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浦和レッズ開幕戦 vs FC東京【Jリーグ】

ついに待ちにまった2021シーズンのJリーグが開幕しました。今年のレッズはホーム埼玉スタジアムで開幕戦となり、対戦相手は昨シーズンにダブルをくらったFC東京を迎えての1戦となりました。

前評判では「リカルド監督の浦和レッズは面白いサッカーをやってる」と言われてきましたが、果たしてレッズは2021シーズンはどのような結果になっていくのかサポーターだけでなく多くの人が気になっているのが今年の浦和レッズ。リカルド監督が就任してから初めての公式戦ということもあって注目の一戦となりました。

スタメン

レッズは西が怪我をしていることもあり宇賀神が右SB起用。注目のボランチは阿部と伊藤敦の17歳差コンビとなった。そして一番リカルド監督が悩んだであろう二列目には汰木、小泉、明本が先発となった。CFには今シーズン奮起が期待される杉本が入った。
(ベンチ:鈴木、柴戸、金子、武田、田中、伊藤涼、武藤)

FC東京は新戦力の渡邊凌磨(←モンテディオ山形)が右WGに入り、浦和から移籍した青木はベンチスタートとなった。


試合内容

前半4分に裏に抜け出した杉本がゴールネットを揺らすもVARでオフサイドとなり得点は認められない。お互いにプレスの強度が高く自由にプレイさせない展開が続く。レッズは数回チャンスを作るものの得点は奪えず前半は0-0で終了。
後半も前半と似たような展開でゲームは進む。78分に右からのCKで混戦の中から阿部がシュートを押し込みレッズが先制する。しかし、86分にFC東京のFKから森重に頭で決められてしまい1-1で試合終了。リカルド監督の初陣は引き分けとなった。

試合スタッツ

試合ハイライト動画
YouTube(浦和レッズオフィシャル)



狙い通りのレッズの守備

・攻→守の切り替え
この試合でレッズが1番良かった部分がネガティブトランジションだと思います。ボールを失った瞬間に複数の選手がプレスをかけてボールを奪い返すということが出来ていました。

今年のレッズはネガティブトランジションがより洗練された印象で昨年はなかなかプレスをかけても奪いきれない場面が多く見られましたが、この試合ではかなりボール奪取する場面がありました。

前半4分の杉本の幻のゴールとなった場面でもボールを失った後すぐにプレスをかけて相手のミスを誘い、山中から小泉にダイレクトでパスが入り、小泉から杉本へスルーパスというような流れでした。

阿部が奪われた瞬間にアルトゥールシルバへ猛プレス、アルトゥールシルバは渡辺へパス。

阿部がプレスをかけた時点で汰木が反応しているので、渡辺に対して素早く汰木がプレスをかけてパスコースがなくなる。渡辺は苦し紛れのパスとなり山中がインターセプト&ダイレクトパス。

小泉が丁寧に杉本へスルーパス→ゴール(オフサイド)。

残念ながらオフサイドにはなりましたけど、レッズの1つの特徴である素早いネガティブトランジションが発揮されたシーンでした。

このシーンだけでなく、1試合通してボールを失ってからの切り替えが非常に早くショートカウンターや二次攻撃、三次攻撃へと繋げていました。


・プレス
レッズは今シーズンも4-4-2のブロックを作って相手のビルドアップを対応していますが、昨年とは違い明確に奪う場所を決めてプレスをかけていきます。

トレーニングマッチではSBに誘導しサイドで追い込んでボールを奪うことを行っていましたが、この試合でも狙いどころはSBでパスコースを限定して奪うまたはパスをインターセプトすることができていました。

杉本がサイドへ誘導するように森重へプレス、そして森重から小川にパスが出ると明本がプレスをかける。

サイドで追い込みパスコースを制限、ボールを奪うもしくはパスをインターセプト。


レッズはCBからSBに誘導しプレスをかけ始めるので、FC東京のCB、SBの選手のパス数が多くなっています。


FC東京もサイドでハメられないために森重を中心にロングパスを入れて状況を打開しようとしていましたが、ディエゴオリベイラに対しては槙野と岩波でマークしてしっかりチャレンジ&カバーができていましたので仕事をさせませんでした。


この試合はほとんど危険な場面がなく安定した守備だったと思います。

FC東京のシュートエリアを見ても失点したシュート以外は全てゴール前からシュートを打たせていません。それだけにセットプレーからワンチャンスで失点してしまったのはもったいなかったです。失点の場面は三田のFKが素晴らしかったと思います。強いて言うならばもう少し槙野と伊藤敦で森重を挟んで自由にヘディングさせないように出来れば失点は防げていたかもしれません。


発展途上のレッズの攻撃

・ビルドアップ
特に前半は自陣からのビルドアップはあまり上手くいかなかったかなと思います。FC東京が前からプレスをかけてきた時に追い込まれて、ボールを蹴るしかない状況を作られてしまいました。ですが後半からレッズはビルドアップの形を変えたことで前半よりも前進できる回数が増えたと思います。

前半、レッズはビルドアップ時にシステムを可変させて最終ラインを3人にしてボールを前進させようとしていました。

しかし、このようにFC東京が3トップで前からプレスをかけてきたのに対しレッズも3バックで応戦することが多くパスコースが制限されてしまいました。その結果、パスコースがなくなり前に蹴らなければいけない状況になりました。

