プロフェッショナルへの道のり
先日、X(Twitter)の方では報告させていただいたのだが、サウスウェールズ大学院への進学とともに、2024/25シーズンにUEFA Aライセンスを受講できることが決まった。
私はサウスウェールズ大学院の『MSc Advanced Performance Football Coaching』というコースでサッカーの指導論や指導に関わる様々な要素を勉強する。
このコースはエリート指導者(プロクラブで指導することを志す人)を育成するためのプログラムとなっており、私が卒業したサウスウェールズ大学の『BSc Football Coaching & Performance』コースは基礎的な指導論から応用的な指導論までをカバーしていたが、大学院のコースはより高いレベルの環境や選手を指導することに焦点を当てている。従って、この二つのコースは少し位置付けが異なる。
コースの内容
このコースはフルタイムでは2年制、パートタイムでは3年制となっている。そして、このコースの特殊な部分が一定の生徒はUEFA Aライセンスが受講できるというものだ。
FAW(ウェールズサッカー協会)では毎年42人の指導者がUEFA Aライセンスを受講することができる。サウスウェールズ大学はFAWと提携しているため、その42人のうち12人の枠をサウスウェールズ大学院のこのコースは保有している。つまりサウスウェールズ大学院のこのコースの生徒のうち12人はUEFA Aライセンスの受講資格が与えられることとなる。そして、今回私はその12人の枠の中に入ることができたので、UEFA Aライセンスのコースを受講できることが決まった。
従ってこのAdvanced Performance Football Coachingのコーススケジュールを見てみると、2年生からUEFA Aライセンスを受講する生徒とそうでない生徒とで授業の内容が違うことがわかる。
1年生では全員が同じこと(サッカーコーチング、サッカー教育学、サッカー心理学)を学ぶが、2年生では「UEFA Aライセンス+卒論」という内容か、「コーチング、戦術的ピリオダイゼーション、分析、リーダー学のうち3つ+卒論」という内容になっている。
コースの紹介動画は下の動画から。
UEFA Aライセンスの概要は下のリンクから。
コースの目的と出願資格
『MSc Advanced Performance Football Coaching』というコースは誰でも出願できる訳ではない。そもそも、このコースはプロの環境で指導者として働きたい人やサッカー指導者を生業にする人向けのコースとなっている。従って出願資格も厳しいものとなっている。
大学院のコースへの出願資格
大学院への出願資格は以下のようになっている。
スポーツ系の大学での2:1以上の成績、またはサッカー界での経験
UEFA Bライセンス、または同等の資格
IELTS6.0以上、またはそれと同等の資格(インターナショナル生徒の場合)
上記の3つが出願に必要な条件であり、特にUEFA Bライセンス(もしくは同等の資格)を保有していなければいけないというのが特徴的だ。
コースの目的としてサッカーの指導者をプロの環境へ輩出するためにあるコースなので、それなりの資格や経験が求められることになる。
UEFA Aライセンスへの出願資格
そしてややこしいのが、もしUEFA Aライセンスを受講することを希望する生徒は大学院のコースとは別途で出願資格を満たしている必要がある。もしUEFA Aライセンスを受講することを希望しない場合はこの出願資格は満たしてなくても良いのだが、UEFA Aライセンスを受講することを希望する場合はUEFA Aライセンスのコースへ出願して12人の枠に選ばれる必要がある。
UEFA Aライセンスへの出願資格は以下のようになっている。
UEFA Bライセンス
UEFA Bライセンスを取得してから1年以上の11人制(U-14以上)の指導経験
また出願する際に
経歴書
所属クラブからの推薦状
が必要となる。この推薦状には出願者がクラブでU-14以上のカテゴリーを指導しているかや、出願者の推薦する理由などを含んでいる必要がある。
そして出願した生徒の中でFAWのスタッフが経歴や推薦状を見て、UEFA Aライセンスを受講できる12人を選定する。今年は34人が出願したようだ。従って倍率は約3倍となる。
サウスウェールズ大学院の生徒用に12人の枠があるが、UEFA Aライセンスの残り30人の枠には世界各国から応募が集まる。噂では毎年国内外から約150人程度の応募があるらしく、倍率は約5倍となるため、サウスウェールズ大学院のコースに入ってUEFA Aライセンス取得を目指す人も少なくない。
渡英する前は
