見出し画像

「怖がりの彼女」・・・怪談。ラジオ「清原愛のGoing愛way」で読まれた作品です。

タレントで朗読家の清原愛さんのラジオ番組、「清原愛のGoing愛way」。
いつも元気で、こちらも明るい気分になって来る。

前回4月11日16時からの放送で朗読された怪談の作品を紹介します。

・・・・・・・・・・・

「怖がりの彼女」   by夢乃玉堂

「何と言われようとも、絶対に入らないから」

遊園地のお化け屋敷の入り口。美緒は真顔で拒否した。

「怖いのは嫌いだって言ったでしょ。
ビックリして心臓麻痺で死んだらどうするのよ」

「死なないよ。通り抜けるのに五分もかからないし。
それに、お化けなんかみんな学生のバイトだよ。怖くない怖くない」

身も蓋も無い事まで言って説得する俺を、
受付の男性が渋い顔をして見つめた。

美緒は横を向いたまま、こちらを見ようともしない。

「いいよ。それなら俺ひとりで入るから」

俺はお化け屋敷に入って行った。
美緒の性格は知っている。
どんなに嫌がっていても、最後は俺に付いてくる。

初めてバイクでデートした時も、リアシートに乗るまで嫌だと言っていたが、由比ヶ浜の夕日を見た時には、又来たいと言った。
初めてのキスも、まだ早いと言っていたが、二度目には積極的だった。
最後は俺を信じて憑いて来てくれるんだ。

中に入ると、すぐに後ろから、細い腕が左腕にしがみついてきた。

『ほらね、やっぱり来た』

美緒の勇気を褒めようとも思ったが、
余計な事を言うと、楽しいお化け屋敷が台無しになりそうでやめた。
俺は、無言のまま震える柔らかな腕をさすった。

壁の中や、古井戸の作り物から幽霊が飛び出して来るたびに
しがみ付く腕に力が入った。

声を堪えて必死で耐えている美緒が、心底可愛く思えてきた。
お化け屋敷の暗闇は、恐怖よりも幸福を感じさせた。
そして俺は、こんなにも怖い思いをさせたことを少し後悔し始めていた。

『嫌がっているのに無理に引っ張り込むことは無かったな。
外へ出たら、ちゃんと謝って、よく頑張ったって言おう。
そして、二人で大好きなソフトクリームにかぶりつくんだ』

目の前に出口の明かりが見えてきた。
俺は早く美緒を褒めてあげたくて歩みを早めた。
左腕に体重を預けている美緒も速足でついてくる。

厚いカーテンを押し広げ、外に出ると、太陽が眩しかった。

「何よ。置いてくなんて、ひどいじゃない!」

外の明るさに慣れてきた俺の目の前に、仁王立ちになった美緒がいた。

「おまけに何十分も出て来こないでさ。
どうせ、外で待ってるアタシを困らせてやろうと思ったんでしょ!」

美緒は両手に溶けかけたソフトクリームを持って、俺を睨んでいる。

「え? でも俺は美緒と一緒に・・・」

俺は自分の左腕を見た。長い髪を振り乱した女がぶら下がっていた。

その女は、瞳の無い白い目で俺を見つめ、
真っ赤な口を大きく開いて笑った。
俺は目の前が暗くなり、そのまま気を失ってしまった。

「ちょっと、しっかりしてよ。そんなに怖いお化け屋敷だったの?」

美緒の声で目を覚ました時、女の姿はどこにもなかった。

それ以来、俺は二度とお化け屋敷に入っていない。
美緒は、ようやく分かってくれたと喜んでいるが
本当の理由は今も話していない。


            おわり


清原愛のgoing愛waは、毎週木曜日の16時からSkywaveFMで放送中。


まだ企画中だが、この夏には怪談特集も行われるらしい。

あの元気なMCがどんな風に怪談を語るのか、今から楽しみだ。

その清原愛さんが出演する朗読会が4月19日から行われる。

第十七回「よみかたり」。

六本木のストライプハウスギャラリーで毎年のように行われている。
朗読の会だ。

元気なMCの清原愛さんが、どのような語りを聞かせてくれるのか、
今から楽しみだ。


4月19日、20日、21日
六本木 ストライプハウスギャラリーにて。
時間のある方も無い方も、どうぞ足をお運びくださいませ。

よろしくお願いします。


#朗読会 #よみかたり #時代劇 #森章二 #若山騎一郎 #六本木 #ストライプハウスギャラリー #小説 #短編 #不思議 #謎 #清原愛のgoing愛way #スカイウエーブFM #語り



ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。