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新社会人になって3ヶ月目 大人の発達障害と診断を受け会社を辞めた僕が障害者雇用で自分の居場所を見つけた物語 その② 


Chapter1 今日から障害者⁈

・たった1日で人生が変わった日 その①の続き


「思ったより、早く診断を受けれて良かったね」
「えっ、1ヶ月もかかったし、しかも心理検査は2時間以上もかかったよ」
「大人の発達障害の病院で人気があるところは、予約を取るだけでも大変って言われているから、早い早い」
 検査結果を聞く診察日。検査結果が気になり、いつもよりそわそわする僕の隣で、母は相変わらず、読書をしていた。
 ついに順番が来た。

「心理検査の結果は、発達障害です。発達障害の種類は……」

 22歳の僕は、今日から障害者になった。

「先生の話は理解できた?」
「なんか話が全く頭の中に入って来なかった」
「隣で見ていてそうだと思ったわ。発達障害の場合、会話内容がすぐに理解できるとは限らないらしいから、簡単に話をまとめて、スマホに送るね」
 会計を待つ間、母はスマホに向かっていた。

 スマホのSNSに送ってくれた。

**********

発達障害の3つの種類

①ASD(自閉スペクトラム症 アスペルガー症候群)
 ・コミュニケーションが苦手
 ・強いこだわりがある
 ・限定された行動を取る
 ・融通が利かない
 ・想像力が乏しい
 ・言葉を文字通り解釈する
 ・感覚に関する過敏性や鈍感性がある 
 
②ADHD(注意欠如・多動症)
 ・注意散漫
 ・ミスが多い
 ・忘れ物が多い
 ・落ち着きがない
 
③LD(学習障害)
 ・書く、計算する、読む、聞く、話す等の能力に困難がある

**********

 何回も読んだ。僕は、ASDとADHDと診断された。
 だから、どうすれば、良いのか、これから先のことを考えてもまったくわからなかった。


・自宅警備員になる


「ねぇねぇ、友だちに頼まれて人生100年時代用のキャッシュフロー表作ったから、やってみない?」
 土曜日の夕方、祖母のお見舞いの帰り道で買ってきたドーナツを食べようと母に声をかけられ、リビングに集まった僕らに母が聞いてきた。
「それなに?」
「私もキャッシュフロー表やりたい。ちょうど、毎月の積立金額を変更するか迷ってたんだ。人生100年時代の準備したい」
「姉ちゃんは知ってるの?」
「何となくは知ってるよ」
「はいはい、ふたりまとめて説明するから。ノートパソコンを準備して。ドーナツを食べながら始めましょう」
 母はファイナンシャルプランナーの資格があり、普段、「な〜んちゃってFP」とよく言っているが、実際にお金の話を聞いたのは始めてだった。

 簡単にまとめると、自分の望む人生を送るため、2つの作業をするようだ。

 ①ライフデザイン作成 やりたいこといっぱいの将来年表を作る
            ⇒人生(ライフ)を設計(デザイン)する

 ②マネープラン作成 ライフデザインを叶えるために長期的な将来の
           支出・収入・貯蓄残高を予想できるキャッシュ
           フロー表を作って働き方(収入)や資産運用など
           を考える

「大好きなリラックマグッズは気にせず買いたいし、ゲームのソフトも買いたいし、時々、温泉旅行もしたいし、結婚は26歳で」
 姉の大きな独り言を聞いているうちに、僕もやりたいことが湧いてきた。
「う〜ん、好きなアニメのくじやグッズを買いたいし、年に1回は聖地巡礼したいからなぁ」
 少しだけでもひとり暮らしをした経験から、月に必要なお金や趣味に使いたいお金を予想し、出来上がったキャッシュフロー表をじっくり見た。
 3ヶ月間しか働いていなかった僕は、失業保険をもらえる条件を満たさず、無収入で、貯金もほとんどなかった。
 答えは簡単に出た。
 結論→お金がないから働こう!

