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【読書メモ】「バカ」の研究


「バカ」とは何かという問いを、様々な分野の知の世界的権威に問いかける、フランスでベストセラーとなった本書。

知識人になりたい人や教養をつけたい人、自分は人より賢いと思っている方にこそオススメできる。

「バカ」の研究

ジャン=フランソワ・マルミオン著


迷惑系ユーチューバーやあおり運転、公人による文書改竄など、世の中には唖然とするような事件が散発している。

「バカ」があちこちに溢れ、自らの過ちを疑わず、堂々と行動を起こし、存在感を増している。

しかし、「バカ」という言葉がどう定義されているのか、その意味自体、自明ではない。理解が遅いからバカなのか、感情を抑えられないからバカなのか。子供だから?目立ちたいから?明確に答えることはできそうにない。そこで筆者は、「バカ」とは何かといった問いかけを世界の知識人に投げかけ、インタビューを通して明らかにしていく。

認知バイアスが強い人、自らの知性に過剰な自信を抱いている人、自分の主張を決して曲げず他人の意見に聞く耳を持たない人などは、これに該当すると辛辣に述べられている。

とりわけ、知性が高く、教養があるバカには要注意だ。読書から得た知識を武器にして、一冊の本、ひとつのイデオロギー、あるいは偉人(バカだったりそうでなかったりする)の発言の引用などを盾に、多くの書物を焚書にし、相手を弾圧する。
プラトンとアリストテレスは、客観的な意味での幸せを「正しく行動すること」と定義しています。これはバカにはできないことです。

自分にとって耳が痛いことや自信を傷つけられる内容もあったが、それだけ読む価値があったということだし、これは読者にとっては本望だ。

インタビュイーであるダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」や、ダン・アリエリーの「予想どおりに不合理」などを読んだことのある人は、スッと入ってくる内容だろう。また少し前に話題になった「ファクトフルネス」にも通ずる内容と感じた。

そして本当に賢い人間とは、「物事を鵜呑みにせず、常に批判的思考、クリティカルシンキングが出来る人間」だと述べられている。フェイクニュースや粒度の低い記事が洪水のごとく溢れる今、常に批判的に思考する習慣をつけ、無意識的に実践できるようになりましょう!

序盤はクドいほどバカバカバカと書かれまくっていて鬱陶しいほどだが、そこを斜め読みで読み飛ばすと、あとはテンポよく読める。自分がバカとならないために、バカに巻き込まれないようにするためにも、読んでみて悪くないだろう。


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