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フェミニズムにおける「女性」を「障害者」に置き換えたら見えてきたこと。

AbemaTVのニュース番組『AbemaPrime』で金曜MCを務めている。

先週の放送では、番組後半で「フェミニズムを語る」と題した討論会が行われた。本来、フェミニズムとは男女同権を目指す主張であり、これまで社会的に抑圧されてきた女性の権利を拡張していこうとする思想である。

「男女平等」というお題目自体に正面きって異論を唱える人は少ないと思うが、しかし昨今のこの“フェミニズム”に対しては、もっと言えばフェミニストを自称する方々の主張に対しては、「行き過ぎである」といった声が聞こえてくることもまた事実である。

番組ではその双方の主張をすくい上げるべく、お考えの異なるさまざまな論者をお招きした。『朝まで生テレビ』のような激論を戦わせるエンターテイメントというよりは、あくまで建設的な議論となることを志向した。MCとして進行を担当しながら、みずからの意見も述べるという難易度の高い仕事ではあったが、非常に刺激的で有意義な時間だった。

◆動画はこちらからご覧になれます。

ひとつめのテーマは、漫画のキャラクターを用いた献血ポスターの是非。日本赤十字社が『宇崎ちゃんは遊びたい!』という漫画のキャラクターをポスターに起用したのだが、このキャラクターがいわゆる“巨乳”だったため、一部のフェミニストから「ポスターにふさわしくない」「不快である」との指摘がなされたのである。

たしかに社会学者・千田有紀氏が「女性の身体などを物のように扱うことは“女性の性的対象化”である」と指摘したように、日本社会にそうした風潮があることは否めない。

だが、議論を混沌とさせたのは、参議院議員・福島みずほ氏のこの発言だった。

「私はアニメのキャラクターやデフォルメされたものを否定するわけでも、表現の自由を制限したいわけでもない。また、広告のアイキャッチに女性が使われることもあるのもわかる。ただ、どうして献血のポスターに胸を強調したキャラクターを使わなければならなかったのか、それがよくわからないということだ」

はて、と私も考え込んでしまった。たしかに「過度な性的なポスター」には否定的な声が上がってしかるべきだろう。だが、ここで大事なのは「誰が」過度に性的であるかを判断するかということだ。

この記事には、実際にポスターで使用された絵柄が掲載されているが、これを見て「胸を強調している」「過度に性的である」と言えるかは非常に難しい問題である。このキャラクターが裸になっていたり、水着を着ていたりしたのであれば話は別だが、普通に服を着ている。ただ、物理的に胸が大きいのである。

世の中には胸の小さな女性もいれば、大きな女性もいる。たまたま後者にあたる方が、ただ服を着て街を歩いているだけで、周囲から「胸を強調している」「過度に性的である」などと言われてしまうようなことがあれば、それはあまりに不憫である。むしろ、そうした言葉を口にした人々に対して批判の声が上がってもおかしくない。

このポスターで描かれているのが実在する女性ではなく、漫画のキャラクターであるという点が、問題をさらにややこしくしているが、少なくとも私は「過度に性的である」とまでは感じられなかった。しかし、「過度に性的である」と感じる方がいることも事実だろう。

結局のところ、「感じ方は人それぞれ」ということになるのだろうが、表現の自由という観点から、多くの人の見解が一致しないものにまで規制を加えていくことは望ましくないのではないように思われる。

こうした議論を続けていくうち、視聴者から多くのコメントが寄せられた。その中のいくつかが番組内で紹介された。

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これを読んで、既視感を覚えた。

この20年間、私が言われ続けてきたこととまるで同じなのだ。「女性」を「障害者」に、「男性」を「健常者」に置き換えると、驚くほど私が浴びせられ続けてきた言葉とピタリ重なるのだ。どの分野でも「声を上げる」ことがいかに勇気を必要とするものなのか、あらためて実感させられた。

そうか、そういうことだったのか——。

「女性」を「障害者」に置き換えることで、あらためてフェミニズムと向き合った私は、これまで #KuToo 運動に感じていたモヤモヤの正体を、ようやく言語化することができたのだ。

私はスタジオで、次のように語った。

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