後半からビルドアップの形を最終ラインを4人に変更。

この変更で3トップのプレスに対して1人多く対応することが出来たので前進することができました。キャンプからトレーニングしてきたシステムの柔軟性が発揮されました。

データを見ても前半はレッズのポゼッション率が55.4%だったのに対し、後半は62.2%と大きく上回っていて、後半の方がFC東京のプレスを回避できていたことがわかります。

またヒートマップでも後半のビルドアップの形を修正したことよって改善されたことが表れていました。

[前半]

[後半]

前半は自陣でのプレー割合が多くなっていますが、後半はビルドアップで前進できるようになったのでより相手陣内でプレーすることができています。


・ファイナルサード
ファイナルサードでのどうやって相手のゴールに迫るのかという工夫はレッズの今後の課題かなと思いました。この試合でもボールを前に運んで行った時に攻撃が単調になる場面がいくつかありました。

<クロス>
攻撃が単調になってしまった1つの理由がクロスにあると思います。
レッズはこの試合だけで20本のクロスを上げていますが成功したクロスはたったの2回、成功率は10%でした。

クロスを上げるのが単調な攻撃になっているわけではありません。
クロスを上げる際のイメージ共有明確な基準がまだできていないので、クロスは多いものの成功数が少なくなってしまっていると感じました。

どこからクロスを上げるのか?
誰がクロスを上げるのか?
どこにクロスを上げるのか?
何人の選手がクロスに飛び込んでいくのか?
誰がクロスに合わせるのか?

これらのポイントが整理されればクロスがより効果的になると思います。



新加入選手の評価は?

この試合では伊藤敦、明本、小泉の3人の新加入選手が先発出場しました。
今回はこの3人の選手について初めてのJ1の舞台でのパフォーマンスどうだったのか考えていきます。

・伊藤敦樹

Jリーグデビューとは思わせない堂々としたプレーを披露しました。得点した阿部に注目が集まりがちですが、攻守にわたって存在感があり影のMVPではないかと個人的に思いました。守備面では高身長を活かして空中戦の強さを見せていましたし、読みが良いのでインターセプトする場面も目立ちました。攻撃面では広い視野と精度の高いロングパスを武器にサイドチェンジや縦パスで攻撃を展開していました。時には積極的にゴール前まで上がっていく姿もありました。攻守両面で阿部との補完関係が良いのでファーストチョイスは納得でした。失点した場面では自身の目の前で森重にヘディングされてしまったので悔やまれる点となりました


・明本孝浩

トレーニングマッチではセカンドトップの役割で起用されていましたがこの試合では右SHを担当。宇賀神との連携は良好で右サイドを活性化させていました。持ち味の馬力を活かしたボールキープやゴリゴリのドリブルでチームの推進力として貢献しました。また攻守両面でフィジカルの強さを披露し、プレー強度が90分落ちないスタミナも魅力的。そして献身的な守備や強度の高いプレスで相手選手からしたら嫌な選手だろうなと感じました。前への推進力はあるので1人剥がせる技術を身につければかなり良い結果が期待できるのではないでしょうか。ただ起用法に関してはどこがベストポジションなのか検討する必要があるかなと感じました。対戦相手によっては中央や左サイドでプレーした方が効果的な場合もありえるなと思わせる選手だったので、戦術によってポジションは変わってくる選手かなと感じました。


・小泉佳穂

両利きとはこの選手のことを言うのかと思わせるような、両足違和感なく使いながらのプレーは圧倒でした。ポジショニングやパスを引き出すタイミングがとても良く、チームの円滑剤として攻撃を牽引していました。両足使えるので常に相手から遠い足でボールをコントロールし相手からすると間合いを詰められないのかなと感じました。運動量も豊富でビルドアップ時にはボランチの位置まで顔を出し、その後ゴール前まで飛び出していくタフな役割を実行していました。パスを引っ掛ける場面がいくつかあったものの、その分積極的なパス、脅威になるようなパスを狙い続けていました。この辺パスの精度が高まってくるとチームの核になりそうです。守備でもしっかりプレスバックをする姿も好印象でした。プレースタイル的に機械採点だと評価が下がりがちな選手なのかなと感じました。



まとめ

選手やコーチ陣が大きく入れ替わったことや開幕戦ということもあり非常に難しいゲームだったと思います。対戦相手も去年6位のFC東京なので実力のあるチームでした。

結果は引き分けでしたがとても前向きな内容になった試合だと思います。レッズが準備してきたものがよく表現されていましたし、観ている側も面白い試合だったと感じさせてくれる内容でした。

まだまだシーズンが始まったばかりで課題もあると思いますが、個人的にはかなり戦えるレベルまで仕上がってきているのではないかなと思いました。さらに興梠や西が怪我から戻ってくることを考えると今後が期待できそうです。ベテランと若手も程よく融合していて伸びしろの大きいチームだなと感じました。今後が楽しみに思える開幕戦でした。

開幕戦のレビューということで長々と書いてしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。レッズの試合を観るのが難しい状況ですが、観れたときはレビューを書こうと思っているのでぜひよろしくお願いいたします。


出典:
・Getty images
・Sporteria
・Football Lab

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