ウェールズ代表U-14国内大会【アナリシスログ#5】
先日、ウェールズ代表U-14の国内大会『The Cymru Cup』に分析官として帯同させて頂きました。この大会はウェールズ代表U-14の2021/22シーズンの最後の大会という位置付けで行われるもので、2日間に渡って開かれました。国内大会なので、ウェールズ代表U-14の選手たちが3チームに分かれて、総当たりで優勝を決めます。
今回は仕事の内容などを含めてThe Cymru Cupをまとめていきたいと思います。
【1日目】スタッフミーティング
7/25に夕方からスタッフは先にホテルに集合します。18:30からスタッフミーティングがあったので、私は17:40くらいにホテルに到着し、チェックインを済ませました。
VillageHotelというウェールズにあるホテルで1泊£62(日本円で約10,000円)の良いホテルでした。ちなみに2泊3日の宿泊代や食事代は全てFAW(ウェールズサッカー協会)が支払ってくれています。
フロントでチェックインを済ませて自分の部屋に向かうと、私の部屋はダブルベッドでとても広かったです。
ミーティングが18:00からだと勘違いしていてミーティングルームに行くとこの大会で着用するスタッフ用のキットを受け取りました。
ミーティング会場には下の写真のように大会名が書かれていました。
スタッフミーティングではこの大会の位置付け、スタッフの配置(誰がどこのチームを担当するか)の確認、各チームがWelsh Wayの中でどのテーマを強調して取り組むかなどが話し合われました。
ミーティングが終わるとスタッフ全員でディナータイムです。
夕食を終えると分析官はこの大会で使う『Angles』という分析ソフトウェアの使い方のレクチャーを受けました。
正直なところ、「ぶっつけ本番で初めて使う分析ソフトウェアで仕事するの!?」と不安でした。ですが、普段から分析ソフトウェアを使っているので操作方法を教えてもらえれば、あとはソフトウェアに慣れれば大丈夫なんだなとこの大会で実感しました。
分析ソフトウェアのレクチャーが9:30頃終わり、それからチーム内のスタッフミーティングに途中参加。ビール飲みながらミーティングするのがイギリスらしくて好きでした。(私は次の日の試合用に分析ソフトウェアのセットアップする作業が残っていたので、ビールは飲みませんでした。)
ミーティングはラウンジで行われ、コーヒーやホットチョコレート、ジュースが24時間飲み放題。3日間でここぞとばかりにジュースやコーヒーを頂きました。
ミーティングでは明日の流れと、ゲームプランの確認をメインに行いました。また、分析についてはライブコーディングをするにあたって、ハーフタイムでどういったシーンが必要かコーチの方々と打ち合わせをしました。
【2日目】The Cymru Cup開幕
8:00からスタッフは朝食でした。朝食を食べ終えて、選手を含めたチームミーティングの最終確認を済ませて選手たちの到着を待ちます。
11:00に選手たちが到着。ウェールズ国内から選手が集まってくるので北の方に済む選手達は3〜4時間かけてCardiffまでやってきたそうです。中にはホテルに前泊して来た選手もいました。
11:30から選手たちの親も含めた全体での講演会でした。ウェールズサッカー協会の代表であるDavid Adams氏のプレゼンがあり、選手の成長に過程について説明。
その後、親御さんは解散し、各チーム分かれてチームミーティングを行いました。このチームミーティングでは主に大会の目的を説明、Welsh Wayの中での強調するテーマの確認、そして選手たちの仲を深めるためのアイスブレイクが行われました。
チームミーティングが終わると選手とスタッフでのランチタイムでした。
ランチを終えるといよいよ試合です。選手達と一緒にバスに乗り、FAWの施設でThe Cymru Cupの試合会場であるDragon Parkへ向かいます。
選手たちがウォーミングアップをしている間に私は撮影の準備を進めます。カメラ、マイク、パソコンなどを繋ぎ、ライブコーディングの最終確認を行いました。
そして、いよいよ試合のキックオフです。
この試合では私のチームはアウェイ扱いだったので、黄色のユニフォームが私のチームでした。
試合中は右手でカメラを操作して撮影します。パソコンにカメラの映像がライブで見れるので、画角はパソコンを見ながら調整してボールを折っていきます。
前半は2-2で終了。ハーフタイムに入るとコーチが試合中に「クリップして!」と言ったシーンをパソコンとモニターを繋いで、選手たちと共有します。
しかし、ここでトラブルが発生。コーチが欲しかったシーンと私がタグ付けしたシーンで数秒のズレがあり、4つのシーンを見せる予定でしたが、このハーフタイムで見せれたシーンは1つのみでした。
なぜズレが起こったかというと、コーディングウィンドウを作った際に各タグに「タグボタンをクリック(押して)から何秒前〜何秒後までのシーンをクリップします」という設定をするのですが、この秒数が短くコーチが欲しかったシーンとズレが起きてしまいました。実際に私はタグ付けをしたタイミングの15秒前〜5秒後がクリップになるように設定していました。
