見出し画像

コーチングの影響力【コーチングログ#9】UEFA Bライセンス①

先日、UEFA Bライセンスの実技試験がありました。おそらく1ヶ月後に評価で出るのでまだどのような結果になったかはわかりません。しかし、試験監督が私が分析官として働かせて頂いてるチームの監督だったので、簡単なフィードバックをいただきました。今回は監督からのフィードバックも含めてUEFA Bライセンスの内容をまとめていきます。


試験内容

UEFA Bライセンス

ウェールズサッカー協会で取得できるUEFA Bライセンスでは3つの実技試験の結果と16個のセッションプランの結果で決まります。そして今回は実技試験の1回目を行いました。実技試験は1回目が20点満点、2回目と3回目が40点満点となっており3回の試験の合計点数が61点以上取る必要があります。

1回目の実技試験

1回目の実技試験のテーマは全般的な練習(ポジションにとらわれず、戦術的要素の低い練習)です。この試験は他の受験者とペアを組み20分間の練習を行います。20分間のうち10分間をメインコーチとして練習を行い、残りの10分をアシスタントコーチとしてパートナーを支えます。ペアワークも採点の項目の1つなので協力して行うことが大切です。

そして、受験者は

・ドリル練習: 基礎的な反復練習(シュート練習など)
・ポゼッション練習: ボール保持をメインとした練習(ロンドなど)
・ウェーブゲーム: 攻撃ターンが入れ替わったり、プレイする選手が増減する練習
・SSG: ゲーム形式の練習(ミニゲームなど)

これらの4つの種類の中から1つを選び、セッションを行います。

また、練習のテーマを

・サイドチェンジ
・ライン越え(縦パス)
・クロスとシュート
・数的優位

を攻撃側 (例: サイドチェンジを使った攻撃)、もしくは守備側 (例: サイドチェンジを使った攻撃に対する守備)の視点からセッションプランを作成します。

コーチが練習で使える選手の人数が12〜14人なのでピッチサイズもフルピッチの1/4のサイズになります。これらの条件の下、セッションプランを作成し練習を行います。

セッションプラン

私のペアは練習の種類としてウェーブゲームを選びました。そして、練習のテーマが数的優位を使った攻撃に設定しました。

練習メニューの概要

練習の目的: ライン越えから数的優位を活かした攻撃

練習のレイアウト
・ピッチサイズ: 40ヤード×30ヤード
・プレイヤーの人数: 12人(FP: 10人、GK: 2人)
・チーム: 2チーム(各チームFP5人、GK1人)
・練習で必要な物: ボール、ゴール、コーン、フラットマーカー、ビブス(3色)

練習の流れ

《ウェーブ1》

ウェーブ1

①赤チームは3人が自陣に入り、1人が敵陣、1人がGKで1人がゴール脇で待機します。青チームは自陣に1人、敵陣に2人、GK1人、待機が2人です。
②赤チームのゴールキックからプレイが始まり、赤チームは青チームのプレスを回避しながら、ボールをドリブルまたはパスで敵陣に運ぶことを目指します。
③赤チームがボールを敵陣まで運ぶことに成功したら、自陣から1人だけ敵陣での攻撃に加わることができます。ですので2対1の状況になります。この2対1は黄色の台型のエリア内で行われます。

※青チームがボール奪ったら青チームはゴールを目指す(カウンターアタック)

《ウェーブ2》

ウェーブ2

①赤チームがゴールを決める、またはアウトオブプレイになったら待機していた選手たち(赤チームから1人、青チーム2人)がそれぞれの自陣に入ります。そして青チームはゴールキックからプレイを再開します。
②先程の赤チーム同様に青チームはドリブルまたはパスでボールを敵陣に運ぶことを目指します。
③青チームが敵陣にボールを運ぶことに成功したら、青チームは2人が敵陣での攻撃に参加することができます。ですので、敵陣では4対3の状況になります。
④青チームがゴールを決める、もしくはボールがピッチ外に出たらウェーブ1にリセットします。

※赤チームがボールを奪ったらゴールを目指す

追加の条件
・敵陣に入ったら5秒以内にシュート
・ディフェンスチームがボールを奪ってゴールを決めた場合、2点
・ディフェンスチームのアタッカーは自陣まで戻って守備することができる。

キーファクター

・ライン越え(縦パス、ドリブル)
・ビルドアップの形(消されない、ダイヤモンドを作る)
・体の向き、ファーストタッチ、パスの質
・数的優位の活かした崩し(オーバラップ、インナーラップ、斜めの動き、背後を取る動き)
・コンビネーション(ワンツー、3人目の動き)
・トランジション(攻撃→守備、守備→攻撃)

