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まさに「粋」である。駒塚由衣さん「江戸人情噺」


出てきた瞬間に、劇場全体に「江戸の息吹」が広がる。
「藤浦敦江戸人情噺メモリアル公演」 駒塚由衣 口演 座・高円寺2にて。

開演の挨拶に続いて登場した駒塚さんの所作、仕草、語り口には、
心地よい江戸の世界が染み込んでいるような気がする。

以前から吉原「金村」で公演されている「江戸人情噺」の会には、何度かお伺いさせて頂いているが、
今回は座・高円寺2。客席は30席ほどの広間から300席を超える劇場に変わり、
この大きな箱では如何なるものであろうかと思い、かなり後方の席に陣取ってみたのが・・・
なんのなんの、これまでに沢山の劇場で場数を踏んでこられた駒塚さんだけあって、
「座」の劇場空間を隅々まで把握して見事に観客を魅了していた。

演目は、私の好きな雲霧仁左衛門であるが、
その中に、雲霧が寝ている部屋の襖を手下がそっと音もなく開く、という場面がある。
襖を少し開いた瞬間、6畳ほどの寝室の空気の塊が、その襖の隙間から
ふおっと外に抜け出したような空気の移動、空気の塊がその分だけ形を変えるような気配まで感じられた。

今回、座・高円寺で演じられたことで1つ気づいたことがある。
この広い劇場は、静寂を伝えるのに効果的だということだ。

例えば、雲霧が足跡もなく、走り去るという表現があったが、
その時の少しの間が、劇場空間の静寂を味方に付けて、よりリアルに感じられた。

いっそのこと毎回ここでやっていただいてもいい位だな、とも思ったが、
吉原のあの広間の肌触りも捨てがたい。
結局、吉原には吉原の良さがあり、
この劇場には劇場の良さがあるということだ。

最後に蛇足的に付け加えると、
駒塚さんのセリフでとても心地よく感じるのは、
「何とかでやがらぁ」とか「やってやがらぁ」と言うときの「やがらぁ」の「ぁ」である。
この「ぁ」が重要なのだな、と。
恐らくこれがブレると、江戸らしさも粋な感じも消え失せるのかもしれない。
次回、別の江戸物の芝居を観る時には、少し気にしてみようと思った。

当日の演目は「郭夜公隅田白波」と「龍見益高根の雲霧」

その合間にメモリアルトーク。
登壇は、山田勝仁(演劇ジャーナリスト)さん、工藤雅典(映画監督)さん、
荒井宗羅(茶道家)さん、中江白志(吉原桜鍋中江四代目店主)さん。
藤浦氏の人となりが感じられた。

ちなみに、駒塚由衣さんは、この後、語りの会や演劇の予定が目白押し。
本当にエネルギッシュで、頭が下がる思いがする。

私のラジオで怪談の企画にも参加して頂いく予定だ。

よろしくお願いします。




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