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「ムッちゃんの詩~あなたに会えて~」・・・朗読から繋げる平和。


映画やドラマ、絵本にもなっている戦時の悲劇を描いた実話
「ムッちゃんの詩」が朗読劇として公演中である。

この作品を「ああ、戦争の中で可哀そうな生き方をした女の子がいたのね」
などと一言でまとめてしまってはいけない。

舞台は、戦時中。結核に罹患し防空壕(と言うより洞窟)の中での生活を
おくる少女と京都から疎開してきた少女のふれあいを中心に描いていくが、
この表面的な物語だけで見終わっては片手落ちだ。

是非、この悲劇の向こうに隠れている、その時代の人の心、弱者の扱われ方、誰もが被害者にならないようにしようと考える心理、被害者となった者の時代の見方、加害者になった人たちの自己弁護と正当化など、人間というものの儚くも変わりやすい心情と信条について、考えていただきたい。

「ムッちゃん」に繋がる、多くの悲劇がすぐ近くに存在するのだ。

もっと身近な、もっと近しい祖父母や父母たちが被害者となった事実。
そして、場合によっては加害者となったかも
しれない現実があった(今現代もある)ことに目を向けてほしい。

公演中、父母から子供の頃聞かされた戦時中の話を思い浮かべていた。
住んでいた家のすぐ近くに爆弾が落ちた事、
防空壕が崩れて生き埋めになりかけた事、
食べる物が無い中、軍属連中が毎日のように酒盛りしていた事。
そんな話をよく聞かされたものだ。
観劇後、たくさん検索したり本を読んで、戦争により庶民生活がどうなっていたかについて調べてみたくなった。

毎年8月15日になると各メディアは年中行事のように終戦を報道する。
それでも良いと思う。少なくとも、この朗読劇のように、悲劇を思い出させるきっかけになるからだ。
出来れば12月8日の開戦までの彷徨、過怠、暴走、邪径も同様に報道し、
過ちを見つめ直すのも必要だろう。

舞台の内容についてネタバレにならない程度に語ると、
真山亜子さんの語りは、浪花節に走り過ぎず、中庸を貫きながら、
心に響いて来る。

ムッちゃんを演じた、まるたまりさんは、ご本人が「12歳に見えるかしら」と心配されていたが、そのセリフの声は中々聞かせる物があった。

辻田啓一さんの分かりやすい存在感も全体を締める形になっていて好感が持てた。

その他の出演者たちも、実感として戦争というものが体に無い若い世代であろうことを考えると、真摯に悲劇に向き合っていた努力は見える。

今回、岡田潤さんによる墨絵を背景の一部に使っているが、
普段描かれているほのぼのとした雰囲気に加え、怒りにも似た、荒々しく悲しみを描き出す筆致も展開され、より大胆な表現になっている。
ただ私が観た回は一部再生がトラブり、何枚か見られなかったのは少し残念だった。

興味のある方は是非。

小劇場てあとるらぽう(東京都)にて8月21日(月)まで。




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