提出したセッションプランにはこの他にも「戦術、フィジカル、テクニック、ソーシャル、メンタルの5つの要素を取り入れた練習の狙い」や「コーチングプラン(どのようにコーチングするか)」、「タイムブロック(練習の回し方)」などを書きました。


良かったところ

まず、この試験はペアワークで行いますが、私のパートナー上手く協力しながら20分間の練習をやり切ることができました。あらかじめ2人の役割を分担し、リードコーチをやっている時はアシスタントコーチは選手に個人にコーチングしていくことができました。また2人のコーチング時間も重要で均等にリードコーチをするためにタイムブロックを作って、上手くタイムマネジメントをしながら練習を回すことができたと思います。そして、複雑な練習でしたが、ピッチサイズやセッションレイアウトも適切に設定することができたので期待していた「数的優位を活かしてゴールを奪う」シーンもいくつかありました。練習が意図したものになって良かったと思います。

コーチングの観点ではリードコーチとしてチームトークが1回、フリーズコーチングを2回行いました。特に「縦パスをスイッチとして攻撃のスピードを上げる」ことや「縦パスに反応して受け手と出し手以外の選手がオーバラップやインナーラップでサポートする」ことをしっかりと選手たちに伝えて、それを選手たちが体現してくれたことは良かったところだと思います。

監督からのフィードバックでは自信を持ってエネルギッシュにコーチングしていたのは良かったと褒められました。また練習の目的としていた『ライン越えから数的優位を活かした攻撃』とマッチしたセッションレイアウトも良かったと言われました。


課題

私が練習の中でフリーズをして選手にコーチングした場面がありました。縦パスを入れられる(前進する)選択肢があるのにバックパスをしてしまう場面があったので、その選手に対して「優先順位は前に進めることなので、縦パスを入れる意識でプレイする」ことを強調しました。監督から頂いたフィードバックの中にこのフリーズコーチングの影響について考える必要があると言われました。私がコーチングした後、その選手は前進することにトライしてくれましたが、今度は前が詰まっている状況でも前進することを優先してしまって、後ろからやり直すというようなプレイがなくなってしまいました。私が彼にコーチングしたディテールの部分で縦パスを強調したのは良かったと思いますが、1つの選択肢だと言うことも強調する必要があったかもしれません。コーチングによって選手の想像力や判断が制限されるようなことは避けなければいけないので、「何を強調するか」、「どう伝えるか」を考えなければいけないなと感じました。また、もし仮に今回のような現象が起きてしまった際には、再度その選手に対してアプローチをかけて適切な判断を促すことも1つの手だと思います。

個人的に課題に感じたところもやはりコーチングです。例えばコーチがフリーズをして練習を止めた際にはなるべく簡潔に分かりやすく選手たちにコーチングする必要があります。コーチングが長ければ長くなるほど選手たちはプレイ時間が減りストレスに繋がってしまうからです。簡潔に分かりやすくコーチングをするにはコーチングの内容が重要になってくるので、如何に核心をついたアプローチができるかがカギになります。今回の試験ではチームトークで「ラインをどうやって越えていくか、どうやってボールを前に運ぶか」という話をした時に、少しコーチングが抽象的になってしまって具体性がなかったかなと思いました。


総括

まだ実技試験の結果が出ていないのでどのような点数が付くかわかりませんが、今の自分の持つ実力は出せたかなと思います。大枠で練習を見た際にはとても良く見えますが、詳細な部分でまだまだ詰めが甘く、ディテールに欠けていると感じました。「どういったプレイを観察して何を選手たちにフィードバックするのか」という点では昨年のC Certificate(C ライセンス相当)から大きく改善されていると思いますが、「どんな言葉を使って、何を強調するのか」という点ではまだまだ物足りないと思いました。

また今回の実技試験でコーチングの持つ影響力の大きさを実感することになりました。選手は言われたことを純粋に表現しようとするので、コーチングすることで逆に柔軟性やプレイのアイデアが乏しくなってしまう可能性も秘めていることを学びました。ゲームや練習の文脈から適切に選手に働きかける必要があるとわかりました。今後は自分のチームで様々な経験を積みながらコーチングのディテールや練習の文脈を発展させていきたいと思います。来シーズンにはBライセンスの残り2つの実技試験もあるので、更に成長して試験を迎えられればと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


もし宜しければサポートをよろしくお願いします! サポートしていただいたお金はサッカーの知識の向上及び、今後の指導者活動を行うために使わせていただきます。