3年前、私が日本からはるばるウェールズの地に来たのもプロの環境で指導者をしたいという想いからだった。私自身、元プロでもなければプロとのコネクションも一切ない無名の人間。高校3年生の時の進路相談では指導者になりたいという思いを担任の先生と父親の前で口にしたものの、「自分が本当にプロのサッカー指導者になれるのか」、また「どうやってプロの指導者になればいいのかわからない」というのが本音だった。ましてやイギリスの大学でサッカーを勉強したり、大学を卒業してから大学院まで行くことになるとは思ってもいなかった。
当時、プロのサッカー指導者がどんなものなのか無知の自分が「プロの指導者になるには?」を考えて、頑張って捻り出した答えが「サッカーの本場イギリスでサッカーコーチングを勉強しよう」というものだった。「イギリスでサッカーを勉強すれば自分の価値が高まるのではないか」、「どこかのチームが自分のことを欲しがってくれるのではないか」そんな安易な考えでイギリスにたどり着いた。今思えばこの楽観的な考えは半分は的を得ていて、半分は見当違いだった。
イギリスに行ったからといって自分自身の価値が高まったかと言われるとそんなことは全くない。今時、海外でサッカーを勉強する人は沢山いる。「イギリスでサッカーを学んだ」という事実やステータスには価値はない。
ただ、イギリスでサッカーを勉強したことによって指導者として、人として、自分自身を成長させることができたこと、そして自分の財産となるものを手に入れられたことが大きな価値になると思う。イギリスという国のサッカーの文化や哲学を知ることで日本との対比で客観的にサッカーを見ることができること。幸運にもアーセナルやチェルシー、リバプールといったトップトップのクラブと対戦する機会があり、トップクラブのアカデミー選手たちを生で見ることができた。イギリスで学んだ知識や経験は今後の指導者としての大きな財産になるはずだ。
また、イギリスに行ったから日本のクラブが興味を示してくれるといったことはない。むしろ海の向こう側で指導者として活動している分、自分が何をしているのか、どんな指導者で、どんな志を持っているのか伝えることが非常に難しい。だから私はSNSというツールを使っている訳だが、自分から日本のクラブやサッカー関係者へアプローチをしなければ見向きもされない。なぜなら日本にも沢山の優秀な指導者がいるからだ。
ただ、そのアプローチをかける時に「英語が喋れます」や「こんなところでこんなことをしていました」という「イギリスで何を得て何を学んで、何を経験したか」という部分を武器にすることができることも事実である。まだまだ日本では普及していない考え方やアイデアなどがあることも確かである。
また、ライセンスはプロの環境で働くには絶対に必要になる資格だ。これはイギリスでも日本でも共通して言えることで、例えばプロクラブのトップチームの監督になるにはUEFAプロライセンス/S級ライセンスが必要になる。トップチームでなくてもイギリスのプロアカデミーで働くにはUEFA Bライセンス以上を保有していないといけない。
たとえ、その人がいくら指導者として実力があったとしてもライセンスがなければ働けない。だから今回UEFA Aライセンスのコースを受講できると決まった時には素直に嬉しかった。なぜなら、もしUEFA Aライセンスを取得することができれば、また一つプロフェッショナルへ近づくことになり、私の「Jリーグで監督になる」という夢に近づくことになるからだ。
実は、、
実はオフシーズンから最近までの数ヶ月を日本で活動することも視野に入れながら過ごしていた。というのもサウスウェールズ大学院でUEFA Aライセンスを受講できないと思っていたので、来年からは日本で今の自分がどれだけ通用するのか挑戦しようと考えていた。
そのため今年の6月頃に日本に一時帰国した際には様々なサッカー関係者とお会いすることができて「来年は日本で活動するかもしれないので、その時はよろしくお願いします」といった内容のお話もさせていただいていた。私のイギリスでの活動に興味を示して、わざわざSNSを通じて連絡を下さる方々もいて大変嬉しかった。
そして、そういった方々は非常に勉強熱心で腰が低く、新たな知識を吸収したいという探究心に溢れていた。私よりも指導者として長く活動しているにも関わらず、それに怠けることなく、成長しようとする姿勢が印象的だった。私ももっともっと貪欲に学び続けないといけないなと刺激を受けた。
ありがたいことに大学院に受かり、UEFA Aライセンスに来シーズン挑戦できることが決まったので、大学院修了までの2年間はイギリスで自分を更に成長させることにトライしようと思う。日本挑戦は少し延期になったが、イギリスでの活動期間でできるだけ多くのことを学び、吸収して、日本に帰った時には一回りも二回りも指導者として、人として成長できればと思っている。そして、私がイギリスで得たものを日本サッカーへ還元することができれば、これ以上言うことはない。まずは日本に帰るその日までに今以上に精進して1日1日を過ごしていきたい。
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