「発達障害でも働ける?」
「もちろん。じゃ、転職活動を始めようね。転職回数7回の私に対して、麻人はなんてあだ名を付けてくれたのかしら?」
「あっ、ジョブチェンジャー」
 子どものころに、TVで観ていた艦隊ヒーローものをまねて母を呼んでいたことを思い出した。それと同時に、転職活動を始める今、気になることを聞いてみた。
「なんで7回も転職したの?」
「大学を卒業して、そのまま永久就職で結婚したから、離婚して初めて働いたのよ。アルバイトからスタートして、給与アップのために転職を繰り返した感じね。それと、資格は大事だなぁと気づいて、仕事でお金をもらいながら勉強して資格を取っては、また転職して資格を取るようにしたの。おかげで40歳のとき、今の会社に正社員で採用されたと思うよ」
「そうなんだ」
「私はピンクジョブチェンジャーでいいから、赤を譲ってあげるわ。とりあえず、初任務は自宅警備員でよろしく」
「はいはい、Amazonの荷物の受取りはいつでもOKです」

 発達障害と診断されてどうしたらよいのかわからず、立ち止まっていた僕は、最初の一歩をやっと踏み出せたような気がした。


Chapter 2 さぁ、どっち? 人生は選択だ

・本当の自分を知るか、知らないか、実は人生の分かれ道


 自宅警備員生活は、もちろん順調にスタートした。
 が、母からは警備以外の買い物や家事も頼まれ、家事見習いも含まれているらしかった。

「大学病院から連絡が来たから、明日にでも診断書をもらってきてね」
「そんなの頼んでいたんだ」
「あとは、私が平日にお休みを取れたら、市役所へ行きましょう」

 市役所に着くと、障害福祉課に向かった。
「まずは、自立支援医療費という手続きからするわよ。この間のADHDの薬の値段、結構、高かったでしょう?」
「うん、びっくりした。これから自分で働いたとしても、毎月払うのはやばいと思った」
「安心して。この自立支援医療制度はね、簡単に言っちゃうと、支援って言葉が入ってるとおり、麻人が発達障害でかかる病院代や薬代の一部を払ってくれるのよ。高給取りになるまでは、月に一定金額を負担すればいいだけになるから」
「よかった〜」
 これから転職をしたときに、仕事上でのミスを少しでも減らすため、医師と相談してADHDの薬の服用を始めていた。
 残念ながら、一定期間、服用しても障害そのものが治るわけではなく、一生飲み続けなければならず、薬代が心配だった。
「将来、ASDの特性そのものを抑える新薬ができたときも、この制度があれば助かりそうね」
 祖母の介護でも様々な制度を利用して、介護費用を抑えている母。
 日頃から「使える公的制度は全部、使うに決まっている!」が口癖の母は、本当に頼りになった。
 

「次は、就労移行支援制度の申込みね」 
「就労移行支援ってなに?」
「障害者の職業訓練制度で、就労移行支援事業所へ通うのよ。そうね、転職の予備校みたいな感じかしら。発達障害を持ちながら働いていくために大切な学びの機会になるはず。通ってみない?」
「でも、働くのが遅くならない?」
「麻人は若いし、これからの長い人生を考えると、1~2年遅くなったとしても大丈夫」
「なら、行ってみる」
「よかったわ。家族とだけのやり取りでは学べないことを、就労移行支援事業所で勉強して欲しいなぁと思っているの。これから色々な人間関係の中で仕事をしていくことになるからね。まずは自分の障害をしっかり理解し、次に、周りの人に自分の障害がどのように思われるかを知ることが、麻人にはきっと良い経験になるよ」

 こうして、自宅警備員をしながら、就労移行支援事業所へ週5日通うことになった。

 大学よりも真面目にExcelを学んだり、自己理解のプログラムを受けたり、ストレスマネジメントを勉強したり、あっという間に半年が経過していた。

                              その③へ




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