2021/03/27 桜の思い出

桜を見ると、毎年思い出すことがある。

大学で入ったサークルに、2つ上だけどサークル歴はほぼ同じ(私の1ヶ月前に入った)な人がいた。容姿は整っているのにすごく変わってて、つかみどころがない人。でも何故か気が合って、サークルで教わった技術を早く身につけたくて競い合っていて、いつも夜中まで一緒に練習していた。おかげでこの頃はよく午前中の講義に寝坊していた気がする。

この人は写真が得意で、いつもカメラを持っていた。でも出会った頃は「写真は自分が好きで撮っている、人に見せるためじゃない」と、頑なに見せてくれなかった。めんどくさい人だな、と思っていたし、本人に言ったことがあるかもしれない。だとしても「そうだよ〜」とか笑って返されていたんだと思うけど。それくらい仲は良かったと思う。私はお兄ちゃんみたいに思っていたし、彼もおそらく妹のように思っていただろう。

ある週末に、またまた夜中に練習していたときに、ふと彼が「明日、花見行かない?」と誘ってきた。珍しいこともあるもんだと了承して、その日は帰宅して翌朝また集合して、近所の植物園へ。大学の附属施設で、学生証を見せれば無料で入れることを、その日初めて知った。
ひととおり植物園をまわって、(トリカブトを見て異様に盛り上がり、)広場のようなところに出たら桜が数本咲いていて、どれも満開だった。その下に座って、各自お花見。これがマジで“各自”で、彼はずっとカメラを構えて写真を撮り続けていて、話しかけても「黙って」と言われる始末。
何で連れてこられたんだろうと思ったけど、諦めてぼーっと桜を見ていた。花見っていってもいつもお酒を飲むばかりで、こんなに花をまじまじと見ることってなかったな、と思いながら。

写真を撮りまくって気が済んだあたりで、缶ビールと炊き込みご飯(何故か彼が作ってきた)のおにぎりを食べて、花見は終了。今でもあの日は何だったんだと思うけど、相手が相手だしな、と納得する部分の方が大きかったり。

その1年後くらいに、彼が写真展をした。カメラ仲間の友人の熱意に押され、知り合いの店に展示することになったらしい。あんなに頑なに人に写真を見せない人を押し切るなんて、どんなにしつこく誘ったんだと思いつつ、こんな機会もうないかも、と見に行った。
そしたら、見覚えのある桜の写真が展示されていた。多分一緒に行ったやつだ、と思ったけど、「本当に一緒に見てた桜?」と自信がなくなるくらい、あまりに綺麗な写真で。隣にいたこの人の目にはこんな風に写っていたのか、と思ったし、今も見えている世界が全然違うんじゃないかと疑いたくなるくらい。あの日の桜ってこんなに綺麗だったのか、と記憶が塗り替えられるくらい。
この時初めて、写真ってすごいなと思ったし、いつまで経っても自分が撮った写真がショボいな、と思ってしまうのは、確実にこの人の影響だと思う。

写真展が終わって数日後に会ったとき、こっそり封筒を渡された。中身は飾られていた、例の桜の写真。「これはHarunaと一緒に撮った写真だからあげる」とメモが入っていた。めちゃくちゃ嬉しかった。他の写真を求められて、断っていたのを見ていたから、尚更に。

数年後に共通の友人(カメラ仲間)が家に来たとき、飾ってあるこの写真を見て、ものすごく驚いていた。カメラマンになってからは写真を売ったり、お金をもらって写真を撮ったりしているけど、当時は全くしていなくて、カメラ仲間でも売ってさえもらえなかったんだよ、タダで貰えるとか奇跡に近いよ、って。
マジで貴重な写真だから大事にしろ、ホコリ被ってんじゃねーか、とめちゃくちゃ怒られた。

彼は大学院を中退してカメラマンになった。今は確かドイツにいて、結婚もしたと聞いている。次に会うことがあるかはわからないけど、毎年桜を見るたびに思い出すし、何となく同じような写真を撮れるようになりたくて、桜の木を見上げるアングルで写真を撮ってしまう。

画像1

まだまだ。

今でも、桜の写真は家に飾ってある。
(多少ホコリは被っている。)

いつか再会した時に、この写真を見せたいなあ。どんなリアクションするんだろう。



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