世界で、人と機械とデジタルが掛け合わされる世界は魅力的です。興味を持ったら、そんな世界をぜひ覗いてみてください!

読んで頂いてありがとうございました。
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参考文献URL
[1]https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00105/00035/?P=3
[2]https://www.youtube.com/watch?v=uuFwvzLRF-o
[3]http://www.kansenzyuku.com/2012/11/2374.html
[4]https://trillionsmiles.com/future/microchip/
[5]https://www.cyberdyne.jp/products/HAL/index.html

自動運転とモータースポーツのテクノロジーについての記事を書きます! 未来に繋がるモータースポーツを創りたいです!