ズレが起きる事はあるあるな出来事で、ズレが起きてしまった時にはタグ付けしたシーンの映像を編集して映像の長さを調整する必要があります。ですが、ハーフタイムに入ってから選手たちがロッカールームに戻ってくるまでのほんの数分しか編集時間がなかったので、編集できずにぶっつけ本番で無編集の映像を流すことになり、上手くいきませんでした。とりあえず1個はクリップを見せることができたので良かったですが、次の試合までに改善する必要がありました。
後半も前半と同様にライブコーディングを行い、試合終了。後半に3失点してしまい最終スコアは3-5で敗戦となりました。
選手、スタッフ全員でバスに乗り、ホテルへ帰宅しました。
ホテルへ到着すると、選手たちは夕食までの約1時間でホテルに併設しているプールへと行き、私はコーチ陣と試合の振り返りを行いました。私がコーディングしたシーンの中で、夕食後のチームミーティングで使用するシーンを確認。確認が終わるとスタッフと選手たちは夕食へ行き、私は映像の編集を行い、少し遅れて夕食を食べました。この時はハーフタイムで上手くいかなった分を取り返そうと必死になっていて夕食の時間を忘れていました。コーチの方が「先に夕食食べてるから、作業終わったら来てね」と声をかけてくれて、既に夕食の時間だと気付きました。
何とか編集を終わらせて、夕食を食べた後はチームミーティング。先程、コーチ達と確認したシーンを選手たちと共有します。
ある程度、編集する時間を確保できたので全てのクリップを選手たちに見せることができました。上手くいって良かったなとホッとしました。
チームミーティングを終えると選手は就寝の準備、スタッフは明日のゲームプランの確認を行い23時頃に解散しました。
私は明日の試合に向けてコーディングウィンドウを見直し、再編集してこの日の作業は終了。1時くらいに就寝しました。
【3日目】最終戦
The Cymru Cup 最終日となる3日目は午前中に試合があるため、7時半に朝食を食べた後、約20分程度の簡単なチームミーティングでスターティングイレブンやゲームプランの確認を行いました。
チームミーティングの後はホテルのチェックアウトを済ませてバスに乗り込み、Dragon Parkへと向かいました。前日と同様に撮影の準備をウォーミングアップ中に行いました。
このチームでの最後の試合がキックオフしました。この試合はホーム扱いだったので赤いユニフォームで試合を行いました。
2日目と同様に試合中にライブコーディングを行い、ハーフタイムにフィードバックするための映像を集めていきます。前回の反省を踏まえて、コーディングウィンドウを作り直しました。各タグの設定時間を20秒前〜5秒後に拡げて、コーチが欲しいシーンがタグ内に収まるようにしました。また、コーチの方々と話し合いハーフタイムの5〜10分前に先にロッカールームに向かい映像編集を行なって、モニターに映像を映す準備をすることにしました。
そして、いよいよハーフタイム。0-0で前半を折り返し選手たちが戻ってきましたが、何とかハーフタイムに入る前に映像編集を終わらせて選手たちを迎えることができました。
無事にハーフタイムで6つの全てのクリップを選手たちに見せることができました。前日とは違って時間に余裕があったのでより多くのクリップを見せることができました。ハーフタイムのフィードバックを終えた時にコーチと交わしたグータッチは今後忘れられないと思います。
そして、後半がスタート。再びガントリーに戻りライブコーディングです。
残念ながら後半に2失点をして0-2で敗戦となりました。しかし、短い間でしたが、このチームで取り組んだビルドアップとカウンターアタックの部分で、良いプレイが沢山あったのでとてもポジティブな試合でした。
試合後はチーム全員で記念撮影をして、このチームは解散となりました。もしかしたら、私がチームで1番身長が小さいかもしれません!!
自チームの試合が全て終わりチームが解散した後は、残りの2チームの試合を観戦。
そして、3日間敵チームながらも、お互いにサポートして苦楽を共にした分析官も記念撮影。
分析官の宿命ですが、常に時間に追われて"タイムリミット"というプレッシャーの中で仕事をすることで、良い緊張感の中で働くことができました。また、この年代の最高峰の選手たちや経験豊富なコーチの方々、そしてこの大会を支えているスタッフの方々と一緒に仕事をすることができて、とても貴重な経験となりました。
個人としてはこれまで1つの分析ソフトウェアを使ってきましたが、今回新たな分析ソフトウェアを扱うこととなり、上手くできるかとても不安でしたがすぐに慣れて使いこなすことができました。分析ソフトウェアは基本的な機能(コーディングウィンドウ、コーディングタイムライン、プレイリスト、ライブキャプチャーなど)はどれもほとんど同じで、ソフトウェアの仕様が違うだけという新たな発見がありました。日頃から分析ソフトウェアを使っていれば、新たな分析ソフトウェアでも割とすぐに使いこなすことができるということがわかり、自信になりました。
コーチの方々やスタッフの方々との話で自分のチームでも使えそうなアドバイスも貰うことができたので、チームに帰ってこの大会で得たものを還元していきたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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